守護天使小隊の救援のためにヴァレリウス小隊をシャネルクイーンで送り出した後。クロフォード中佐は、司令室に駆け込み猛烈な勢いで指示を飛ばし、各方面と連絡を取り合った。
「執政官を捕まえろ! それから、惑星中の重要拠点に警告。クリタは大規模な増援を得たらしい。いつどこが襲われるかわからん。注意されたし、とな。」
「はっ!」
「メインジェネレーター出力上昇! 砲台にエネルギー注入、レーダー、戦闘出力! 全館放送用意。」
「了解!」
「全軍に告げる! 当基地は今より臨戦体勢に入る! 総員、第一級戦闘配備! 繰り返す! 総員、第一級戦闘配備!」
クロフォード中佐の放送により、サイレンがなりひびき、気圏戦闘機や戦車に燃料が注入され、基地内各所にある武器庫から銃やバズーカが引き出された。キャンディ作戦が発動された時の人員に加え、普段は生活保全や事務仕事をしている郎党、さらには子供たちまでが走り始めた。
「中佐・・・やはり・・・?」
「ああ。守護天使小隊が襲われた森までの距離は30キロしかない。そこに大部隊を伏せることができるなら、この基地に奇襲も可能だろう。というか、こっちの主戦力をおびき出して基地の戦力を減らすつもりだったんだろう。」
「そ、そんな!? では、シャネルクイーンを呼び戻さないと!!」
「言うな。救援を求める仲間を見捨てるような司令官には誰もついてこん。」
「はい・・・」
「スキマー隊、発進準備はできたか!? 終わったらすぐ偵察に出てくれ。周りに敵が迫っていないか調べるんだ。ジープも出せるか? よし、そっちも使え。」
「中佐。守護天使小隊から再度モールス通信。読みます。テキ センリョクハ ケイリョウキュウヲ チュウシントシタ 30キ イジョウ!? ゾウエント ゴウリュウシ セントウチュウ・・・なんてこった・・・」
「一個大隊か・・・ほとんど軽量級でその数となると・・・総数は連隊規模の可能性が高いな・・・」
「確かに・・・」
「奥の手を使うか・・・おい。整備班に、予備メック全てを含めて発進準備をして置けと伝えろ。臨時で第5小隊を編制する」
「え!? は、はい! では、あの4人に連絡します!」
「うむ。」
「執政官と連絡がつきました!」
「よし、まわせ。・・・ああ、執政官殿。忙しい所をすいません。実は、クリタが連隊クラスの増援を得ていたらしくって。理由? さあ? 増援をよこすには1ヶ月はかかりますから・・・その頃となると、アイアースからメックを出して配備しはじめた頃です。これは充分な理由ですね。とにかく、奇襲されたりしないように惑星全土で警戒をお願いしたいんです。救援を送ろうにも送れませんから。我が部隊は現在一個大隊と交戦中です。それと戦闘の報酬などに関してですが・・・は? しかし、この基地が降伏したら、後は準バトルメックだけとなるわけで・・・首都が落とされる可能性も非常に高くなります。ボーナスが有るのとないのとでは士気がまったく違うんですよ。あ? すいません、敵の増援が来たんできりますね。え? いいんですか? ありがとうございます。」
「中佐! 遠距離レーダーに反応。5時の方角にかすかに敵メックらしき反応が!」
「メインスクリーンに映せ。それと索敵範囲を絞りこんで集中探査しろ!」
「は!」
「なに!? つ、次々と数が増える!? 連隊クラスか!?」
「なんて数だ・・・」
「出ました! 核融合反応60以上!」
「・・・!! やもうえん・・・俺も出る! ここは任せたぞ!」
「はっ!!」
11月5日の午後・・・後に第2次パエトン攻防戦と呼ばれる激戦の火蓋が、切って落とされようとしていた・・・