『カウツ3衛星系考察』 作:M−鈴木 戻る
さて、カウツの衛星に付いて大枠を簡単に計算してみました。
勿論細部は微調整でどうにでもなる数字ですので参考程度に考えていただければ幸いです。
まず前提として「恒星・惑星」の諸条件の関係は「太陽・地球系」と近似であるとしています。
つまりカウツ3の質量比重等は地球と同じ、カウツ主星は太陽と同じ輻射量質量と言う事です。
さて、カウツ3には衛星が3つあるとの話です。
これは内惑星としては比較的珍しいとも考えられますが、我々が知る前提が太陽系しか無いのですからおおらかに考えてみます。
但し衛星の公転軌道は我等が「月」よりもかなり小さく纏めておきます。
月は成り立ちが特殊である上にその軌道距離も異様に遠く、
惑星(地球)との引力
と
太陽との引力
では太陽の方が2倍と言う条件にあり、極めて低い離芯率(真円に近い)軌道の衛星としては稀有な存在だからです。
通常こうした衛星は惑星の引力のほうが太陽からの引力より強い位置にあるモノです。
そこで3つの衛星の内、最も遠い軌道距離を22万km弱(公転周期12日弱)と設定します。
(月は38万4400kmで対恒星基準公転周期が27.3日です。)
更に既存のデータを見るに「まれに3つの月がそろって新月になる大新月の日ってのが有る」とあります。(※1)
この稀をどう取るか?なんですが、年に10回で計算してみました。(勿論過剰なのは判っていますが仮計算ですんで御容赦を)
ここで問題になるのは各衛星間の周期比率です。
木星と小惑星の周期比率で有名な話ですが、ある特定の周期比率では「排除条件」が生じ、
「質量の大きな天体が他の天体の軌道周期をある範囲に押し込める傾向」
がある事が知られています。
そこで内側からK1,K2,K3と3つの衛星があるとして、
@K2を最大の衛星とし
AK1がK2との周期比率を木星に対するヒルダ群小惑星と近似に
BK3がK2との周期比率を海王星に対する「1995DA2」カイパーベルト天体と近似に
置く事にします。
するとK1が約6日、K2が約9日、K3が約12日の周期を持つ衛星系となる訳です。
この衛星群は必然的に約36日に1回の合を見る訳です。
この合の周期はカウツ主星を基準にした周期では無く、宇宙空間そのものを基準にした周期です。
つまり約36日毎に毎回の大新月を迎える為には
その間に惑星がカウツ主星を公転したのと同じ角度分余計に惑星周囲を公転
していなくてはなりません。
実はこの数字は年10回の大新月を前提にした場合で
K1が周期 5.9 日
K2が周期 8.78日
K3が周期11.61日
程度になります(惑星から見た周期はきっかり6,9,12になるんですが)。
この周期を短くずらせば合の位置が周期毎に東進し、長くずらせば周期ごとに西進します(惑星上から見て)。
すると大満月や全半月等も設定出来る訳です。
続いて衛星のサイズと質量です。
大前提として恒星系成立初頭から存在した同一材料での衛星であるとしますので、基本的に比重は惑星と同一にしておきます。
(つまりざっと5.5です、月の3.34に比べると可也高いと御理解戴けると思います。)
サイズは全くの恣意的数値として
K1=半径150km
K2=半径750km
K3=半径240km
としてみましょう。
すると
K1=見た目の大きさが月の0.239倍の幅、面積は0.057倍(軌道半径138300km)
K2=見た目の大きさが月の0.920倍の幅、面積は0.845倍(軌道半径180400km)
K3=見た目の大きさが月の0.244倍の幅、面積は0.060倍(軌道半径217200km)
この場合でもK3は可也明るい天体となります。
又、各衛星の表面重力は
K1=0.02G
K2=0.12G
K3=0.04G
となります。月が0.17Gです。為念。
そして惑星に対する潮汐力については・・・
事、海に関しての影響は
◎海が狭く、完全に内海になってる惑星
ならあんまり関係ない話になります。
「満ち引き」になんないですから
地球は全て繋がっている故に海水が大移動を起こし、
それが特に狭い範囲に影響が集中した時に(地中海や瀬戸内海)壮観となるんですが・・・
狭いトビトビの海や、ぐるり赤道を1/4周以上していない海だった場合、あまり関係ありません。
勿論カウツ3の海がどういったものかわからないので何とも言い様はありませんが。
さて話を本筋に戻しまして。
衛星による惑星への潮汐力と言うものは、惑星に対する衛星の引力が、衛星に近い側と遠い側で差が生じる事で発生します。
月の影響が太陽のそれに対し非常に大きいのは、遥かに巨大な引力を持つ太陽と言えども地球の昼と夜の各面への距離の差が、
太陽と地球の距離の差に比べて余りに小さいからに他なりません。
