『爆弾』           戻る

 

『ロックウッド少尉の物思い』 作:Coo   

ちょうどその頃、ウツホ班が侵入した地点より600m程離れたところでギリ・スーツに身を包みライフル・スコープを覗いている一人の男がいた。
スキマー分隊の隊長であるロバート・ロックウッド少尉である。
彼は完全に闇と同化し、顔にはフェイスペイントを施していた。

もし、敵に見られたにしてもそいつは気づきもしないだろう・・・。

・・・どうやら今のところうまくいっている様だな。
今回の作戦の結果によって今後の戦いが決まってくる・・・。
しかし、『獅子は子を千尋の谷につき落とす』とはよく言ったものだ。
・・・いままさにその状況なのだからな・・・。
ロックウッド少尉は一人で苦笑していた。
そして一人で監視を続けていくのであった。
ウツホ班が戻ってくるまで・・・・。

 

『撤退準備開始』 作:Coo

あれから、隣にあった駐留所においてあったメックに対して細工を施した。

この駐留所にいたのは民生メックが2個小隊。
バトルメックはスティンガーが2機とアーバンメックが2機そしてマローダーが待機していた。
その他にも戦車が2個小隊程待機していた。
早速、工作作業に移るが多数の歩哨が警戒任務に就いており爆薬を仕掛けることが少し難しかった。
俺は、バトルメック5機に対して爆薬を仕掛けていった・・・
その時であった、整備兵が二人と助整兵がいくらか駐留所内に入って来たのは・・・
俺は少し慌てて隠れた。もしここで爆薬が発見されれば事である。
ウツホ軍曹も様子を見ている・・・

「さて、とっとと日常点検を済ませるか・・・・う〜ん特に異常は無いな・・・」
「ばか、よく見ろ少しゴミがついているじゃないか。ちゃんと取らなければ」
「え〜、そんもん明日勝ってからでもいいじゃないか?」
「お前って奴は・・・だからいつまで経っても一人前と認めてもらえないんだよ・・・こういった汚れのせいで機体が重くなってわずかなりと動きが鈍くなる原因になるし、細かいゴミが関節部に入って動きを妨げることにも繋がる。マイアマーの隙間にこういった土くれが入り込むと、マイアマーを傷つけて断烈の元になる。電装関係の場所にでもはいったりしたらさらにエライ事になる。もうちっと細かい事に気を配れ! もういい、俺が取る!」
そいつは俺がアーバンメックの右脚に仕掛けたC4を取り外した。
「おい助整兵、この泥の塊を捨てておけ」
「はっ、了解しました!」

どうやら、連中はC4を戦闘で付いた泥の塊と誤解しているようだな・・・
まあ、見ようによってはそう見えないことも無いし色も泥に近くしてあるからな・・・

その後、奴らは何事も無かった様に駐留所を出て行った。
奴等が出て行ったあと、一部の戦車や燃料タンク、砲台への送電設備、仮設滑走路などにC4爆薬を仕掛けた。
施設や燃料タンクに仕掛けたのは空き缶に偽造したものだ
気圏戦闘機にも細工を施したかったが意外に警備が手堅く断念した。

その気になれば出来ない事も無かったが、万が一敵に発見されればことである。

「ウツホ軍曹、そろそろ撤収の時間です」
「・・・よし、アドルファとシグルの二人と合流次第、撤収する」
「了解しました、それじゃあ二人を探しましょう」
こうして彼らは二人を探すのであった。

 

『撤退開始』 作:Coo

その後、彼らは残りの二人と無事に合流することが出来た。
「アドルファ、首尾は?」
「巧くいきました、そちらの方は?」
「ああ、こっちも巧くいったよ」
「それじゃあ、撤退しましょうか・・・」

彼らはあらかじめ決めておいた離脱地点に向かって行った・・・

その場所にも歩哨は立っていなかった・・・
しかし、目標の扉には鍵が掛かっていた。
「クラーク、開錠しろ」
「了解、開錠します!」
クラークは懐から開錠装置を取り出し開錠作業に移った・・・

保安装置は・・・無いな・・・扉の方にも・・・よし行けるぞ。
クラークは保安装置の有無の確認と、実際に開錠するのに約20秒の時間を要した。

合格点、と言ったところかな・・・。ウツホ軍曹はクラークが開錠するのを見ながらそんな事を考えていた。
本当ならもう少し早くやってもらいたいが・・・まあ、いいだろう。

「開錠、成功しました。保安装置もありません」
「よし、よくやった伍長」
「ありがとうございます」
クラークは仕事を狙いどうりに果たした笑みを浮かべていた。
「よーし、アドルファが前衛、シグルは後衛に回れ。これより離脱地点に向かう」
「了解」
「解りました」
彼らは扉をくぐり、夜の闇へと消えて行った・・・

・・・どうやら巧くいった様だな・・・。
ウツホ班が基地から出てくるのを確認してロックウッド少尉はほっとした。
ウツホ達が一緒にいたのだから、そう心配する必要は無いか・・・
いや、こういった油断から作戦の失敗に繋がるのだ・・・
あいつ等は、本当に良くやった。
ロックウッド少尉はそんな事を考えながら、撤退準備をしていた。

