『制圧開始』 作:Coo 戻る

第二メック・ベイ

「ん?何の音だ?」

第二メック・ベイを警備していた歩哨が何か物の落ちる音が聞こえ、そちらに首を向けた。
 するとそこには手のひらサイズの円筒形の物体が落ちていた。

(はて?メックの部品かな?)

だが、彼の予想外れていた・・・その物体から激しい閃光と轟音が響いた。

(えっ?)

そして通路の方から走りこんでくる友軍の兵士・・・だがなぜか銃口をこちらに向けている。
 そして、マズル・フラッシュ・・・

(えっ?)

彼はなぜ自分が倒れているのか解らなかった。

 (脚の感覚が無くなっていく・・・・なんだてんだ?)

彼は自分が撃たれたと言う事に気づかなかった・・・・
 遠くで同僚の声が聞こえる・・・どうやら敵襲らしい・・・・
彼はそこで息絶えた・・・

ピーター軍曹達は第二メック・ベイに閃光手榴弾を中に放り込むと突入し閃光と轟音で呆然としている敵兵に4.56mm無薬莢弾を浴びせ掛けた。
 歩哨の内、丁度陰に隠れていた兵士が同じTACHIBANA突撃銃をフルオートで撃ち帰してくるが命中しない。
お返しとばかりにマイク伍長がバースト・モードで3発撃ち返した。

「ぐはぁ!」

悲鳴が聞こえそいつは倒れた。
助整兵が何人か逃げたが、今はやることがある。

「よし、ハッチを閉めるんだ!それが終わったら次に行くぞ!」

ブリッチ

監視カメラを見ていたオペレーターが大声を上げた。

「大尉!我が軍の野戦服を着た敵が本船に侵入しました!」
 「なんじゃと!」

サカキ大尉は驚いた。
 まさかこの船に敵が侵入するとは思っても見なかったからだ。

「すぐに警報を鳴らすんじゃ!それから司令部に連絡して増援を・・・」
 「ダメです!ジャミングがひどくて通信不能です!」
「くそっ!」

サカキ大尉はマイクを引き寄せた。

「本船に敵が侵入した!敵は我々の野戦服を着ているらしい注意せよ!」

そして警報が鳴り響く。

「大尉!第一、第二メック・ベイ及び融合炉管制室と空調設備からの連絡が途絶えました!」
 「B−1通路からD−4通路までの連絡がありません!」
「第三メック・ベイに敵が侵・・・待ってください!第四メック・ベイにも敵が侵入しました!
 現在、警備隊と交戦中です!」
「い、いったいどれだけの敵が侵入したというのだ・・・」

サカキ大尉は呆然としていた。

ブリッチの2ブロック手前

「気づかれましたね・・・少尉」
 「ああ、予想できた事態だ・・・・問題ない」

ロックウッド少尉がTCHIBANA突撃銃に高速振動銃剣を取り付けながら答えた。
 元々、この銃に取り付けるためのオプションだったのかすんなりと装着していた。

(・・・俺もほしいな・・・高速振動銃剣・・・)

「目的地までは?」
 「あと2ブロックです」
「では、急ぐとしよう」

そう言うと彼らは黒い疾風に変わった。

ブリッチ

次々と報告が上がって来る。
情報を総合すると敵はそれほど多くは無いらしい。

「・・・まさに我が軍のDESTの様だな・・・」
 「ええ・・・・」

サカキ大尉と副官は呆然としながらも指示をだしていた。
だが突然ブリッチの外で激しい銃撃音が聞こえてきた。

「ま、まさかもうここまで・・・」

ブリッチ外

「やっぱブリッチの守りは固いですね〜」

クラークが相手を牽制しながら軽口を叩いているが表情は真剣そのものであった。

「全員、閃光手榴弾はいくつある?」
 「こいつで最後です」

ウツホ軍曹が戦術ベストのポーチから手榴弾を取りだした。

「そいつを放り込んだら突入する」
「了解」

ウツホが安全ピンを抜いて閃光手榴弾を放り込んだ。
 敵は慌てて遮蔽物の陰に隠れようとしたがその前に爆発した為、モロにその閃光を見てしまった。
爆発と同時にロックウッド少尉が角から飛び出した。
 それはまさに黒い疾風だった。
近づいてくる敵に気づき銃を撃つが、ろくに狙いをつけていない為命中しない。
そして・・・

ザシュッ!

