『ザムジード侵入』 作:Coo  戻る

 マコト・カグラ伍長はユニオン級降下船『ザムジード』の警備の為に人用のハッチの前に立っていた。

(・・・砲撃の音が近づいているが・・・・大丈夫か?・・・・・ん?)

神楽伍長がふと顔を横に向けるとこちらに向かってくるスキマーとジープの一団を見つけた。

 (はて、何か連絡事項でもあるんだろうか?・・・しかし、それにしては数が多いな・・・)

そいつ等の内、ジープが一台こちらに来た。他の奴らはベイの中に向かった。

 (一体なんだ?こいつ等は?)

ジープの助手席から指揮官らしき男が降りてきた。俺はそいつに話し掛けた。

「おい、どうしたんだ?何かあったのか?」
 「警備の補充だ・・・伍長・・・」

男はそう呟いた。よく見るとそいつの階級は少尉であった。

「はっ!これは失礼しました少尉殿!」

俺は慌てて敬礼した。少尉殿も答礼をした。

「どうと言う事は無い・・・・貴公は職務に忠実だっただけだ・・・」
 「はっ、・・・それで少尉殿達は何をしにここにいらしたのですか?」

この少尉からは物凄い気迫を感じた。

(この人に逆らったらダメだな・・・)

神楽伍長はそんなことを考えながら受け答えしていた。

「先程も答えたが警備の補充だ」
 「しかし自分はその様な連絡は受けておりませんが・・・・」
「それはそうだろう、我々もつい先程口頭でここの警備を言い渡されたのだからな・・・」
「はあ、そうでしたか・・・・」
 「貴公はこのまま警戒を続けてくれ・・・我々は艦長にこの事を伝えなければならない」
「はっ!了解いたしました」

そう言うと少尉達はザムジードの中に入っていった。


『ザムジード奪取』 作:Coo

「少尉、巧くいきましたね・・・」

 クラーク伍長が小声でロックウッド少尉に話し掛けた。

(こんなに巧くいくとは思わなかったな・・・こいつは楽勝かな?)

「ああ・・・・だが、油断は禁物だぞクラーク・・・」
 「大丈夫、解っていますよ・・・」

(そうだよな・・・ここで油断したら全てが水の泡だ・・・)

ロックウッド少尉達はブリッチを目指していた。

空調施設前通路

「定時連絡、空調施設前異常なし」
 ≪了解、そのまま警戒を続けられたし≫
「了解」

(まったく、いつまでこんな所に立ってればいいんだ・・・ん?)

「だれだ!」

通路から足音が聞こえ誰何した。

「おいおい、脅かさないでくれよ・・・」
 「誰だ、お前は?」
「警備の補充さ・・・」

通路から現れた男はそう答えた。
 装備や服装は同じだが・・・何か怪しい・・・

「警備の補充だと?そんな話は聞いて・・・・!」

聞いてないぞ・・・そう言おうとした瞬間、首筋に鋭い痛みが走った。
 慌てて振り返るがそこで急激な眠気が襲ってきた・・・最後に見た光景は銃を構えた男の姿だった・・・

「・・・お休み・・・まあ、悪く思わないでくれよ・・・これも仕事なんでね・・・」

トレス軍曹はそう呟いた。

「・・・よし、ここの確保は俺とキリーの2人で大丈夫だろう。
 ボイスとレニは周辺施設を制圧してくれ」
「「「了解」」」

三人の声を聞き、トレス軍曹はヘルメットに装着されたマイクを引き寄せた。

「こちらトレス班、空調施設制圧完了。
 引き続き周辺施設の制圧に移る」

融合炉管制室

「定時連絡、融合炉管制室異常なし・・・どうぞ?」
≪了解、現状を維持してください≫
 「了解した」

(・・・しかし、ここに侵入してくる奴らなんているんだろうか?・・・)

 管制室の警備を任されたタケシ・カツラギ軍曹はそんな事を考えていた。

(まあ、備えあれば憂いなしと言う言葉もあるしな・・・・ん?)

小さな物音、そして不意に後ろのドアが開く音がした。
 何かあったのだろうか?

「どうかしたの・・なっ!」

驚いた、振り返ってみればそこには味方が俺に銃を向けているではないか!

