(このお話は時期的に9月終盤〜10月半ばのことではと思われます)
「少尉任官?」
棒でも飲んだ様な顔でRRはクロフォード中佐に言った
「そうだ。時期的、功績にも問題無いだろう。安心しろ、尉官教育は最小限度に負けてやる。」
にやにやしながらクロフォード中佐は言った
「いや・・ですね。たしかに自分は下士官として今まで班を指揮してまいりました。偵察小隊の指揮を代行したこともあります。しかし、指揮官にはカサンドラ少尉がすでに赴任している以上、」
RRの言葉をさえぎり沈んだ様な顔でクロフォード中佐が言う
「うむ・・それなんだが偵察小隊長のギリアム少尉が正式に訓練部門指揮官補佐になった。」
珍しくRRが驚いた表情をする。
「ギリアム少尉がでありますか・・・」
「そうだ、後任にはカサンドラ少尉が当たる。君はカサンドラ少尉の後任兼復帰までのつなぎだ。」
「そう言う事ならば・・・しかたありませんね。」
ギリアム少尉はもともと参謀タイプだ、シャドウストーカー時代からの知り合いのRRは思った
偵察小隊の指揮官よりも後方でサポート任務に当たる方が本人のためにも良いのかもしれない・・・なにより、怪我の後遺症がひどそうなのだ。「それでだ」
黙り込んだRRにクロフォード中佐が再びにやにやした顔で告げる
「君の部屋割りだ。一人部屋だぞ。喜びたまえ。」
「は?・・・はぁ?!」
一瞬沈黙した後にRRが質問する。
「士官用の宿舎は満杯だったはずでは?!」
「建築資材がだいぶ手に入ったのでな。急ピッチで壊れていた宿舎を修理した。そちらに一部の士官が移動をはじめている。だから、一人部屋を与えられる。」
RRはこのとき、なぜかいやな予感を覚え、抵抗した。
「しかし部下とのスキンシップと言う物が有ります。今までの雑魚寝状態はですね。」
「隣の第三整備分隊が臭いから掃除してくれと泣きを入れてきたぞ。」
そういえば一ヶ月近く掃除していない・・・と言うよりも部屋ではなくみんな割り当てられたオフィスで寝ている気がする。
「それに君は分隊指揮官となるからして班ごとに寝る今の状態では合わないだろう?」
反論のネタが尽きてRRが困った顔をする。
「大体困るものでもないだろう・・・」
「いや・・そのですね・・・・部屋汚れますよ。装備類は手元に置いて手入れしたいですから、泥だらけのものを持ち込むことになりますし、」
「わかった。特別に大きなクローゼットつきの部屋にしてやろう。」
さらりと中佐は言うと書類に印を付ける。
「じゃあこれを経理部に持っていくように。鍵をくれる。話は以上だ」
これ以上の反論は無駄だと悟ったRRは部屋を出て行こうとした
「失礼しました!」・・・少尉ってあんまり偉そうじゃないよな・・・そう言えば給料は? 分隊指揮官だから結構つくな・・・新しい銃でも買おうか・・・買えるな・・・
ぶつぶつ言いながらRRは経理部に行き新しい宿舎へと向った
「誰もいないな・・・一応メック戦士の下士官も入るのか・・・?」
誰もいない宿舎に入り適当に部屋に荷物を入れるとさっさとRRは寝床を作り寝た。
なぜかベッドなどの調度がなく、支給された毛布を敷いた上に寝袋という寝床である。しかし、豪華な仕官部屋などというものに縁のないRRはあまり疑問にも思わないで、横になった。
「朝か・・・飯は・・・食堂まで行くのが面倒だな。適当に何か食うか。」
RRはレーションを温め部屋を出ていった。
ごみはそのままに。一週間後
「今晩はぁ」
カサンドラ少尉が訓練計画の打ち合わせにかこつけてRRの部屋を訪れた。リハビリを兼ねて、こう言った仕事をはじめているのである。
「あら何にも無いんですね・・・」
部屋の入り口で意外そうに辺りを見まわす。
「はあ・・・少尉。どうぞ奥に来て下さい、確かテーブルがどこかに・・・」
「もう・・・少尉はやめてくださいよ、同じ階級なんですから・・・?・・・(カサカサ)」
途中で止まったカサンドラを怪しんだRRがカサンドラの視線を追う。そこには・・・なにやら、黒光りするあやしげな昆虫が一匹、いたのである。
「ゴキブリぃ!!!!」30分後。
「解りましたね! 掃除ちゃんとするんですよ!!」
RRはゴキブリ退治をさせられ(3匹撃墜、2匹撃破)ついでに暴れるカサンドラにしこたま殴られたのちに延々と説教を食らっていた。
「いやですけど自分は忙しくてですね・・・」
「・・・なら人を雇うのはどうですか?」
「雇う?・・・」
「いまのロバートさんお金あるでしょ。給料だって上がってるんですから人一人くらい雇えるでしょう。」
「えっと・・・指揮官の分、少尉の給料・・・雇えますね。」
「それにこの部屋クローゼットが広いんですから人一人増えても大丈夫です!」
RRは、住み込みなのか? と突っ込みたかったが、カサンドラ少尉の勢いに飲まれて反論できなかった。
「じゃ広告出しておきますからね!」
かくして・・・カサンドラ少尉は、肝心の打ち合わせをすっかり忘れて帰っていってしまったのであった。