エンニオ・モリコーネ作品(Vol.2)
恐怖に襲われた街(PEUR SUR LA VILLE;1973)
CDアルバム(国内)
公開当時は国内盤サントラは一切発売されなかった。
海外のアナログ盤は、短期間で廃盤になったとのこと。
今回のアルバムも、ライナーノーツを見ると、未使用曲とか他の映画に流用されたスコアとか、いろいろな音源が混ざっているようだ。初収録曲11曲を含めた全22曲、トータルのランニング・タイムが75分近くなっている。
オリジナルのサウンドトラック盤自体が、曲にヴァリエーションを持たせるために、未使用曲や他の作品の曲を収録していたらしい。
1曲目「恐怖に襲われた街」は印象的なテーマ曲で、得意とする短い旋律の繰り返しに口笛のメロディーをかぶせ、不安感をあおる、いかにもサシペンス映画らしい曲となっている。このアルバムのキャッッチ・コピーで、同じフレーズを徹底的に繰り返す手法を”オスティナート”呼ぶことを初めて知った。映画には未使用のバージョンらしい。このテーマのヴァリエーションは数曲に使われている。
4、5曲目「やさしく、あいまいに」「脅迫電話No.1」は軽いタッチの曲で、これも未使用曲とのこと。曲調が作品に合わなかったのかもしれない。
8曲目は別の日本未公開作品のテーマ曲として作られて陽の目を見なかった曲らしい。妖しい雰囲気のスキャットを含んだ面白い曲に仕上がっている。
13曲目「脅迫電話Nc.2」はミステリアスな雰囲気を持ちながら、どこかユーモラスでもある曲。
15曲目「エレーヌの殺害」は、タイトルに似合わない美しいメロディのカラフルな曲調。
18、19曲目「ノクターン(パート1)」「同(パート2」と22曲目「恐怖に襲われた街(組曲)」(この曲は15分強に及ぶが、中東風な、あきらかに異質なメロディーも登場する)は、解説者によるとテーマ曲を決めるために作られたデモ曲ではないかとのこと。「狼たちの影」「ヒッチハイク」の原曲となったメロディも登場するらしい。
ともあれ多様な音源を含んだ聞きごたえのあるアルバムに仕上がっている。

刑事キャレラ10+1の追撃(SENZA MOVENTE;1972)
CDアルバム(輸入)
エド・マクベインによる「87分署」シリーズからの映画化。
原作は、どちらかと言うと「7人の刑事」などのような複数の刑事が活躍する集団物で刑事キャレラは妻帯者。
この作品はジャン・ルイ・トランティニアンが一匹狼の刑事キャレラを演じ、ラストでは辞職するハードボイルド・タッチの作風となっている。フィリップ・ラブロ監督の「相続人」に先駆けた出世作で、ドミニク・サンダ、ステファーヌ・オードラン、ラウラ・アントネッリ、カルラ・グラヴィーナと女優陣も充実していた。なぜか「ある愛の詩」の原作者エリック・シーガルも出演している。
公開当時、国内盤はシングルのみの発売だった。海外でも同様だったらしい。
このアルバムには「この映画のアルバムは以前ドイツで発売されたことがあったが、その時には他作品の曲が混ざっており、正当なサントラ化はこれが初めてだ」というようなことが書いてある。新収録された7曲は、どれも既収録曲の別バージョンとなっている。
ちなみにシングル化されていたのは1曲目と4曲目で、それぞれ「刑事キャレラ10+1の追撃」「追いつめる」とタイトルがつけられていた。
このテーマ曲も、同じフレーズの繰り返しに口笛がかぶさる、「恐怖に襲われた街」と同様な作風になっている。
「追いつめる」は、弦楽器を活かしてスケール感のある曲に仕上がっている。
6曲目は口笛をメインにフューチャーしたテーマ曲の別バージョン。
こちらは「恐怖に襲われた街」とは、うって変わって多少変化には乏しいものの、統一感のあるアルバムとなっている。
各曲の出来もなかなか良い。