炎のいけにえ(THE VICTIM;1976) アナログ盤シングル(国内) ミムジー・ファーマー、レイモンド・ラヴロック共演のイタリア製Z級猟奇スリラー。太陽黒点の影響により残虐な事件が激増した、というエピソードから始まるが、本編には何の関係もなかったりする。 エンニオ・モリコーネはドロドロのサイコ映画に流麗で美しいメロディを持った曲をつけるのが得意で、「4匹の蝿」がその代表作と思うのだが、この作品のテーマ曲もなかなか良い。美しいメロディに女性コーラスを配した佳曲となっている。 また、この手の作品に喘ぎ声や呻き声を効果音として使った曲をフューチャーするのもモリコーネの得意技で、大音響で聞いてたりすると、突然部屋に喘ぎ声があふれて慌てたりする。B面の「太陽のいけにえ」が、このパターン。ラストの方で前衛的なピアノ演奏がされていたりするのが面白い。 シングルだけでアルバムは(少なくとも日本では)発売されなかった。CDのオムニバス盤なんかも、この曲が収録されていないか、たまに見たりするのだが、イタリア語が分からないこともあって、今まで見つかっていない。 フランティック(FRANTIC;1988) CDアルバム(輸入) ロマン・ポランスキー監督がハリソン・フォード主演で撮ったサスペンス映画。 主人公の奥さんがホテルの部屋から突然消失してしまう前半が、いかにもポランスキーらしい不条理感の漂うスリラーになっていて面白かった。後半真相が分かると普通のサスペンス映画になってしまうが、それでも十分水準以上の作品。ヒッチコックの影響も感じられる。 美しくてミステリアスなメロディ・ラインを弦楽器が奏であげるテーマはお気に入りの曲。アルバム中、いくつかのヴァリエーションで演奏される。パリの雰囲気を出すためか、手風琴の演奏が織り込まれている曲もあって興味深い。 なお、1曲目はシンプリー・レッドが演奏する主題歌「アイム・ゴナ・ルーズ・ユー」が収録されている。 ランページ裁かれた狂気(RAMPAGE;1987) CDアルバム(輸入) ウィリアム・フリードキン監督がマイケル・ビーン主演で撮ったサイコ・サスペンス。製作はディノ・デ・ラウレンティス。 冷酷で知的な連続殺人犯だが、精神分裂症でもあり死刑判決は妥当なのか、という社会派的要素も盛り込まれていた。決して退屈な作品ではないのだが、妙に印象が薄く細部はまったく憶えていない。犯人の冷酷さは際立って描かれていたように思う。 音楽の方も少々地味な印象。聞き込めば確かにモリコーネ作品らしさはあるのだが、強い個性を発揮するには至っていない。演奏自体はけっこう厚みを感じさせ、「炎のいけにえ」なんかとは音楽の予算も違いそう。個人的には、テーマ曲よりも、サスペンスを盛り上げる無旋律の曲にモリコーネらしさが出ているように感じた。 |