知床半島の鋭峰
遠音別(おんねべつだけ)岳は、道東の知床半島に位置し、山麓からの端正かつ威厳ある山容は魅力がある。
登山口へと、国道334号線の海岸線沿い「海陽亭」標識から山側の道路に入り、チャラッセナイ川が海岸へと流れ落ちる「オシンコシンの滝」上部に滝見橋があり、付近の広場で多数の鹿に囲まれて車中泊とする。
遠音別岳に関するルート情報は全くの白紙であり、チャラッセナイ川右岸を当初考え「海陽亭」付近斜面は雪も豊富で取り付きも容易であり、山頂まで広尾根の等斉斜面が続き選択したかったが駐車場がと!!…私が辿ったのは距離的に大差はなく、地形読みが明瞭な尾根筋が続くチャラッセナイ川左岸の標高差1300m弱の尾根ルートに決定する。
翌日、0530 滝見橋から流れ落ちる「オシンコシンの滝」を下方に見つつ、チャラッセナイ川の沢筋斜面から林道へと容易に辿れるとは知らず「下山時に確認:GPSトラックの黄線参照」背中にスキーを背負ってフェンス沿いから台上に上がる。
薄く固い雪面には、無数の鹿の跡と糞そして小枝が広がる中、程なく林道に出るとスキー跡を発見又時折標示テープもあり、このルートでの登山者もいるのだと多少安心しつつ、チャラッセナイ川沿い斜面に取り付く。
樹木密度が中程度で地形が小さく錯綜し、汚れた景観の雪面もC130付近からは白き斜面が広がる。
C220で高圧送電線を通過し、時折尾根上の濃密度の樹木を避けるため山腹を切るが433Pの短い下りは特に松が濃密であり、スキーを回すのも大変である。
小起伏の尾根筋が続くと545P正面から本格的に遠音別岳の山容が遠く高く、その白き威容を見せる…遠い!!
C630付近以降は、鬱蒼と続いた森林を抜けて広がりのある疎林景観が広がり、程なく森林限界となると広大なる雪原が広がり、山頂が2つ程のピーク斜面に越しに高い。
とにかくでっかい緩斜面が続き、ここからが長い時間の始まりで、右に「海別岳」左に「羅臼岳〜硫黄岳」振り返るとオホーツク海と流氷が遠望され、雄大なる知床特有の景観である。
山頂斜面に取り付く緩斜面が終わる傾斜変換点からは、標高差500mの登りであり、スキーアイゼンを装着し、高度上げの辛抱の時間が経過すると共に、風が強烈に点在するハイ松斜面に吹き抜ける。
雪面には、これまでに見た事のない「細いツララの結晶を横にして束ねた」凹凸が斜面に終始あり、特にこのブリザードではスキーアイゼン又はアイゼンがないと体力消耗を助長すると思える。
一定の等斉斜面に雪煙が舞う中、ハイ松を抜けるトラバースを繰り返すと…やっと待望の狭い山頂であるが、セッピ越しの東側断崖に吹き飛ばされそうである。
頂きからは、太平洋・オホーツク海と流氷の帯を望み、北方領土と白き山・知床峠へと続く険しき稜線と峰々そして羅臼岳・海別岳等の大展望には息をのむ。
下山は、強烈なる風にあの「氷結晶の段差」を避け、通常のクラスト斜面である南西斜面へと滑降を楽しみ大きく回り込みながら下降して、再び雪原から鬱蒼たる樹木の尾根に高度を下げる。
登山口付近の林道をチャラッセナイ川に向かうと、林道は消えるが急斜面下の沢筋を短時間に抜けるとオシンコシンの滝上部の登山口「滝見橋」であり無事下山する。
「海陽亭」(団体客がある場合は、個人の入浴不可:500円)の湯に浸りつつ、高く遠かったが頂きを踏めたのは、絶好の気象条件が味方をして幸運であった。
このルートは難所はないが、標高差1300mと長距離又逃げ場のない高所は、強烈なる風と厳しき気象現象の斜面もあり、悪天候が予想される場合は、近寄ってはならない魔物の山域と思い返す。
滝見橋(オシンコシンの滝上部) | ||
登り 5時間50分 |
4時間 | 下り 3時間10分 |
森林限界(標高700m付近) | ||
1時間50分 | ||
山 頂 |
1
滝見橋(赤線へと チャラッセナイ川沿いに林道がある)
2
海陽亭から山容
3
標高545m付近から山容
4
標高650m付近から雪原越しの山容
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