移動と修理のタイムスパン 作:ミッキー 戻る トップへ
バトルテックワールドは、隣の星系に行って帰ってくるだけで最低1ヶ月くらいかかるという世界です。
どういう手順かと言うと、
1、1週間ほどかけて降下船でジャンプポイントまで移動する。
2、ジャンプシップにドッキングしてジャンプ(超光速移動)する。このとき、エネルギーチャージがおわていなかったら1週間ほど待つ。30光年を超えている場合、途中の恒星系で1週間ほど寄り道して、エネルギーをチャージしたのちようやっと到着。
3、ジャンプポイントから惑星まで、1週間ほどかけて降下船で移動する。
4、用事を済ませて1から3の手順を逆に踏んで帰る。
となります。
ジャンプポイントから惑星までの移動にかかる時間は、3日程度から数ヶ月まで様々ですが、平均的な星系だと1週間前後となります。
コムスターという電電公社と大航海時代のキリスト教が合体したような組織が、超光速通信サービスを提供してくれます。しかし、これにはランクが有って、Aクラスの通信基地だと50光年ほどの距離まで通信できますし、頻繁に通信を送っていますが、Bクラスの基地だとジャンプシップと同じく30光年だけです。しかも、基本的に1週間い1回しか送信してくれず、送れる情報量はものすごく小さいのです。
移動にかかる時間が長く、情報も送りにくい。
この状況、ある時代に酷似しています。
大航海時代もしくは、それより少し先の時代、です。
移動手段も通信手段も、船で航海するしかない。狼煙や、望遠鏡と手旗信号などを使った各種伝達手段もありましたが、海の上となるとそれも難しい。
いえ、あれよりもよっぽどひどいかもしれません。隣の国に行って帰ってくる程度なら、大航海時代なら1週間か2週間も有れば充分可能であることも多かったのですが・・・今は一月程度はかかります。
中心領域の端から端まで・・・蛮王国や辺境を含めないとしても300光年。(蛮王国まで含めたら1000光年とかになる)
移動しようと思ったら何箇月もかかります。
・・・いやまあ、リチャージステーションの在る星系のみを通る主要航路を通ればもっとずっと早くつくのでしょうけど・・・
こういう世界ですから、バトルテックワールドでは、酷い損傷を受けたメックや気圏戦闘機が修理に数ヶ月を要するというのは極々当たり前のことなのです。
なにしろ、バトルメック部品の備蓄などほとんど無い世界です。ちょっとひどい損傷となると、部品の備蓄が豊富という、稀な星系へ補給要請をし、それをえっちらおっちら運んできてもらわなければなりません。それまで、バトルメックは部品が無いために修理不能状態です。
補給がキツイの等はある意味辺り前と言えるでしょう。
こういった事は、現実の社会でもまま有ることです。
ミッキーの大学の同期の友人の一人は、北海道で農業をやっています。
かれは、アメリカ製の大きなコンバインを使っているわけですが・・・壊れた場合、同じ惑星上のアメリカからコンバインの部品を取り寄せるのに数ヶ月かかる事もままあるそうです。(何しろ船便です)
部品が間違って届いた日には、送り返して正しい部品を送ってもらってから修理。半年コンバインやトラクターがお蔵入りも珍しくないとか。
しかし、むしろそれでいいと思ったほうが妥当なのです。
仮に、降下船で惑星上に降下し、侵攻作戦を行ったとします。
戦闘で敵に深刻なダメージを与え、撃退しました。次の日、同じ部隊が、修理を完全に終えて元気に出てきました。倒しても倒しても敵はメックを修理して再出撃してきます。
まるでチェスの千日手です。
そうしているうちに数ヶ月がたち、当然ながら膨大な量のメック部品が消耗されていきます。
この時、メック一機毎に一日平均装甲板4トンと弾薬4万CB相当が消耗するとします。
仮に一個大隊のメックが3ヶ月これを続けた場合・・・8万CB×36機×90日=2億5920万CB。
1CB800円程度として換算すると1555億2千万円、重量でいえば2万トン近くの物資が消耗する計算です。もちろん、これらは弾薬と装甲板だけのかなり温い費用計算で、実際にはもっとずっと費用がかかります。例えば、中枢部品は・・・?
ちなみに、惑星侵攻作戦では、しばしばメック3個連隊という戦力で行われます。先ほど上げたのは1個大隊の場合ですから、1555億2千万円の実に9倍。これに、後方支援人員・・・整備兵や事務員や警備をする歩兵などの維持費。確保した都市を制圧する膨大な歩兵たちの衣食住、医療、給与などなども必須です。降下船や気圏戦闘機にも当然金を使う必要があります。もちろん、戦死した兵士達にはかなりの弔慰金が必要です。
これが、どれほど荒唐無稽な消耗であるのかは、おわかり頂けると思います。
普通は、戦闘が何度も繰り返されるうちに、敵味方ともに戦力が大きく減り、どちらかが作戦遂行が困難になったと判断して撤退するものです。大きなダメージを受けた部隊は、大規模な修理施設と部品補給庫、療養施設のある惑星・・・つまり「後方」に戻って、補給と再編制を行うものなのです。
当然、戦闘は上の例ほど頻繁に起こるわけがありません。通常は、一回の侵攻作戦につき数回程度ではないでしょうか?
実際に、大きなダメージを受けた部隊は、長期間の『休暇』を後方で取ります。大抵は、自分達が与えられている領地です。そして、こういった場所で、領地から得られる収入でメックの部品を購入して治すわけです。
領地からの収入はあまり変化しませんから、部品を買うとなると、かなりの時間がかかります。
また、部品を取り寄せるのにも時間がかかります。
通常は、数ヶ月程度、長いと数年程度後方での再編成に時間がかかります。
あるいは、人員は領地に戻って、メックなどの機甲装備を修理工場において来て、修理を依頼します。
継承国家は、大抵正規の修理工場をいくつも抱えていて、酷い損傷の修理を引き受けてくれるのです。これは、補給と並んで、継承国家が戦闘部隊に与える後方支援として重要なものです。
カーディーラーの簡易工場で修理できない場合メーカー修理に出す。
電気屋さんのおじさんに修理を依頼したけど、手におえないのでメーカーの工場に送って修理してもらった。
こういった、メーカー修理という状況に近いようです。
こういったメーカー修理になると、部品が充分に取り置きしてある国内メーカーの場合ですら一ヶ月程度はかかります。
星間戦争の長いタイムスパンのメックウォリアーにおいては、数ヶ月程度修理に時間がかかるというのは、ごく辺り前のことだと思ったほうがいいのです。
詳しくは、メックウォリアーのP23〈補修・整備=メック〉の項と、P54の[装備]の冒頭ページ、P117〜120の修理関連、P131〜134のメックの構造、車両・メックの価格計算、P148の経済、P150〜153の31世紀の領地保有、P186〜187の宇宙船、バトルテックのP9闇の時代−継承権戦争、P13メック戦士−継承権戦争における戦士達P45や47や49の技術資料−機体構造、等をお読みになることをお勧めします。