すると勿論の事カウツ3の衛星群の中でも最大を誇るK2はカウツ3に対しそれなりの潮汐力を有している事になります。
実はK2と月の惑星に対する潮汐力は「ほぼ近似」となる筈です。
いやさ、実は大体同じになるように意識して設定したんですが(笑)。
ちなみに残りの2衛星はK2や主恒星の干潮に隠れてしまい、殆ど判らないレベルです。
但しこの周期でK2が惑星に対し月と同様の潮汐力を与えている事実は非常に重要なファクターとなります。
と言うのは、K2が海水の干潮による各運動量の移行に伴い、我等が「月」に数倍する速度でカウツ3から遠ざかって然るべきなのです。
幸いにも海水面が狭く、質量も少ない為K2の軌道に与える影響は地球:月系程顕著では無いと思われます。
これは重要な問題です。(SS構成上)
つまり、カウツ3の「海」の面積設定をこれ以上変えるべきでは無いと言う事なのです。
最後にK1とK2の2つの衛星はカウツ3との潮汐作用から対惑星の見かけの自転は停止している(対惑星公転周期と自転周期が一致)とします。
公転軌道傾斜はK1とK2がほぼカウツ3の赤道に一致し(K1が±2°位、K2が±4°位かな?)K3はかなりの傾斜角が許容されます。
※1:新月の期間
単純な計算ですが、地球:月系では天球上を移動する速度の差が小さい為月の出から月の入りまでの時間差は小さくなります。
29日で太陽を周回遅れにする月は一日あたり12.4°程太陽との位置関係が変わります。
つまり丸一日で満ち欠けの1/29を行う訳です。
それは一晩に1/58の満ち欠けをする事を意味し、即ちそれは一晩に半月から満月の間の1/14.5の姿を変えると言う事です。
それに対し、周期が6・9・12と早い動きを見せるK1・2・3は一晩の間にさえ目まぐるしく姿を変貌させます。
(飽くまでも比較論でしかありませんが)
各々の満ち欠けの速度は月のそれの4.83倍、3.22倍、2.42倍にも達し、特にK1のそれは一晩で半月からほぼ満月になるようなものです。
そう考えると大新月等と言うものが1晩足りとも続く筈は無いのですが
新月は昼の側で起こります。
新月に近似の上弦・下弦の細い三日月は夜になったと思ったら瞬く間に沈み又は上ったと思ったらすぐ朝になるのです。
つまり意味としては
「夜間に光源と言えるレベルの衛星が出ていない期間」
と捉えるべきかも知れません。
K1は決して豊かな光源とは言えませんが、K2・3が共に天空に無い夜間に限るならば全天を圧する存在感を誇示する存在ではあります。
そこで
K1が日の出日の入り前後1時間に限り夜空に無い(星明りのみの夜空が続く時間が6時間以上)
を仮の大新月期間と仮定します。
計算してみれば簡単な話ですが、この時間は余りにも短いのです。
実に月齢0の前後各6時間のみ!
勿論この時のK1は実にか細い三日月でしかありませんし、元来の視直径の小ささを考えれば半月まで無視出来るかもしれませんが、
「新月」の定義に拘る限り事実上そんなモンなのです。
まあ、この辺もストーリーの都合で調整可能な部分です。
※2:衛星の自転
潮汐力は各面への引力の比が重要なファクターとなります。
さて、K3は月より惑星に近いとは言え、それ以上に直径が小さいと言う点に御注目下さい。
この一事を以ってK3が自転を(僅かながら)残している可能性を示唆出来るのですが、
加えてK3(1も2も)は「月」と異なり惑星と衛星が同じ組成で出来ている事になっており、比重も月に比べて高めに設定されています。
勿論それでも潮汐力の影響が皆無などと口が裂けても言える位置設定では無く、
見かけ上の自転速度が非常に遅い(又は既に見かけ上の自転が停止している)としても何ら問題はありません。
まあ、書いたモン勝ちのトコでしょうね、これは。
それに、自転していようがしていまいがこの視直径ではそれ程ストーリーに影響が無いと推測されるのが寂しいトコですな(笑)
蛇足ながら、K3の軌道設定次第では見かけ上の自転が「停止出来ない」可能性もあります。
それは「離心率の高い楕円軌道」や「他の衛星の公転面から大きく逸脱した公転面」の場合です。
自転速度が一定である以上公転軌道が真円から大きく離れる事は同期のずれを意味し、それは公転面がK2と異なる事で生じる外力でも同様であり、
それに起因する摂動は衛星の挙動を活発なものに変えるでしょう。
さて、以上が仮計算としてのカウツ3天体系緒源ですが、イメージ優先での御希望等があれば再計算しようと思います。
(大新月は年1回以下!とか、衛星をもっと近く!とか、もっと大きく!とか)
勿論、御自分で計算戴くほうが私は楽なんですけどね(笑)
★以上の計算等は全てエクセル97と理科年表2000年版の機能・データで行いました。