『勝負!』 作:Coo 戻る トップへ
前哨基地爆撃作戦が終了して何日か経ったあとクラーク伍長が一人で悩んでいた。
その理由は親父から『好きな女性が出来たらこいつを一緒に飲め』と言われてもらったワインをエカテリーナ曹長との食事(予算の関係でクラークが作る)に持っていくかどうかである。
「・・・どうしよう?・・・持っていくべきか?・・・親父のことだからなあ〜何か仕掛けがあるんじゃ・・・」
かなり疑っている。そこまで信用が無いのか! という親父の声が聞こえてきそうである。しかし、相手はなにしろ故人だ。「・・・よし、持っていこう・・・・たまには信用してやんないとな。」
そう言うとクラークはワインと材料をいれた袋をもってエカテリーナ曹長の部屋を目指した。
十分後、クラーク伍長はエカテリーナ曹長の部屋に来ていた。
部屋はロックウッド少尉の部屋の上にある士官用の部屋である。
「はあぁぁ・・・すごいですね・・・」
「はい?何がですか?」
エカテリーナ曹長は唖然としながらクラーク伍長を見ている。
クラークはエカテリーナ曹長の方に首を向けながらフライパン片手にハンバーグを作っている。
・・・ハンバーグを作るのはいいが、野戦服の上にエプロンというかなり違和感がある服装である。
「あ、いえ料理が上手だな〜と・・・」
「あはは、これはですね必要に迫られてですよ」
「必要に迫られて?」
「ええ、うちの生活無能者の姉とずぼらな妹とのせいでして・・・
私が作んないと誰も作らないんですよ!どう思いますか曹長!」
なにか力説しているクラークである。
「そ、それは大変でしたね・・・」
「・・・まあ、それのおかげで美味いメシが作れるんですけどね・・・」
そういうと首を元に戻して料理を再開した。
内容はハンバーグに野菜の炒め物、コーンスープにマカロニサラダとチキンライスという組み合わせである。
それにデザートであろうアップル・パイなんかも作っている。
「はい、出来ましたよ」
「・・・ホントにすごいですね・・・」
その言葉を聞くとクラークは顔を真っ赤にしながら頭を掻いていた。
「そ、それじゃあ食べましょうか?」
「ええ、それじゃあ・・・」
「「いただきます」」
「あ、おいしい・・・」
「そう言って頂けると嬉しいです」
会話は世間話や故郷の話などで盛り上がっていた。
お互いにいろいろなことがあったんだなと思いながら時間が過ぎていく。
「・・・あの、曹長?」
「はい?」
アップル・パイを切り分けているとクラーク伍長が急に話し掛けてきた。なんだろう?
「あ、あの、その・・・こ、これ受け取ってください!」
そう言って彼は小さな小箱を私に差し出した。
・・・もしかして・・・
「・・・これは」
箱を受け取って中を開けてみるとそこには銀の指輪があった。
「そ、その、なんというか・・・つ、付き合ってください!」
「・・・はい(ぽっ)」
顔を真っ赤にし今にも湯気が出そうな男性。
頬をピンク色に染めながら小声で了承する女性。
ここに一組のカップルが誕生した。
・・・しかし、ここで終われば良かったのかもしれない・・・いずればれるにしても多少、日はあっただろうに・・・
「あ、あのこれ、飲みませんか?」
「えっ?これは?」
ワインのボトルを持ったクラークがいう。
「親父が『好きな女性が出来たら一緒に飲め』ってくれた物なんですけど・・・どうです?」
「・・・ええ、いただきましょう」
コルクを抜きグラスに注ぐ。
「それじゃあ・・・」
「ええ・・・」
「「乾杯!」」
その30分後
(あれ、俺ってこんなに酒に弱かったけ?・・・あれれ?なんでエカが上着を脱いでるんだ?)
(おかしいですね?私そんなに弱くないと思ったんですが・・・あれ?なんでクラークの顔がこんな近くに?)
この直後、彼らは頭が真っ白になった。
翌朝・・・二つの悲鳴部屋に響いた。防音が完璧で無かったら周辺に多大な被害を出していただろう。
「な、なんで・・・」
「(ぽっ)」
横を向きながらも頬をピンクに染めてまんざらでもない様子の女性。
トホホという情けない顔をした男性。
ベッドの数が足りなかったのだろうか?二人は同じベッドに寝ていたようだ・・・
しかし、そこで何があったのかは2人だけの秘密である。
クラークに生活無能者と呼ばれた姉がいたらこう言っただろう・・・
『ふっ・・・・無様ね・・・』
後日、クラーク伍長がフェイム少尉待遇軍医にワインの解析を依頼した所、微量ではあるが強力な媚薬が検出されたとのことである・・・
(・・・親父・・・恨むぞ・・・)
クラークとエカテリーナの関係だが・・・翌日にはばれた。
理由はエカテリーナが嬉しそうにはめていた銀の指輪とやけにげっそりしたクラークを見たというのもあるが・・・もう一つ理由がある。
それは、エカテリーナ曹長の部屋の下にいたロックウッド少尉の部屋の住み込みのメイドさんの証言である。
証言壱:夜中にギシギシと天井がゆれていた。
証言弐:その数時間前にクラーク伍長が入っていくのが見えた。
証言参:朝、あわてて帰っていくクラーク伍長とそれを見送るエカテリーナ曹長を見た。
また、そのとき彼女が指輪をはめていた。
・・・この事を聞いた一部の整備兵や助整兵はクラーク伍長にたいしてかなりの敵愾心を持ったらしい。
また、エカテリーナ士官待遇曹長の容貌からクラーク伍長に今ある二つ名『ガンマニア』にプラスして『ロリ』という二つ名が追加された。