ズーマ/恐怖のバチあたり
 原題 ; ZUMA(1985)
 監督 ; ジュン・ラクイザ
 脚本 ; ハーナン・ロブレス、マニー・ロドリゲ
 音楽 ; マリタ・マニュエル
 出演 ; スヌーキー・セルナ、ラクエル・モンテッサ、マックス・ローレル
古代ククール人の末裔(まつえい)ズーマが大暴れするフィリッピン製異色アクション・ホラー。
掘削現場に発破をかけたところ、地中から寺院の遺跡が現れた。
(寺院というよりはコンクリートのサイロのように見えるデザイン)
調査が開始され、フィリップ(マーク・ギル)、イザベル(ダング・セシリオ)ら調査隊が寺院に入っていく。
イザベルは祭壇のようなものを見つける。中から3匹の大蛇が顔を出したので慌てて逃げ出す。
話を聞いた隊員たちが網を持って祭壇に近づく。中は空だった。
3人の隊員が死体となって発見される事件が発生、警察が捜査を始める。
署長はフィリップに発掘の中止を申し入れた。
死んだ3人のうち2人の男はヘビに噛まれたことが死因だった。三人目の女は体内に毒があったが、噛まれた痕はない。
キャンプ中のカップルが緑色の怪人に襲われる。男のジョセフは毒ヘビの大群に殺され、テントの中で休んでいたガレラ(ラクエル・モンテッサ)は犯されてしまう。
ガレラはコートを着た怪人とともに水路を伝って市街地へと行き、途中で出会った子供を襲う。
街中でもガレラが通行人の女性に声をかけ、次々と怪人の餌食にさせる。
被害者は増える一方である。
殺されたのは全員処女だった。フィリップは犯人が処女をかぎわける特殊能力を持っていると推理する。
フィリップは署長と話して処女を囮にすることにした。
囮に選ばれたのはイザベル。頼まれたイザベルは泣き出してしまう。
街では避難騒ぎが起こっている。ついにイザベルは囮になる決意をした。
イザベルとフィリップが乗ったトラックがエンコしてしまう。
フィリップがタクシーを捜しに行ったすきにイザベルが襲われる。
ズーマと呼ばれる怪人は、寺院に最初に訪れたイザベルを知っており、彼女が処女であることも見抜いていた。
ズーマは強力なパワーを持つククール人の生き残りであり、イザベルを寺院に連れ帰ろうとする。
イザベルに迫るズーマ。突然檻が落ちてきた。ズーマは見事罠にかかったのだ。ガレラも逮捕される。
檻に入ったまま、ズーマは銃殺刑に処せられた。だが、銃弾は全く効き目がない。仕方なく軍は、ズーマを寺院に封じ込めて生き埋めにする。
ガレラはズーマに子を妊娠していた。
恐れた刑務官がガレラを殺そうとする。重傷を負ったガレラは病院に運ばれた。
署長はガレラを助けることに反対するが、医者は聞き入れない。フィリップも生まれるのは人間かもしれないという。
結局ガレラは助からなかった。ガレラの死体からこぼれた血液を分析しようとすると、血は生き物のように姿を消す。
それは女研究院ロジータを体内に入り込んでいた。
署長はロジータを殺せと命令するが、さすがに医者は聞かない。
ロジータの開腹手術を行うと、1センチくらいの球に足の生えたものが飛び出し、ピョンピョン跳ねまわる。
逃げまどう医師たち。球は看護婦の手術着に潜り込んでいた。
フィリップが手術着を切り、看護婦の足に張り付いた球を見つける。フィリップは球を自分の上着でくるんで金庫に閉じ込めた。
金庫は海辺の地中に埋められた。
事件が片付きフィリップとイザベルは結婚する。イザベルはまだ不安を感じていた。
ある日大地震が起きてズーマが寺院から抜け出した。
警察とともに現地を視察に行ったフィリップがズーマに襲われる。署長は気づくが、かなわないと見て見ぬふり。
フィリップが子供と会えなくなると脅すと、ズーマは立ち去った。
海岸に出たズーマは金庫を掘り出し、崖下に投げて破壊する。中の子はすでに赤ん坊へと成長していた。
ズーマは赤ん坊のヘビに刺されてしまう。毒にやられてフラフラとさまようズーマ。
ズーマは力尽きて倒れ、やがて土砂に埋まっていった。
時が経ちズーマが復活し、再び処女狩りが始まる。
