子どもの時
帽子のゴムをかむと 夏がやってきた
だんだらのゴムを指でつまんで
夏休み プール教室の帰り 水飲み場のみゆきちゃんをまつ

夏がからあげされてゆく
その時

天上からふってくる こまかなもの
ひかりのつぶみたいな
虫みたいな
糸のほつれたのみたいな──

ぶよぶよふやけたゴムは ニガイあせのあじ
ガシガシかむのはそれをよぶおまじない
するとおおきなてのひら 風と一緒に わたしをなでにくる

(中略)

ふってくるのは夏の神様の袖の糸くず
まるいゆびさき
帽子のゴムかむと
夏がやってくる

────(「夏の手」より抜粋) 「てのひら童話」/短編漫画童話集 /1993年/192P/角川書店

左上から/カバーとカバーをとった表紙/別丁扉 /カバー葉っぱの子、
左下から/本文プロローグ紙芝居 /表1表2/本文プロローグ