 

『レポート作成』 作:Coo

あれから、スキマーを隠してある所まで戻り急いでベース・キャンプに帰還した。
無論、敵に見つかるようなへまはしていない。

精神をすり減らす様な危険な復路を駈け抜けて来た彼等であったが、休む暇は無かった。
  危険を承知で実施した工作も実戦部隊と連携出来なければ偶発的な効果を期待する事しか出来ない不確かな要素に留まってしまう、無駄に終わらせない為にはその事実を報告しなくてはいけない。
  だが、それは言う程た易い事ではなかったのだ。

  戦闘中のMW(それも場合によっては実戦経験に乏しい新兵)が容易にその情報を参照出来る様にする為には単純な情報の羅列では意味が無いからだ。
  無駄に終わらせない方法論の手段は今、彼等の前で輝いていた。
  メックのシルエット状の記入用紙(白紙)である。
  これから彼等は己の記憶力に果敢なる挑戦を開始する事になるのだ。

 ひょっとするとドラコ連合軍の兵士よりも手強いかも知れないな・・・

  クラーク伍長はマーカーペンの蓋を齧りながらそう考えていた。
  しかし、時間はなかった
  
それに、背後では情報処理担当官が鬼気迫る表情で提出されたデータを次々統合し、メックのデータバンクへ放り込むべくマーカーの山を加工していたからだ。

  下手な事を言ったら殴られるよな・・・
  加えて2〜3の、口に上らせる機会を得そうも無いジョークを胸に閉じ込めると伍長は記入作業に没頭していった

 ・・・デスクワークが得意な奴なんて、この世にいるのだろうか? そう言えばアルベルト少尉は書類整理とか得意そうだよなあ・・・・あっ、あと政治家とかも・・・
 クラークはそんなたわいも無い事を考えながら作業をしていくのであった・・・

彼らは夜を徹してコレを完成させた・・・そして本作戦の指揮官であるギリアム少尉に提出した。
提出する頃には夜明けまでもうまがないという時間となっていた。


 ギリアム少尉は今、クラーク達から上がってきたばかりのレポートをチェックをしていた。
 「・・・これなら良いだろう。ご苦労だった。この短時間で良くやってくれた。」
 「恐縮でありますギリアム少尉! それではこれで失礼いたします!」
 「ああ、待て。」
  クラークはぎくりと足を止めた。なにか問題でもあったのだろうか?
 もしミスでもあったら、ナイトストーカーへの正式入隊は先延ばしになる。できれば避けたい事態だ。しかし、そんな心配は杞憂だった。ギリアム少尉は、にこりと笑うと、こういったのだ。
 「クラーク。忘れ物だ。」
 ギリアム少尉は、新品の黒い服を手にしていた。今、クラークが持っているものとまったく同じデザインと色の服だ。ただ、その襟には、黒地にナイフを持って忍び寄る男・・・元リャオの特殊部隊、シャドウストーカーの徽章が付いている。今では、シャドウストーカーの生き残りが育て上げた、ナイトストーカーの徽章だ。これが渡される、という事は・・・・すなわち。
 「では・・・合格して正式入隊、という事ですか!」
 事務手続きなどの関係上、せいぜい今回の一戦の後始末が終了してからだと思っていたのに、こんなに早く正式入隊できるとは・・・
 「そうだ。たった今から、お前はナイトストーカーの一員だ。・・・・・ほら、ここにサインするんだ。」
 「は!」
 クラークはギリアム少尉の差し出した2枚の書類を読んだ。片方はナイトストーカー見習いとしてスキマー分隊に入る時に提出した書類と内容はほぼ同じで、危険かつ過酷な任務に付くことへの承諾書。(仮)という但し書きが消えているだけである。もう一枚は、ナイトストーカーへの入隊許可の辞令兼自分の意志で入隊するものであることの宣誓書。どちらも特に問題はない。双方(クラーク控えと部隊控えの2対なので計4枚)にサインした。
それを確認すると、ギリアム少尉はにこりと笑って訓戒を始めた。
 「クラーク。ナイトストーカーの任務内容についてはもう知っているだろうが、危険かつ過酷、そして、非常に重要な任務が目白押しだ。消耗も激しい。常に新人の登用と訓練を行っているというのに、いまだに定数に戻せないでいる。けして、命を粗末にしてはいかん。かといって、臆病になってもいかん。ぎりぎりの線を見極めて生き残りつつ勇敢に戦えなければいけない。臆病な人間も生き残る術を知らない人間も、ナイトストーカーにとってはお荷物でしかない。お前は正規軍の特殊部隊でだいぶ修羅場をくぐってきたようだが、これからはもっと大変になるだろう。だが、その分手柄を立てる機会も多い。メックウォリアーへの登用の道すらある。原に、ここ3年で数人がメックウォリアーに登用されている。しっかりやってくれ。」
 「イエッサー!」
 クラークは、びしりと敬礼を一つすると服を受け取って部屋を出ていった。新たなナイトストーカー員が、ここに誕生したのである。