長い年月が経っており、フィリップもイザベルも中年を迎えていた。
フィリップはズーマに関する著書を出版して金持ちになり、署長は市長となっている。
ズーマの子はガレマ(スヌーキー・セルナ)と名付けられ、フィリップ夫妻が自分たちの本当の娘とともに育てていた。
ガレマはズーマの復活を聞いて対決を決心する。
ズーマを捜して山に入ったガレマはチンピラ・キャンパーに襲われ、おさげに隠した毒ヘビで一人を殺す。
そこにズーマが現れ、自分は人間だと主張する娘をなんとか説得しようとする。
ガレマは二度と心臓を食べないことを条件に、ズーマと暮らすことをフィリップに相談する。
フィリップはズーマの言葉を信じない。
だが、ガレマの決意は固い。夫妻は彼女を山に送っていく。
ガレマはズーマに出会えず、ヒッチハイクしようとして脇見ドライバーにはねられたりする。
その頃ズーマは市街地に姿をあらわしていた。ローラー車で轢かれても平気。
武装した市民が攻撃するが、死人が増えるだけ。
市庁舎に入り込んだズーマは市長と対面する。目の前で部下を殺された市長はバチが当たるぞと叫ぶ。
そこにガレマもやってきた。死体を見たガレマは自分をだましたズーマをなじる。
市長を人質にガレマを脅すズーマ。
ズーマは自分と市長を寺院に連れて行くよう要求した。
ガレマは、自分を味方と信じて恐れない若い兵士モーガンと出会う。
ガレマはズーマを追って寺院へと入る。モーガンも寺院に潜入した。二人は寺院の中に閉じ込められてしまう。
ズーマは自分の後継ぎになることを拒んだガレマも殺す気でいる。
モーガンは本気でガレマを愛していた。
四日が経ち、生存の可能性が薄いと判断した大統領は寺院をうずめる決定を下す。
モーガンが弱り、見かねたガレマはズーマに降参する。モーガンを寺院の外に出すことができた。
市長も助けようとしたガレマは落とし戸にはさまれてしまい、身動きできなくなる。
ズーマはガレマの目の前で市長の首を引きちぎった。高笑いするズーマ。
ここを神聖な場所と知っての行いか。ズーマの蛮行にククールの神が怒りを爆発させ、寺院は崩れていった。
病院で目を覚ましたモーガンは、ガレマの死を知らされる。
寺院の跡地で泣き伏すモーガン。
モーガンとフィリップ一家が去ったあと、地中から大蛇が飛び出すのだった。
Allcinemaonlineには1987年の製作とあるが、IMdbでは1985年製作となっており、1987年には続編が製作されている。
ズーマ以下主なキャストは1作目と同じで、ガレマだけ配役が変わっている模様。
本作は2時間を超える大作で、ビデオのコピーは「数千年の眠りから現代に甦るヘビ人間ズーマの親子2代に渡る感動の大河ドラマついに登場」。
この物語に感動する人がいるかどうかは疑問だが。
まあ双頭の大蛇を肩につけた全身緑色の皮膚に赤フンの巨人ズーマはなかなか印象的。演じたマックス・ローレルは、その後イタリア製のB級戦闘アクションなどで活躍したらしい。
ぶっといお下げに双頭のヘビを隠したガレマも、何だかお茶目。
ズーマが処女の心臓を主食にしているという設定は、劇中ではよく分からず単なる殺人鬼に見える。
映画悲報には2分間苦悩する署長のアップが続くと紹介されていたが、そんな場面ははなかった。
最後は自分の神様に処罰されちゃうんだから、ズーマが罰当りなことは間違いないようだ。
自分の娘に噛まれて長い眠りにつくあたり、相当お間抜けでもある。
いくら不死身だからって寺院に放置したり、海岸に埋めちゃう発想もすごい。ハリウッド映画なら地下要塞かなんかに隔離して軍が警備してって描写になるんだろうけど。
ズーマの娘が監視も付けられず、民間人に育てられているという設定ものんびりしている。
切れ味の悪さも含めて30年以上前のフィリッピン映画、という雰囲気が味わえる怪作。
編集も雑なのではっきりとはしないが、場面がとんでるような印象の部分があり、もしかしたらオリジナルはもっと長かったのかもしれない。