鉢盛山               ナイフリッジ越え
           
2006.04.23/GP

十梨別C323〜361林道分岐〜ポントナシベツ川沿林道〜滝の沢C480〜南東尾根(往復)


 鉢盛山(はちもり山)は、夕張山地の主峰「芦別岳」「夕張岳」の主稜線間に位置する1400m級の山である。
 この山への登頂記録は極小であり、積雪期に芦別岳から夕張岳への主稜線又は無雪期に滝の沢から難渋の藪漕ぎの末に頂きを踏んだ記録程度であり難しい山に属する。
 この山単独の積雪期ルートは、滝の沢又は東側の尾根筋を辿るのが一般的と考えられるが、後者の尾根筋から頂きを踏んだ記録である。
 地形図を眺めるとポントナシベツ川沿い林道から「滝の沢」を渡渉後、南東尾根を辿るのが最短距離であり、尾根筋の等高線幅も比較的広いと判断…しかし予想外のナイフリッジの連続越えに時間を要した。
 1日目:登山口へと金山市街地にて、Ogi氏/旭川と合流、単独山行では厳しい山も荻野氏の沈着な状況判断と抜群の体力にて同行の機会を得て、過去幾つかの貴重なる頂きを一緒に踏んで来た私の数少ない山仲間である。
 十梨別貯水池近傍のトナシベツ渓谷まで2.8Km標識のC323林道口が実質の登山口となる。
 C361林道分岐点まで除雪された林道歩き、ポントナシベツ川沿林道へと右に折れC370で一度橋を渡るとポントナシベツ川は渓谷から河川景観へと様相を一変、活気ある水流と開き始めた「ねこ柳」に遅き春の足音を偲ばせる。
 桔梗川沢筋を過ぎるとポントナシベツ川と滝の沢二股手前には地形図の林道が延び、南東尾根への取付点となる二股付近の滝の沢は水流薄く幅も狭小であり、長靴又は随所のブリッジによる渡渉は容易に可能と確認する。
 C323林道口から重装備での約10Km林道歩きを終えてC475でテント泊とする。
 2日目:朝、0430出発、ポントナシベツ川二股に向かい、長靴を携行したがC455でスキー装着のままブリッジを渡ると標高差1000mのバイトが始まる。
 当初の尾根筋は、滝の沢側が樹林密度は比較的濃く、疎林帯寄りの急登斜面に高度上げが続き、次第に青空が広がり、C1000尾根筋に上がると正面に忽然と大展望が開ける。
 凄い!!と声を揃える…正面に芦別岳と南稜線、雲海越しに大雪連峰が鮮明であり、日高山地の遠望次いで夕張マッターホルンの鋭峰等が澄んだ視程に圧巻の一言である。
 P1090を捲くと快適空間から様相一変…登山者を阻む連続したナイフリッジが鋭く威圧感を与え、C1140でスキーデポとする。
 地形図ではC1170以降も比較的広い尾根筋と判断したが、西側は崖、東側は雪崩れ跡が続く壁斜面であり、狭い尾根筋を慎重に辿る。
 2箇所目の岩稜線は一段と険しく、私の力量では前進困難と見上げるが、強引・慎重に突進、約1時間30分程の緊張から開放されC1330尾根分岐に上がる。
 二股尾根からは鉢盛山山頂を間近に眺め、振り返るとナイフリッジが鋭い景観を見せ、予想外の地形出現に緊張した時間を費やし感慨深い。
 全周視界の広尾根に展望を味わいつつ、特に昨秋にOgi氏と登頂した夕張マッターホルンの鋭峰を終始眺められるのが嬉しく、1415mと山名が無いのが不思議であるが、間近に眺める威容は一層神秘的であるのかも知れない。
 ハイマツが群生露出する丸みある山頂部へと山登りで最も充実した時間帯に山頂部は目前である。
 この山は、私には想いが強かった一山であり、テント泊のアタック、予想外のナイフリッジ越えの末に辿り着いた頂きは目前である。 先行したOgi氏/旭川が山頂直前で私に一番乗りを譲ってくれた武士の情けの配慮も加わり、頂きを踏む瞬間は目頭が熱くなる…感謝の一言である。
 広い山頂台地からは、芦別岳越しに懐かしい中岳とシューパロ岳、夕張マッターホルンの登頂ルートを想い返し又航空機からの展望を思わせる大雪連峰等の一大パノラマに高所空間を堪能…素晴らしきかな夕張山地の連山一望である。
 下山、C1330尾根分岐からのナイフリッジは鋭く、気温上昇をも考慮すると東側に大きく迂回する安全確実な迂回ルートを選択する。
 東尾根を下降、一旦C1000沢筋まで大きく高度を下げ、スキーデポ地点の南東尾根までデブリ・小雪崩れを連続して眺める。
 西斜面の標高差200m程の急登の登り返しは足元が埋没して一歩一歩に疲労感が漂うも輪カンではとても登れない勾配が尾根直上まで続く。
 2時間程の迂回から再び南東尾根筋に上がり、スキーデポ地点C1145に到着する。
 滑降は、尾根北東斜面を順調に高度を下げ、渡渉後テント場に予定時刻に到着、再び重装備での林道を辿り、正面に懐かしき吉凶岳を見つつ、13間弱の山行を無事終える。 