「な、何のつもりだ!」
 「両手を頭の上に乗せて床に伏せろ!早くしろ!」
「・・・わ、解ったから撃たないでくれ!」

俺は素直にその言葉に従う事にした。

TACHIBANA突撃銃はコンソールの上に無造作に置いてあるし、拳銃はホルスターの中・・・・
 どちらを取るにしても次の瞬間、蜂の巣にされるのは間違いない・・・・。

何より俺に降伏を決心させたのはやつらの足元に転がる元同僚がつくる血だまりだった・・・

「よし、そのまま大人しくしているんだ・・・ホーマー!ニコラス!そいつを拘束してここを確保しろ!」
 「了解!」 「イエッサー・・・」
「エディーは私と一緒に来い!四班と合流する!」
「了解しました」

そう言うとスタンリー軍曹はマイクを口元に引き寄せた。

「こちら三班、融合炉管制室制圧完了!
 これより四班と合流してメック・ベイを制圧する」

メック・ベイ

「おい、煙草を持ってないか?」

 振り返るとそこには先程艦内に入っていった一団の一人がいた。

「んっ、ああ持てるぞ」

カグラ伍長はそう言うと野戦服の胸ポケットから煙草の箱を取り出した。

「一本貰えないか?」
 「いいぜ」

彼は煙草を一本取り出してそいつに渡そうとした・・・が、次の瞬間・・・・

ドゴッ

鈍い音が響き神楽伍長がフェロコンクリートの上に倒れた。

「・・・お見事・・・良くやったベネット・・・」
 「いえ、どういたしまして・・・」
「それじゃあコイツをどこかに隠すとするか・・・」
 「・・・いっそのことぐるぐる巻きにしてロッカーの中にでもしまっておきますか?」
「・・・そうだな・・・そうするか・・・」

 「班長!中の連中を黙らすのに成功しました」
「よし!次のベイに行くぞ!他の班に遅れをとるんじゃないぞ!」
「「「了解!」」」

 ピーター軍曹がマイクを口に持って行った。

「こちらピーター!第一メック・ベイ制圧完了!
 これより第二メック・ベイの制圧に向かう!」


「少尉・・・二班より報告・・・・空調施設の制圧に成功したようです。
 引き続いて周辺施設の制圧に向かうとの事です」
「三班からです・・・・管制室を制圧、予定通り四班と合流するそうです」
「四班より報告、第一メック・ベイの制圧完了・・・続いて第二メック・ベイに向かうとの事です。
 ・・・・あとは我々だけですね・・・」

ウツホが話し掛けてきた。

「ああ・・・あとは俺達がブリッチを制圧すれば第一段階は終了だな・・・止まれっ・・・」

先行して通路を折れたところから鏡を使って奥を見ていたクラークから≪止まれ≫のハンドサインが見えた。
 足音を殺してクラークのそばまで来た。
鏡をのぞくとこちらに背を向けている歩哨が見えた。
 ・・・数は一人だった・・・

≪どうします?迂回しますか?≫
 ≪いや・・・始末する・・・クラークいけ・・・≫
≪了解≫

ロックウッド少尉とクラーク伍長はそうハンドサインで言葉を交わした。
 クラークは腰からスタンガンを取り出して息を殺し、足音を殺して歩哨に近づいて行った。

・・・・4m・・・・気づかれた様子は無い、ロックウッド少尉が念のために麻酔銃を構えている。
 ・・・・3m・・・・2m・・・・・1m、ここでクラークが相手に飛び掛った。
クラークは飛び掛ると同時に相手の口を押え首筋にスタンガンを押し付けえた。
 相手は不意を撃たれた為、抵抗もできずに気絶した。

≪排除完了≫

クラークはそうハンドサインを出した。
ロックウッド少尉達は何事も無かったように前進を始めた。
・・・ブリッチまであと4ブロックである。

ブリッチ

「戦況はどうなっておる?副長?」

ユニオン級降下船『ザムジード』艦長、ヨシヒロ・サカキ大尉は副官に尋ねた。

「はっ!・・・戦況は我が軍のほうが不利と言ったところですね・・・」

副長は残念そうに答えた。

「ふむ・・・やはり緒戦で地雷原と防御陣地の大半を無効化されたのが痛かったのう・・・」
 「はい、あのビグルとかいう奴がいなければこれほどまでの事は・・・・」
「たしかに、あやつは予測できんかったな・・・まさかあんな物が出て来るとはのお・・・」

サカキ大尉は目を瞑った。
 そこにオペレーターから報告が上がってきた。

「・・・サカキ大尉、民生メック第4小隊が弾薬補給と装甲板の張替えの為にこちらに向かうと司令部から通信がありました・・・いかがいたします?」
 「司令部の工房だけでは面倒が見れなくなったか・・・無理も無い、昨日まで続いた修理もここのベイを使ってやっとだったからのう・・・断る理由は無い。了解したと伝えよ」
「解りました」

そう言うとオペレーターは司令部に返信をはじめた。

「連邦もやりおるわい・・・・民生メックを戦列の中央においてなるべく正面にださんようにしておる・・・」

 サカキ大尉は進行して来る敵メック部隊を見てそう呟いた。

(・・・このままでは勝機は無いか・・・はて、どうしたものか・・・)