(これは、10月半ば以降の時期であると思われます)
ここ最近の日課である幹部教育を終え、RRがオフィスに帰ってくると何通かの封書がデスク上に置いてあった。
「ひのふのみっと・・・5通か。内容はっと」
弾帯に付けたナイフを取り出し、手早く開封する。
「DM、DM、履歴書、履歴書、履歴書・・・?」
RRにDMならばともかく、履歴書を送られるような覚えは全くなかった。
「何でこんな物が?」
そこまで考えてふと思い出す。回想
「・・・なら人を雇うのはどうですか?」
「雇う?・・・」
「いまのロバートさんお金あるでしょ。給料だって上がってるんですから人一人くらい雇えるでしょう」
「えっと・・・指揮官の分、少尉の給料・・・雇えますね」
「それにこの部屋クローゼットが広いんですから人一人増えても大丈夫です!」
RRは、住み込みなのか? と突っ込みたかったが、カサンドラ少尉の勢いに飲まれて反論できなかった。
「じゃ広告出しておきますからね!」回想終了
「そういえば少尉が広告出すって言ってたな、本気だったのか。」
確かに少尉の俸給をもらってみて判ったのだが、役職手当を含めると十二分に1人くらいで有れば雇うことが出来る金額だった。
しかし俸給をもらったその日に可愛い部下に昇進祝いと言う名の元、隊内のクラブで宴会をしてしまい、1/3近くはすでに使ってしまっていた。
その為今現在の所持金を考えると、曹長の時とほとんど変わらない程度しか残ってはいなかった。もっとも次の俸給まで生活が苦しいと言うことは無いのだが。
「さて、どうするか」
取りあえず時間もあるので履歴書を一通ずつ読み始める。
・・・・10分後
「・・・何故に3人とも女性・・・」
履歴書を見て判ったのだが、3人とも女性である。
RR個人の希望としては、住み込みである以上、余り気を遣う必要のない男性の方が良かったのだが。
「少尉に聞いてみるか」
無意識のうちに、こめかみをもみほぐすように手を動かしつつ立ち上がる。
オフィスの壁面ボードを見ると、体力錬成と記載してあった、恐らく駆け足かプールで泳いででもいるのだろう。
「帰ってくるのは?・・・なんだもうじきか」
ボードの時間と時計を見比べると、後20分もしないうちに帰ってきそうであった。
しょうがないのでしばらく待つことにし、再度履歴書を見直すRR。
一人目名前:エミリア・ランフォード
年齢:24歳
身長:175cm
外見:肩にやや掛かる程度の豪奢な金髪。
ほっそりとした顔立ちに縁なし眼鏡。
写真では正面を射抜くような視線で、ややきついの印象を受ける。
学歴:大学卒業
前職:ヘスティアに有った商社に勤めていたが、ドラコ軍の侵攻による影響で業績が悪化。
経営再建のため首切りを大量に行い、その対象になった。
家事手伝いとしての経験は無し。二人目
名前:フィリカ・スティード
年齢:18歳
身長:167cm
外見:赤毛で長めのポニーテールが目立ち活発な印象を受ける。
目鼻立ちがくっきりとしており、スポーツ用眼鏡がよく似合う。
写真では、緊張を全くしておらず、にこりと笑っている。
学歴:高校卒業
前職:無し。
高校卒業後、実家の家事手伝い及び近くの商店でのアルバイトのみ経験有り。3人目
名前:キーシャ・エヴァグレイス
年齢:15歳
身長:160cm
外見:ふわふわした感じの髪(ボブカット)と、大きめの丸眼鏡が印象的な少女
きれいと言うより可愛らしいという形容がふさわしい。
写真ではがちがちに緊張しているらしく、顔がこわばっている。
学歴:中学卒業
前職:無し。
中学卒業後、進学する余裕が実家になく、アルバイトをしていたが、首になったため
募集広告に応募した。15分後
「あ〜疲れた」
カサンドラ少尉がそんなことを言いながらオフィスに帰ってくる。
どうやらシャワーでもあびて来たらしく、長い髪がまだ濡れていつもよりボリュームが落ちている。
「少尉、一体どういう広告を出したんですか?」
いつもの彼女に対する態度より、3割程度きつい声と態度で聞くRR。
「え?、どの広告ですか?」
「自分の所の使用人の広告です!」
のほほんと聞き返すカサンドラ少尉に、つい声が大きくなるRR。
「怒らないでも良いじゃないですか、え〜とちょっと待ってください」
そういって自分のデスクの引き出しを探し出すカサンドラ。
「はい、この通りです」
引き出しから出されたメモには次のように書いてあった。募 集:家事手伝い
人 数:1名
住 所:○○○○
給 料:月払い(ごく一般的な金額)
住 居:住み込み
送付先:傭兵部隊ブラッドハウンド、ロックウッド少尉まで
備 考:女性希望、衣服支給「・・・・何ですか・・・この備考欄は・・・・!?」
たっぷり1分は固まった後で、絞り出すように声を出すRR。
「何でって、男所帯はああなるんだって思ったから、女の人の方が良いかなって・・・・ダメでした?」
怒られるとは思わなかったのか、小さくなりながら答えるカサンドラ。
「当然でしょう!、男性ならまだしも、自分はまだ女性と住む気はありません!」
「でも・・・」
「でも、も、かも、もありません!」
「それに何ですか、この衣装支給というのは!?」
「ああ、マルガレーテさんに話したら、彼女が用意してくれるって言うから・・・」
「あなたは〜!」二人の話しはRRの声が大きくなるに従い、部屋の外にも聞こえ始めていた。
怒鳴り声を聞きつけ、部屋の外で聞き耳を立てる者もいたが、いつも通りの二人の口喧嘩で有ることに気付くと皆去っていく。
「何だ、またあの二人の口喧嘩か。良く飽きないもんだ。」
と思いながら・・・。