『驚異のバンシー』 作:ミッキー 戻る
バンシー。
皆さんは、このメックに対してどの様な印象を持っているでしょう?
95トンなのに移動力が4/6/0もあるせいで火力が極端に貧弱な、使えないメックでしょうか?
確かに、その印象は一面の真実を捕らえています。しかし、また別の見方もあるのです。このコラムでは、バンシーの別の側面からの観測にお付き合い下さい。
バンシー。95トンの重突撃メックです。このクラスとしては脅威的な4/6/0というスピードを誇り、240点という、超のつく分厚い装甲を持っています。メックウォリアーに載っているメックの中で、バンシーの装甲厚は、アトラスに次ぐ第2位。なんと、バトルマスターをもしのぐのです!
その巨体から繰り出されるパンチは粒子砲に匹敵する偉力を誇り、キックはオートキャノン20に迫る偉力です。
過大な出力のエンジンに大量のスペースを取られる上に放熱器が過剰に多いため、武装は貧弱であるものの、粒子砲とオートキャノン、小口径レーザーで武装しており、それなりの攻撃力は有ります。改造方針:
放熱器が6つもついています。4つはずして、中口径レーザーを装備すれば随分強くなります。
大改造をするのであれば、オートキャノンを外して大口径レーザー1門と中口径レーザー3門を装備し、放熱器を一つ追加しましょう。遠距離では1点+移動の発熱が、近距離では移動+小口径レーザー分の発熱が有りますが、充分対応できます。
さて、バンシーというメックは上記のような移動力と放熱過大、武装貧弱という強襲メックなわけですが、驚異的な所が別にあります。
なんと、バンシーは2400年代末にたったの10年間、5000機しか生産されなかったにもかかわらず、5世紀半を経た時点でその3分の1がなお現役なのです!
すごい点を確認してみましょう。○5000機も作られた!
マイナーなメックなら数百台作られてお蔵入りも良く有ります。技術力が低下した第3次継承権戦争の頃になって再度注目され、生産が細々と再開されたために多少有る、程度のメックも多いです。それと比べて、5000機も作られています!
○1年間に500機も作成!
10年間で5000機ということは、強襲型にもかかわらず年間500機も生産されたことになります。強襲型は製造が難しく、3025年代の生産ラインでは年間数機程度の製造がせいぜいです。生産性の良い強襲メックでようやっと十数台です。
生産が容易な軽量級メックであるヴァルキリー(30トン)ですら、年間百数十台程度である。しかもこれは、星間連盟華やかなりし頃のままの生産能力を持つ自動工場での生産能力です。
これに匹敵する生産量となると、ハチェットマンの年産600台程度くらいしか思い付きません。この生産量は、グレイ・デス・メモリーコアの発見により技術の上がった一大複合工場の複数ラインでの製造+天才研究者、ドクターバンザイによる超のつく生産性の高い設計によるものであり、普通のメックはここまで行きません。
いやまあ、複数の国家の複数の工場で軽量級がという条件なら他にも有るかもしれませんが・・・
強襲型のバンシーが、地球帝国だけで年間500機も作られたのは驚異としか言いようが有りません。
○5世紀半を越えてなお3分の1が稼動!
現代の兵器なら、せいぜい50年で老朽化して使い物にならなくなるものなのですが・・・それが、実戦配備されてなお5世紀半です。いやはや、脅威的としか言いようが有りません。
ただ、これには幾つかの要因があるように思います。
@バンシーの装甲は厚い。機体中枢も分厚い
240点の装甲厚です。そう簡単には貫けません。装甲を破壊しても、まだまだ厚いマイアマーの壁が有ります。メックが生き残る第1位の条件を満たしているといえるでしょう。
Aバンシーは格闘が強い上に早い
強襲型にしては早いので、迂闊に近づくことは、驚異の格闘能力に見舞われることを意味します。普通、だれも近づきたくないでしょう。となると、遠距離からのちまちました攻撃になります。ダメージを多少は受け難い要素がある事になります。その上、強襲型にしては早いスピードが、多少なりとも機動防御をしやすくしています。
B強襲メックは大事である
通常、強襲メックは貴重であり、第一線で戦闘を繰り返したりはしません。指揮官は、重要な局面になるまで強襲型を温存します。つまり、強襲型は戦場で危険にさらされる可能性が低いのです。
Cバンシーは二線級
大事な強襲メックであるにもかかわらず、バンシーは弱いです。そのため、早くから二線級メックと呼ばれ、不評でした。そのため生産が10年で打切られたのですし、武王達の私兵部隊に払い下げられたのですし、安全な後方のでの任務が多かったのです。第一線での過酷な戦場での闘いから遠いということは、破壊される可能性が低下することを意味します。
Dバンシーは遠距離が弱い
バンシーは遠距離が弱く、あまり驚異では有りません。そのため、ある程度距離を保っている場合、もっと恐ろしいメック・・・例えばウォーハンマーやマローダー・・・を先に狙おうという心理が働きます。あるいは、もっと撃墜し易い・・・スティンガーやヴァルキリーなどの軽量級を先に狙って、戦力を確実に減らそうとする意識が働くことがまま有ります。
つまり、ある意味相手にされないメックという悲しいが生き残り易い理由が有るのです。ミッキーの個人的見解では有りますが、これらの理由が複合して、バンシーは5世紀半を経てもなお3分の一が生き残っているのだと思います。