高速振動銃剣が放つ嫌な音を聞きつつ彼は喉もとを切られ絶命した。

「バ、バケモノか!」

隣にいた別の兵士が銃を向けようとしたがそれより一瞬早くロックウッド少尉が動いた。
 一動作で敵に近づくと相手の胸に高速振動銃剣を突立てた。

ブシュウゥゥゥウ!

ロックウッド少尉は返り血を浴びる・・・
 その姿はまさに地獄からの使者であった。

「くッ!」
 「よくもっ!」

残った二人が銃を向けた・・・が、その銃口から弾が飛び出す事は無かった。
 角に陣取っていたクラークとウツホ軍曹の銃撃を頭部に受け絶命した為である。
敵を殲滅するとロックウッド少尉はブリッチに足を向けた。

外の銃撃音が止んだ・・・・が、誰も動けないでいた。
サカキ大尉が外の様子を見ようと動いた瞬間、ドアが開き血まみれの男が中に入ってきた。
 それに続き四人の男達が銃を構えながら入ってきた。

サカキ大尉はこの瞬間、敗北を悟った・・・

そして血まみれの男が口を開いた。

「全員動くな・・・ここは我々が占拠した・・・・降伏せよ」
 「解った・・・降伏しよう・・・」

サカキ大尉はそう言うと力無くイスに座った。

こうしてブリッチは制圧された。

『残存兵力排除』 作:Coo

「・・・どんなかんじだ?」

扉を少し開けて鏡で中を覗いているマイクに話し掛けた。
 各所で抵抗を続けていたドラコ兵がブリッチからの指示が無くなった為に組織的な抵抗が出来なくなり、この気圏戦闘機格納庫に追い詰められたのである。

「・・・・こっちの4倍ぐらいですかね・・・・ただし整備兵の数を入れてですが・・・」
 「やれやれ・・・これだからドラコ兵は・・・・それにしても良くそれだけの数がいたもんだな・・・」

ピーター軍曹が溜息をついた。

「どうします?」

増援として送られてきたクラーク伍長が尋ねてきた。
 ちなみにロックウッド少尉は他の制圧に向かっている。
ブリッチにはウツホ軍曹とシグル伍長、アドルファ伍長が待機しサカキ大尉達を見張っている。

「・・・そうだな・・・クラーク、お前ならどうする?」

(・・・しっかりと教育しとかないとな・・・)

「えっ、・・・降伏勧告が無駄なんですから・・・・突入するしかないのでは?」
 「ふむ・・・まあそうだな・・・悔やまれるのは閃光手榴弾を使い切った事だな・・・・・よし、20秒後に突入するぞ!」
「「「「了解!」」」」

気圏戦闘機格納庫(内)

(・・・くそっ!どうしてこんな事に・・・・)

立て篭もっている中で一番階級の高いトシミツ・クボタ軍曹は焦っていた。
 ブリッチの報を聞き奪回に向かったのはいいものの敵と遭遇、ここに追い詰められてしまったのである。
現在は整備兵達と他の所を警備していた連中と合流してここに追い詰められてしまったのである。

「・・・軍曹!ど、どうすればいいのですか!このままでは・・・・」
 「落ち着け!ここを抜け出しさえすればまだ勝機は・・・・!!」

若い兵士を落ち着かせようとして振り返ったが急にドアの開く音が聞こえ見てみると、奴等が中に侵入してきたところだった。

 (・・・・人数はたったの五人・・・装備も我々と同じ・・・いけるぞ!)

彼は勝てると確信した。

「撃ちまくれ!数はこっちの方が上だ!」

(20対5だぞ・・・負けるわけは無い!)

