CATCH MY SOUL(1974) アナログ盤アルバム(輸入) 「プリズナーNo.6」で知られるパトリック・マクグーハンの監督作品。テレビでは多くの監督作があり、「刑事コロンボ」では出演とともに演出も常連となったマクグーハンだが、劇場用作品は本作のみらしい。 内容は「オセロ」のロック・ミュージカル版ということなのだが、実際の曲はリズム&ブルースっぽい。 オセロをウッドストック・コンサートにも参加したリッチー・ヘヴンズが、デスデモーナを「ザ・モンスター」のシーズン・ヒューブリー(彼女のヴォーカル曲はなし)が演じた。 日本ではソフト化されておらず詳細は分からないが、アルバムのライナーノーツによると設定はかなり変更されているようで、舞台はニューメキシコのコミューンで時代は現代らしい。 このジャンル、あまり詳しくないので良く分からないのだが、やはり黒人ミュージシャンのトニー・ジョー・ホワイト、デラニー&ボニー・ブラムレット、俳優のランス・ルゴールが主にヴォーカルを取っている。 それぞれ5つのパートに分かれた「OTHELLO(ヴォーカル;トニー・ジョー・ホワイト)」と「CATCH MY SOUL(ヴォーカル;ランス・ルゴール)」がテーマ曲で、弾き語り風に物語を進行させているらしい。 一曲のランニング・タイムは短めになっており、両面で24曲が収録されている。 女性コーラスを配してゴスペル・ソング風なトニー・ジョー・ホワイトのA8「BACKWOOD PREACHERMAN」、デラニー・ブラムレットのA11「THAT'S WHAT GOD SAID」、渋い雰囲気で歌い上げるリッチー・ヘヴンズのB5「BOOK OF PROPHECY」、B9「WHY」などが面白い。 曲調からしても宗教的な色合いを含んだ内容と思われるが、曲者のマクグーハンがどのように描いていたのか一度観てみたい作品。 AT LONG LAST LOVE(1978) アナログ盤アルバム(輸入) 2枚組で、なぜかA面とD面、B面とC面に分かれている。 1970年代前半、ピーター・ボグダノヴィッチは「ラスト・ショー」「おかしなおかしな大追跡」「ペーパー・ムーン」3作の成功によりハリウッドで最も期待される若手監督となった。 当時キネマ旬報社が出した世界映画人名事典監督(外国)編でも破格の1ページ以上(4段強)をさいていることからも、どれだけ期待されていたかが分かる(なにしろ、すでに一流監督だったフランソワ・トリュフォーで1段半、サム・ペキンパーでさえ2段半強だった。ちなみに「ジョーズ」の大ヒットで注目されたスティーヴン・スピルバーグで2段強)。 ところが続く「デイジー・ミラー」本作「ニッケルオデオン」が3連続大コケ、日本では公開すらされなかった(「ニッケルオデオン」は6年後に何とか陽の目を見た。出来栄えそのものは、それほどひどくはなかった)。 ハリウッドから追放状態になり、未公開作1本をはさんで、生地ニューヨークに戻りオードリー・ヘプバーンを主演に「ニューヨークの恋人たち」を撮るが、これまた日本では劇場公開できないほどの失敗作。 ドツボにはまり、現在はテレビを中心に雇われ仕事をこなす職人監督となってしまった。 その3作の中でも致命傷となったのが、当時セクシーなタフガイとして人気を誇ったバート・レイノルズを主演に迎えた本作。歌はともかく、マデリン・カーン以外は踊れない俳優を揃えてしまったことが敗因だとも言われている。レコード・ジャケットのスチールを見ると、確かに足が不ぞろいだし、ローキック程度にしか上がっていない。 内容は「踊るニューヨーク」や「上流社会」など往年のミュージカル映画でならしたコール・ポーターの曲(作詞も)を全面的にフューチャーしたミュージカルで大金持ちのラヴロマンスを描いたものらしい。 まあ、「ハリウッドの最初の息子」と呼ばれたボグダノヴィッチらしい企画ではある。 実はつい最近までコール・ポーターの伝記ミュージカルだと勘違いしていた。。 アルバムはバート・レイノルズ、シビル・シェパード、マデリン・カーン、アイリーン・ブレナンといった俳優たちの歌声が楽しめて悪くないのだが、フィルムからミキシングしたらしく背景音などのノイズも一緒に入っている。臨場感はあるが、音質が落ちるのが残念。 曲自体は、もともとオールド・タイプのハリウッド・ミュージカルにはイマイチ馴染めないほうなので、本作もピンと来なかった。 かといって本格的なファンにはジーン・ケリーとかフレッド・アステアとかの方がしっくりすると思え、いずれにしても苦しい企画だったかもしれない。 |