『ある整備兵のたくらみ』 作:おじ 改訂:ミッキー


 俺の名前はロック・ファウンド。整備兵中隊に所属する平凡な軍曹だ。特に目立つことのない下士官で、今日もシェリル大尉に怒鳴られながら油にまみれて働いている。
 そんな俺だが、このごろ腹に据えかねていることがある。周りから年頃でフリーの女性が急速に減っているんだ。しかも、毎日毎日やれデートだ一緒に食事だ休日の予定がああだ、夫婦用の部屋に移る準備だという話が引きもきらない。こうもあてつけられてちゃいくら温厚なおれでも面白くないってもんだ。 そこで、独身整備兵仲間から絶大な信頼を得ているおれは、ある集会を開く事にした。

 ここは俺とラモント・ホルシュタイン軍曹の部屋だ。
 (下士官は二人部屋に入れる)
 ラモントは俺の心意気に快く賛同してくれて、今日は夜勤でメックの整備をしてくれている。本当の理由を一切いわなかったのになにも聞かずに夜勤を引き受けてくれた。実にいい奴だ。・・・・・・俺は、厳重に鍵を掛けられたラモントの物入れの中に思いをはせた。そこそこいい酒がひと瓶丸ごと入ってっているのだ。おれは、惜しそうな顔を引き締めた。これからクラークに恨みを持つ漢達が集まり、怨敵クラークに人誅を加えるべく会議を行うのである。酒の一瓶くらい・・・
 俺は、集まった助整兵達に本題を切り出した。
「これから第一回、クラーク殲滅会議を行う。」
 助整兵達は、皆、決意の表情でうなずいた。
 さて、一番の問題点といえば・・・
「とは言えどんな方法がある? ヤツはあれでもナイトストーカーだぞ、正面からぶつかっても勝ち目は無いだろう。」
「そう、その通りだ。これが、一番の問題だ。俺達整備兵は、戦闘訓練をほとんど受けていない。なまじなことでは返り討ちに遭うだけだ。」
 俺の相づちに、みな顔をしかめる。
「そうですね、ロック軍曹・・・かといって、ナイトストーカーは罠の発見の訓練も受けていますから、靴に画鋲を入れるようなせこい嫌がらせも効くはずありませんし。」
「ヤツのスキマーに細工をしてはどうでしょう?」
「バカ野郎! 整備兵の誇りにかけて、そんな事が出来る訳ねーだろ!!」
「まあ、そうだな、それが原因で作戦が失敗しようモノなら、部隊を危険にさらす事にもなりかねない・・・整備兵の誇りがあるなら、やっちゃいけない事だ・・・時折、誘惑にかられる事は否定できんが。」
 俺のだれにともないつぶやきに、皆が首肯する。だがそれは、うてる手だてがかなり小さくなることを意味する。
「ロック軍曹・・・じゃあ、どんな方法が有るって言うんです!」
 若い奴が、たまりかねたように訴える。おれは、それには答えずに、胸のうちでつぶやいた。
 だから、皆が悩んでるんだろう・・・若造め少しは自分で考えろ。
 肉体的にはかなわない・・・整備不良による事故なんてのは願い下げ・・・だが・・・ヤツだけはゆるせん!!

「肉体をいたぶるのが無理なら、精神をいたぶれば良い」

俺の発言に皆が注目する。
 「ふっふっふっ、見てろよクラーク! 目にモノ見せてくれる!! はっはっはっ、ふわーっはっはっはっ!!」