彼はそう言うと自らも銃撃に加わった。

ナイトストーカーサイド

「くっ!コイツはすごいな・・・やはり閃光手榴弾は必要だな・・・」

ピーター軍曹はコンテナの陰に隠れながらそう愚痴った。
コンテナに立て続けに弾が命中する音が響く。
 火器の比率が4対1では愚痴りたくもなる。
ここに閃光手榴弾があれば敵の大半を無力化できる。

「・・・・ピーター軍曹・・・・」

クラーク伍長が小声で話し掛けてきた。

「なんだ?」
 「自分が囮になります・・・・軍曹たちはその間に敵を・・・」
「何?・・・本気か?」
「ええ、本気です」

クラークは真剣な表情でいった。

「・・・クラーク、死ぬ気じゃないだろうな?」
「まさか、死ぬ気なんて毛頭ありませんよ・・・それに俺には・・・」

見るとクラークは左手を力強く握っていた。

「・・・よし、いいだろ・・・だがなクラーク、決して死ぬんじゃないぞ」
「はい!」
 「・・・・10秒でいくぞ」

ピーター軍曹はハンドサインで≪クラークの突入を援護する≫と指示を出した。

ドラコ兵サイド

奴等は突入するとコンテナやドラム缶の後ろを通るなどの回避移動をおこなう為になかなか命中させられないでいる。
 反対にこちら側が消耗している。
すでに4人がやられている。

(大丈夫だ・・・落ち着け・・・我々の方がまだ有利だぞ・・・)

するとコンテナの陰に隠れていた一人がいきなりTACHIBANA突撃銃を撃ちながら走り出てきた。

「奴だ!アイツを狙うんだ!」

クボタ軍曹はコンテナの陰から出てきた敵を狙うように指示を出した。
整備兵達もおぼつかない手つきで銃を撃った。
・・・だが、彼がもし冷静だったらコンテナの陰に隠れた他の敵を牽制するように指示を出していただろう・・・彼はすでに冷静な判断が出来なくなってきていた・・・

クラークはコンテナの陰から出ると敵の陣取っているコンテナに向かった。
 コンテナに隠れた敵が撃ってくるが障害物を利用しながら近づいてくる為に命中しない。
クラークは冷静に狙いを定めるとセミ・オートで2発、相手の胴体に撃ちこんだ。
 そいつは仰け反るようにして倒れた。
隣にいたドラコ兵が慌てて狙いをつけようとしたが、ピーター軍曹が放った4.56mm無薬莢弾を受けて倒れた。
そして次々とドラコ兵が撃ち抜かれていく・・・
彼らも黙ってやられているわけではない・・・・が、彼らは運が無かった・・・これが一般部隊であれば勝てたかもしれない・・・・・だが、相手が悪かった歴戦のナイトストーカーが相手なのだから・・・・


クボタ軍曹は悪夢を見ているようだった。

 「馬鹿な・・・! 使っている銃は同じタチバナ突撃銃で、4倍の人数がいたってのに? こんな・・・こんな圧倒的にやられるなんて!? 奴等化け物か!?」

クボタ軍曹は知らない内に絶叫していた。

「ぐわっ!」

軍曹の隣にいた若い兵士が倒れた。
慌てて銃撃された方を見るとそこには先程コンテナの陰から出てきた奴がこちらに銃を向けようとしていた。

「くっ!」

軍曹はそいつに銃を向けた・・・だが、その銃口から弾が飛び出す事は無かった。
 なぜなら軍曹が引き金を引くより早くクラークの放った銃弾が彼の胸に飛び込んだためだ・・・

「・・・・こちらピーター、気圏戦闘機格納庫制圧完了・・・どうぞ?」
 「ロックウッドだ・・・制圧完了を確認した」
「そちらの方はどうなりましたか?」
 「制圧は終了している」
「そうですか・・・」
「ピーター達はしばらく哨戒してくれ・・・クラークはブリッチに戻せ」
「了解」

戦闘が終了し辺りを見回して見るとクラークがコンテナに寄りかかっているのが見えた。

「クラーク、どこか怪我でもしたのか?」
 「いえ、跳弾がかすった位で怪我はしていません・・・・ただ・・・」
「ただ?」
「今ごろになって震えが来ましてね・・・」

見るとクラークの手が微かに震えていた。

「・・・震えるのは緊張のエネルギーの放出であって、少しも異常じゃないさ・・・肉体が緊張を解いて平常に戻るには手間取るんだ。ただ、訓練によってそれは容易になる・・・あとは美味い酒だな・・・」
 「そうですか・・・」

「それよりクラーク、聞きたい事があるんだが・・・いいか?」
 「はい?なんですか?」
「お前、突入する前に何か言いそうだったよな?」
 「ああ、アレですか・・・アレはですね」

