歌麿〜夢と知りせば(1977) アナログ盤アルバム 広瀬量平による名盤。 広瀬量平は「尺八と管弦楽のための協奏曲」などオーケストラと和楽器の競演する楽曲を得意とする作曲者らしい。 本作でも京琴を使ったりしているが、全体的には洋楽器を中心にしながらも和のイメージを求める試みがなされている。 いくつかの曲でフルート(正確にはアルト・フルートという種類らしい)演奏を、尺八のイメージでフューチャーしているのも面白かった。 海外市場を意識した作品のためか、各曲に英題が付けられている。 A1「愛のテーマLOVE THEME FROM UTAMARO'S WORLD」は12弦ギターから始まり、フルート、そして弦楽器が美しいメロディを奏でる。 A2「メイン・タイトル(夢と知りせば)MAIN TITLE(ALL IN DREAMS)」は夢幻的なタッチで始まり、力強いダイナミックな演奏へと変わっていく。 A3「男伊達OTOKO DATE(A BRILLIANT GUY)」は電気チェンバロとフルートの掛け合いが楽しめる軽いタッチのユーモラスな曲。 A4「春怨EVENINNG IN SPRING」は愛のテーマのヴァリエーションだが、京琴がスロー・タッチで幻想的な演奏を繰り広げ、まったくイメージの違う曲となっている。 A6「波紋RAIN IN THE GARDEN」は、フルートを中心に心の不安を描いていく。 B1「夢DREAM」は、ヴィオラを中心とした美しく幽玄的な曲。 B2「再会MEET AGAIN」は愛のテーマのヴァリエーション。 B3「巷IN THE STREET」は男伊達のヴァリエーション。スローなテンポのボサノバ曲。こちらではフルートのみでメロディを演奏している。 B5「恋慕草紙LOVE HISTORY」は、夢のヴァリエーション。 B7「終曲FINALE」も、愛のテーマのヴァリエーション。力強いドラムが印象的で、空間の広がりを感じさせるダイナミックな演奏が展開する。 映画は、実相寺昭雄監督らしい映像美が生かされたエロティック時代劇で、裏側に流れる権力批判の精神が作品を力強いものにしていた。 タイトル・ロールを岸田森が演じ、平幹二郎、岸田今日子、緑魔子といった演劇界の大物、内田良平、岡田英次、成田三樹夫の名悪役、中川梨絵、渡辺とく子の日活ロマンポルノ女優まで入り乱れる異色のキャスティングも魅力だった。 海外上映版ではエンディングがカットされ、平幹二郎演じる夢の浮橋の決闘シーンで終わったのだとか。 火の鳥(1978) アナログ盤アルバム テーマ曲のみミシェル・ルグランが担当、劇中の音楽を深町純が担当した。 日本を代表するフュージョン・ミュージシャンとして海外アーティストとの共演も多い深町純だが、今回はオーソドックスなオーケストラ曲となっている。指揮は山本七雄、演奏は新日本フィルハーモニー交響楽団。 「スター・ウォーズ」以降SFやファンタジーにシンフォニックな曲をつけることが主流になっていた時期の作品。 A1「火の鳥のテーマ」は、勇壮さよりメロディの美しさを追求したミシェル・ルグランらしい作品となっている。松崎しげる、サーカスなど複数のアーティストがヴォーカル・ヴァージョンでカヴァーしたが、ヒットしたものはなかったように思う。 深町純による楽曲は、オーケストラ演奏を生かしたダイナミックなものだが、映像をサポートすることに徹しているため、音楽のみを聴くと意外と地味な印象になってしまう。 中ではA4「ヒナクとグズリの愛のテーマ」が比較的美しいメロディ・ラインを持っている。 B1「侵略〜ジンギ軍のテーマ」は。勇壮なマーチ曲だが、録音が古いためか厚みにかけるのが残念。 B2「牧歌」は、日本的な旋律を生かしており、小品ながら、なかなかの聞き物となっている。 最終曲のB4「組曲・火の鳥の復活」はテーマ曲のメロディから始まって、不安感をかきたてる不協和音が続き、再びテーマ曲へと戻っていく。 映画本編は、市川崑監督が金田一耕助シリーズで東宝のトップバッターだった時期に撮った大作。手塚治虫の代表作を谷川俊太郎が脚本化ということもあり、期待したのだが、残念な出来栄え。 せっかくの超豪華な顔ぶれも、あまり生かされていない。3人の女官をピーター、カルーセル麻紀、木原美知子に演じさせたのもアイデア倒れに終わった。 高予算作品ながら、アニメと実写の合成が効果を上げていないこともあり、スケール感にも欠けていた。(特に死んだ火の鳥のヌイグルミがショボい)。 |