1日目
3時間55分

十梨別C323−3時間55分−テント場「滝の沢C480」
2日目

12時間45分

テント場(15分)渡渉点C455(2時間)−南東尾根P1090(25分)
スキーデポ点C1140
(1時間45分)C1330尾根分岐点(40分)山頂
(35分)C1330尾根分岐点(2時間)スキーデポ点C1145(1時間40分)
テント場(3時間05分)十梨別C323

1 C1000付近から芦別岳方面
2 ナイフリッジと筆者(荻野氏提供)
3 夕張マッターホルン
4 ナイフリッジと荻野氏
5 山頂部山容
6 山頂からシューパロ岳
7 山頂から夕張マッターホルンと夕張岳
8 山頂から芦別岳と中岳

GPSトラック

同行者/荻野氏@旭川のコメントです。

 この山のピークを踏むだけならば芦別岳から南下するのが一番容易で安全と思いますが、この山だけを一つの対象として考えた時、東側のルートから辿ることに意義があります。沢からにしても積雪期の尾根にしても、長い林道、渡渉、滝、藪等の要素と雪融けなど時期的なタイミングも含めトータルすると直登するのはなかなか難しいのが現状と思います。
4/23
帰りの林道歩きと未知の尾根を考え、4時半出発…ガスの南東尾根に取り付く。割合急な尾根だが可能な限りスキーを使うことにする。
Co1000付近ではガスが一気に取れ、朝日に輝く芦別岳からの険しい東面が姿を現し感動する。
1091先のコルから急登を登りきった所でスキーデポ。地形図では後は割合広めの尾根を登るだけのはずだったが・・尾根上にはとんでもない岩稜が現れる。一つ越えるとまた次と。だんだん尾根も細くなり両側がほぼ垂直に近く、靴幅程度の雪上を歩く際どい場面もあるが、EIZIさんの絶妙のルート取りでかわす。
自分だけなら間違いなく引き返したであろう。
地形図は間違っている?尾根はもっと細いし、崖(岩)記号でも良いくらい。
危険箇所を越え、広い尾根に出ると緩い傾斜を山頂へ。芦別岳、1415峰をはじめ大雪、日高まで最高の展望。
下りは同じルートは通りたくないと一度大きく高度を1000m位まで落とし南に大トラバースし再び急な尾根を登りシーデポ地点に戻る。この間常にEIZIさんにルート取りしていただき、私はただ連いていくだけで精一杯。
テントを畳み、湿気で重くなったリュックを背負い再び長い林道歩きが待っている。
滑るには滑るが10キロ弱で標高差140mでは。
2日目の行動時間は12時間半でようやく車に戻る。やはり東からの鉢盛山は簡単ではなかった!
さすがに2人とも疲労の色は隠せないが、それ以上に収穫も多く充実感のあった山行
でした
1 山頂から大雪連峰 
2 山頂部(左/荻野氏)
3 山頂にて荻野氏
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