クラークが苦笑しながら答える。

「俺には年の離れた妹・・・ティアてのがいましてね・・・親父も母さんも兄貴も死んじまったんで・・・残っている肉親が俺と嫁いで行った姉貴しか残って無いんですよ・・・」
 「・・・そうか・・・すまんなクラーク・・・」
「いえ・・・・そんなもんでアイツを一人残して死ぬわけにはいきませんから・・・」

クラークはそう言うと上を見上げた。

「・・・近い内にこっち呼ぼうかなて考えているんですよ。
  ・・・・アイツはメックも動かせるし看護兵としての訓練も受けてるからここに来てもやって行けるんじゃないかと思いましてね・・・」
 「そうか、そいつは楽しみだな」

ピーター軍曹は笑って肩を叩いた。
 そして皆がいるところに行った。

「よ〜し、俺達は哨戒を、クラークはブリッチに戻れ!」
「「「「了解!」」」」

彼らはそう言うと格納庫の中から出て行った・・・・20人の遺体を残して・・・

『第二段階』 作:Coo

「少尉、火器管制装置の立ち上げに成功しました」

捕虜を食堂に押し込んだ後、ブリッチでコンソールと格闘していたシグルが答えた。

「そうか・・・やれそうか?」
 「はい、オルトロスと同じシステムだったのでスムーズにいけました・・・いつでもいけます」

シグルが力強く答えた。

「少尉!こちらに向かってくるメックを確認しました!」

気圏戦闘機格納庫から帰還し、レーダー・スコープを覗いていたクラークが声を上げた。

「機種は?」
「・・・確認しました。全て民生メックです・・・ザコBが2機、ムドーが1機です」
 「・・・気づかれたのか?」
「いえ、どうやら補給を受ける為にこちらに向かっているようです」
「・・・よし、有効射程に入ったら仕掛けるぞ・・・シグル、クラーク準備しろ」
 「「了解!」」


「・・・弾切れとはな・・・情けない・・・」

補給を受ける為にザムジードに向かっているヒュウガ少尉はそう呟いた。

「こんなところで油を売っている暇は無いと言うのに・・・」

彼の駆るムドーは弾が10射分と少なかった。
 彼の部下が駆るザクBも装弾数が多い方ではなかった。

「少尉、落ち着いてくださいよ。
 補給が済めばまた前線ですよ」
「そうですよ隊長・・・まだ戦いは続くんですから・・・」

同僚のフジタ伍長とヒロキ軍曹が声を掛けてきた。

「・・・ああ、解っているよ」

彼は視線を前に戻し、ザムジードを見ていた。

「・・・距離・・・450メートル・・・もうすぐ先頭のムドー、続いてザコBが粒子砲と長距離ミサイル、速射砲の中距離射程に入ります」

 クラークが告げた。

「よし・・・やれ」

シグル伍長とクラーク伍長はロックウッド少尉の言葉を聞き、向かってくるメック部隊に射撃を開始した。


「・・何だと!」

補給を受けるべく向かっていたザムジードからいきなり砲撃が開始されたのである。
 慌てて回避運動に移るが間に合わず、粒子砲と長距離ミサイルの約半数をもろに食らってしまった。
元々、先の戦闘で傷ついていた胴体中央に粒子砲の直撃を受けてジャイロが完全にいかれた様で姿勢制御ができず転倒してしまった。

倒れながらフジタ伍長とヒロキ軍曹の方を確認するとフジタ伍長のザコBは頭部に大口径レーザーを食らい、崩れ落ちるところだった・・・あれでは助かりはしまい。
ヒロキ軍曹のほうは残っていた弾薬に誤爆したのだろうか?派手に爆発した。

・・・・いったい何が起こったんだ?
ヒュウガ少尉の意識はそこで途絶えた・・・


「やりました!敵のメックを撃破しました!」

 どうやら自分が管制していた射撃でメックを倒す事が出来たのが嬉しいらしくクラークが歓声を上げていた。

「まあ、正確には1機行動不能、2機撃破てところですね」

シグルが補足した。

「クラーク・・・いつまでも浮かれてないで次の目標に照準しろ」
 「了解!」

ロックウッド少尉がそう言うとクラークは次の目標に照準しはじめた。

そうまだ戦いが終わった訳ではないのだ・・・・

「こいつの武装で届く施設は片っ端から破壊しろ!遠慮はいらない!」
「「「了解」」」

・・・・彼らの戦いはまだ始まったばかりなのである・・・