カウツVの歴史   バージョン5.0    戻る

カウツVは、星間連盟時代には外世界同盟の領土でした。
 辺境とは言え、何しろ星間連盟の時代です。その技術レベルはかなり高いものが有りました。カウツ星系では作業用メック、シャトル、輸送船(低出力商用降下船)の生産ができたのです。
 この工業力を支えていたのは、豊かな海と自然状態で農業が可能な気候、そして量は多くないものの豊富な種類のある鉱物資源でしょう。

 しかし、問題が一つ有りました。
 これだけ豊かな惑星であるため、外世界同盟は二人の公爵をカウツVに封じていたのです。
 この二つの公爵家同士のライバル意識は凄まじく、相手の公爵にたいしての警戒のために軍備を拡張しつづけました。そのため、カウツVの軍備はこの地域としてはかなり過剰なものでした。

 そこに、星間連盟の崩壊が起こります。5大王家は星間連盟の継承権をかけ、熾烈な領土拡大戦争を始めます。その余波はカウツVにも達しました。
 クリタ軍が攻めてきたのです。

 この緊急事態に至って、二つの公爵家は始めて歩み寄ります。婚姻によって両家は一つとなり、なんとかクリタ軍の攻撃を跳ね除けようとしたのです。
 しかし、もともと二つの軍であったために連携の取れた行動が上手くいかず、第1時継承権戦争(2786年〜2821年)の初期に保有していた航宙艦の全てを破壊されました。カウツVは、ほぼ独自の力でドラコ連合の侵略部隊と戦わねばならなくなったのです。補給の困難を重く見た当時の惑星政府は、航宙艦の大半が破壊された時点で、作業用メック工場群に、軍用メック部品の製造を命令。さらには、作業用メックの部品を流用した、準バトルメックの開発を打診したのです。
 かくして、バトルメックとまともには戦えないものの、都市防衛や森林戦においてはなんとか使える程度の“民生メック”が開発される事になるのです。

 幸いにもこの惑星はあまり重要な位置に有る訳でもバトルメックの製造施設がある訳でもなく、戦略的な価値に乏しかったため、大規模な侵略はない上に断続的に行われる程度でしたので、かなり長期にわたって抵抗を続ける事が出来ました。
 最大で1.5G加速しか出来ないものの、ジャンプポイントと惑星周回軌道を往復できる商用降下船と、軌道上と地上を結ぶシャトルの建造が可能だった事もクリタの侵攻を跳ね除ける大きな力になりました。

 また、頼りにならない外世界同盟を見限り、恒星連邦に擦り寄って多少の補給を受けることができるようになったのも敵を退けるのに大いに役立ちました。

 

 西暦2804年1月。ドラコ連合は他の戦線での余裕ができた事から、カウツVに大規模な部隊を差し向けました。しかし防衛軍の民生メックを中心とした大部隊は、クリタの攻撃を数次にわたって跳ね除けました。この戦闘で双方ともに戦力を大きく減じた結果、戦線は膠着状態に陥ります。カウツVを巡る戦いは、7月まで続く長期戦になったのです。
 しかし、この戦いは実にあっさりと終了しました。
 カウツVに大部隊を派遣したために、周辺宙域での戦闘で苦戦を始めた事を重視したジンジロー・クリタは、即座に敵兵力の壊滅とその大元の破壊を行うように命じました。司令官の幕辺大佐は、これに対し、カウツV首都、シギリアに核攻撃を行い、惑星中の浄水施設を破壊する事で答えました。この直後にクリタの侵攻軍は退却し、他の戦線に投入されたのです。7年前にケンタレスの大虐殺を行ったジンジロー・クリタはこれを咎めませんでした。逆に、「完璧な対処」を行った幕辺大佐に勲章を贈ったそうです。

 カウツV首都、シギリアは核爆発により消滅し、巨大なクレーターとなりました。実に、500万人がこれで死亡したのです。また、風下の広い範囲で多数の町が廃棄せざるを得ないほどの放射能汚染にさらされ、多数の工場と耕地が失われました。難民の数は5000万人に昇り、食料は不足し、物資は欠乏しました。また、政治の中枢を失った事が混乱に拍車をかけました。街同士が政治の主導権を争っていさかいを起こし、治安が悪化し、各地で水や食料や医療品を巡っての暴動が起きました。超光速通信施設ですら、略奪の対象になったのです。
※現代地球でも、核廃棄物処理施設の3ヶ所も事故を起こせば、地球全体が汚染されるとも言われています・・・恐いですね(-_-)

この後の10年間に、カウツVの人口は激減し、ロストプラネットへの道をひた走る事になるのです。

 

西暦2990年
 恒星連邦であるファイルが注目されました。失われたカウツVの工場の記録です。その資料には、カウツVの第2の都市、アイギナにシャトルの工場が生き残っている可能性が示されていたのです。また、小惑星帯にある多数の鉱山と輸送船の工場の記録も同じファイルに記載されていました。輸送船工場に部品を供給する工場群のほとんどがアイギナに有った事を知った時、恒星連邦の上層部は考えました。

 「うまくすれば、この二つの工場を再稼動できるかもしれない。降下船とシャトルを合わせれば、効率は悪いが降下船の代りになる。」

 直ちに調査チームが派遣され、満足できる報告を受けた後、恒星連邦はカウツVへの積極的な援助を開始しました。医療、教育、農業用機械の貸与、各地の工場の再建等等。町毎に別れて争っていたカウツVの住民達は、多少の抵抗をしたものの、割とすんなり恒星連邦の支配を受け入れました。争うよりも特だと考えたのでしょう。

 その後30年の時を経て、カウツVは復興を遂げました。生産数は少ない上に、部品の多くを輸入に頼っているものの、シャトルと輸送船の生産が再開されたのです。
 
 しかしこれは、ドラコ連合の注意を引く事にも繋がりました。

 カウツVは現在クリタ家による侵攻を受けています。