『射撃場での平凡な一日』 作:Coo 戻る
※このお話は爆撃シリーズのしばらく後のお話と思われます。
タン タン タン!
射撃場にAK74の発射音が響く。
今日はクラークがエカテリーナの射撃の訓練に付き合う日である。「ふ〜、どうクラーク? 私の腕は?」
クラークはイヤ・プロテクターを外しながら標的になった紙を見ながら答えた。
「う〜ん、まあ前よりはましになったかな? ちゃんと標的には当たってるし・・・50点かな?」
「む〜・・・でも前よりはいいか♪」エカテリーナは頬を膨らませていたが、前よりはいいという言葉に態度を一変させた。
「単射だしね・・・じゃあ次は俺だね。」
クラークはそういうと標的を配置につかした。
今回のクラークの獲物はいつものG30突撃銃ではなく、AKS74UというAK74のショート・バレルタイプでロシアの特殊部隊が使用していたものであり消音器も取り付けられる。
なお、この銃はクラークの所持品ではなくエカテリーナから貰ったものである(単独行動時に携行)。
タタタタタタン!
フルオート射撃で発射された弾は、標的のほぼ中央に命中している。
「すご〜い、上手だね。」
「まあ、本職だしね・・・ん?」
標的を手に取って見ていると、すぐ横の台にイヤ・プロテクターをつけたカーティス准尉とラヴィ伍長の姿が見えた。
なんとなくからかってみたくなったので声を掛けた。
「よう、お二人さんどうしたんだい?」
「ん? おおクラークかちょうどいいところにいたな」
「どうしたんだ?」
「実はな・・・やっぱり銃も使えないとまずいと思ってね」
そう言いながらカーティス准尉はG30突撃銃をあげた。
「ああ、ゲッツ准尉のことを聞いたのか?」
「まあ、そんなところでね・・・良かったら指導をお願いできないかな?」
「別にい・・・いいかなエカ?」
クラークは了承しようとしたが、ふとエカテリーナの事が気になって尋ねた。
「うん、いいよ・・・わたし飲み物買ってくるね♪」
そういうとエカテリーナは射撃場から出て行った。
「いい感じじゃないかクラーク?」
カーティス准尉がニヤリと笑った。チャキーン!
「カーティス・・・人の女に手ぇ出すなよ・・・」
「わ、わかているさ・・・」
クラークの手の中に一瞬にして現れた小型拳銃にびっくりしながらもカーティスは答えた。
「・・・さてとそれじゃあー腕前の方を見せてもらおうか?」
カーティス准尉は銃を肩付けして狙いを定めた。
タタン タタン タタン!
どこかおぼつかない撃ち方ではあるが何発かは命中しているようだ。「どうだ?」
「・・・どこで習った?」
「私が教えたんだけど・・・どうかした?」
ラヴィが手を挙げながら答えた。
「ふむ・・・無駄弾を使用しないで効率よく敵を倒す・・・俺も最初に習ったやりかただが・・・ラヴィ、実戦経験は?」
「・・・いえ、前の爆撃作戦が初めてだけど・・・あれは実戦経験に入るかしら?」
「生身の敵と対峙した事はないんだな?」
「ええ・・・そう言う事になるわね」
「そうか・・・じゃあ2人とも見てろよ」
クラークはそういうとAKS74Uを構えると引き金を引いた。
タタタタタン!
イヤ・プロテクターごしにもはっきりと聞こえる銃声だった。
クラークは弾倉を外しながら言った。「こいつはノック・ダウン射法って射撃法だ・・・相手が倒れるまで撃ち続けるんだ」
「成る程ね・・・電撃的に敵を排除するやり方か・・・」
「覚えておいて損はない・・・だがラヴィの教え方がまずい訳じゃないさ」
そういうとクラークはラヴィの肩に手を置いた。
「さてと、俺が教えるよりいい教師がいるみたいだからな・・・まあがんばってくれカーティス」
「手数を掛けたなクラーク」
「かまわんさ・・・それに次の生徒が来る頃でね・・・」
「次の生徒?」
クラークは腕時計を見ながら答えた。
カーティスは不思議そうに首を捻った。
だが、次の瞬間に射撃場入ってきた人物を見てフリーズした。
「クラークお兄ちゃん来たよ!」
缶ジュースを持ったエカテリーナの後ろから一見、少女と見まちがう長い髪をした少年が現れたからだ。
そう、彼こそマディック大尉の息子にして゛あの゛守護天使小隊と従卒契約をしているセイちゃんである!
意外な事にクラークは子供好きだったりする。暇なときには遊び相手になったり射撃訓練などの教官もやっているのである。
「やあ、よく来たねセイちゃん」
どこか嬉しそうなクラークは笑いながら答えた。「うん♪ 途中でエカテリーナお姉ちゃんと一緒になったんだ♪」
「クラークごめん、セイちゃんにあなたのジュースあげちゃった」
「いや、別にいいさ」
クラークは笑いながら答えた。
「ねえ、お兄ちゃん? 今日はなにするの? また銃の組み立て?」
「う〜ん、そうだな〜・・・よし、今日はペイント弾を撃ってみるかい?」
「えっ、いいの? ありがとう、お兄ちゃん♪」
すっかり取り残されていたカーティスが再起動した。
ラヴィの方はクラークが子供達に銃の扱いを教えているのを知っていたので別にフリーズしていなかった。「はは・・・どうやら噂は本当の・・・」
チャキン チャキン!
カーティスが全てを言い終える前にクラークは素早く手を振り、二丁の小型拳銃を向けた。
「カーティス・・・俺はただセイちゃんや他の子供達に銃の扱いを教えているだけだ・・・それがどうかしたか?」
穏やかな声でクラークが尋ねる。
だが、そのブルーの瞳には暗い炎が映っていた。
「い、いや・・・何でもない、何でもないぞクラーク・・・だから銃を・・・」かなりピンチである。
だが、天はカーティスを見捨てなかった。
小さな天使を差し向けてくれたのだ。
「わ〜すごい! どうやって出したの?」
セイちゃんが会話に割り込んできたのだ。
「う〜ん? これはね、服の袖にね・・・」
クラークはセイちゃんにどうやって銃を出したのかを説明し始めた。
カーティスは難を逃れた。クラークからショタ疑惑が消えない理由はここにあるのかもしれない・・・・