「少佐、連邦の傭兵を牽制している部隊から報告書が届きました。」
「うむ。」
遺跡の入り口付近の部屋に作られた仮司令室。
白田少佐は、そこでプリントアウトされた報告書を受けとった。
「ふむ・・・うまくやっておるようじゃな。被害も予想範囲内じゃ。」
「は!」
補佐官のレオ・ギボンが答える。
「あとは、探索部隊からの吉報を待つしかないのう。」
「は!」
白田少佐は、腕組みをして、ただじっと待った。脇のディスプレイには、偵察兵が探索を行なうにつれて判明してきた基地の地下構造が、3D表示されている。
「少佐! 巨大な通路が発見されました! メックを通せるサイズです! 方角から見て、この山の向こうに出口があるのではないかと思われます。」
オペレータが明るい声を漏らした。
「おお! と言う事は!」
白田少佐も、明るい声を上げた。メックの通路をたどっていけば、当然バトルメックの格納庫に出る可能性が高い。もう一歩である。
程なくして、メックベイに通じていると思われる巨大な扉が二つ確認された。一つは厳重に閉ざされセキュリティも厳しいので開けるのは非常に危険であるが、もう一つの方は簡単に開けられそうだと言う。
「うむ。よくやった。それと、慎重に行動しろ。ここまで来て、罠にかかって全滅などするのは無念すぎるからな。命を大切にしろよ。」
白田少佐は、偵察兵達にねぎらいの声をかける。
「おい、罠を解除しているテック達に、終わった者からメックベイらしき場所に応援に行ってやるよう伝えろ。わしも現場に行く。ここは頼むぞ。」
「は!」
レオ・ギボンが敬礼した。答礼すると、白田少佐はエレベータへと向かう。久しく整備もされていないのに、まだまだ生きている区画が多い。実に便利だ。同時に、厄介でも有る。罠が生きている事も意味するからだ。
罠を解除し、扉を閉ざしているプログラムを解析。全てを終えて倉庫内に入れたのは、この2時間後であった。
探知器を持ったテックと偵察兵が前衛に立ち、投光器等をもった兵士達が後に続く。白田少佐も、倉庫内に足を踏み入れた。
「ほう・・・すばらしい・・・これだけの数のメックが・・・使えるかどうかはわからんが・・・それでも・・・」
あちこちで、感嘆の声が漏れる。大きさから推測して軽量級のメックがほとんどのようだが、百機以上ものバトルメックが並んでいる。いや、まだ防護シートがかぶせられているので確認出来た訳ではないが、それでも大方のの推測は可能だ。
「慎重に、罠に注意しながら調査を開始せよ。明かりは点けられるか?」
「やってみます」
テックや兵士達が、ばらばらと散っていった。そして・・・
「少佐、これが、ざっと調べた機体スペックです。1機ですが、本物のバトルメックも有るようですが・・・」
「ふむ・・・」
テックの顔は、今一つさえない。それもそのはずだ。この大量のメックは、作業用メックを改造して作った、間に合わせ的な物でしかなかったのだ。民生メックと呼ばれていたらしい。多数の失機者や、養成校を出たてのメックウォリアー来てくれたというのに、これでは期待外れも良い所である。
「本物のバトルメックはどうなのだ?」
「操縦席の表示を見た所では、エンジンは本物のようですので、少しは期待できます。・・・所詮、軽量級ですが。」
「ふむ。まあ、牽制や防衛程度になら使えるか。あるいは都市戦闘なら・・・そうか、その為に作られたメックなのか・・・」
白田少佐はひとりごちた。惑星防衛のために急遽作り上げたメック。長距離移動も、降下船で輸送する事も考える必要の無いメック。ならば、これで充分だったはずである。
「まあ、ないより増しじゃ。どうにか、使い方を考えてみよう。少なくとも、交換部品に事欠かんのは有り難いはずじゃ。」
「はい。」
「1機を整備して動かせるようにするまで、整備兵が一人ついて約3日。養成校を出た士官にも整備をしてもらうとして・・・完熟訓練も考えると実戦投入は・・・そのための時間稼ぎが、かなり大変だが、何とかするしかない。むう・・・」
白田少佐は、今後の戦略に関して深く考えこんだ。このメック達が始めて実戦参加するのは、11月5日の事になる。