天狗    道内有数の奥峰
        
2007.08.12/単独

せいわ橋〜イワナノ沢〜南尾根〜山頂(往復)234)


 シカシナイ山は、中部日高山脈の主稜線から西側に位置して、名峰「カムイエクウチカウシ山」から派生する南西尾根の一端にある1600m級の山である。
 現在の林道状況から道内の山々ではアプローチが最も奥深い山域であり、2005年の夏に「ガイドブックにない北海道の山々」著者である八谷和彦氏夫妻と延々と炎天下、更に奥まで自転車を9時間余り押した記憶を忘れない山域である。
 登山口へと三石ダム北端ゲートを抜けて、峠を過ぎると眼下に懐かしい高見湖が夕闇に映え、高見橋に近づくと湖畔南側の大規模な崩壊地形が気懸かりであったが、林道は整備されている。
 高見ダムからの林道に合流、薄暗くなった時間帯と競争するようにメナシベツ川右岸沿いを進み、「東の沢橋」を頭上高く見上げるペテガリ山荘への林道広場にテントを張る。
 翌早朝、シカシナイ山の取付点へと日高横断道路(静内町と中札内村の延長100Km強を結ぶ計画は、着工から19年の歳月と500億を注ぎ込み建設凍結)の困難性(財政・工事)と自然保護の重要性を実感しつつ「せいわ橋(地図では映光橋)」に向かう。
 道路両側には、大規模な倒木地帯が延々と続き、自然災害の脅威を知らされ、大がかりな機械力により、伐採作業が進んでいる。
 ルートは、当初西側を考えたがコイボク峠越えの時間を考えると地形図では急峻であるが南側を選定する。
 C545「せいわ橋」から水流・水量も活気あるコイボクシュンビチャリ川に降り立つと標高差1100mのアルバイトの始まりであり、予想以上の困難な一日の序幕でもあった。
 二股からイワナノ沢に入ると明るい沢筋の水流は比較的強く、C660連続枝沢次いでC705二股(右股)からは正面にシカシナイ山から派生する稜線を見上げる。
 C775枝沢の高度感ある滝を眺め小滝を高巻くとC795二股であり、左股が直登沢であり、沢口は滝もなく取付容易であったが、直ぐに大滝が出現…急峻な斜面を高巻くと連続した大滝を眼下に眺め、無理と判断!!
 水がない!!地図を眺めるとC795二股から北東の険峻な沢筋に入ったようであり、C795二股手前の10m滝の沢筋が直登沢と確認する。
 直登沢へとザイルで補助確保しつつ岩場斜面を高巻き、時間を要してC910で本来の沢筋に降り立つが枯沢であり、水の確保へと高度を下げるが既に1時間以上を費やした。
 暑い…(後刻知るが新冠町では観測史上最高の37度を記録)高捲きの緊張した時間帯も加わり、熱中症状なのか意識がもうろう状態で直ぐに眼をとじてしまい、標高差700mを残し気力がなく下山を本気で考える。
 岩場から流れる水滴を集め全身を冷やす事を繰り返す!!…随分時間が流れたが100m高度を上げる事を7回繰り返せば良いのさ!!…山頂に13時に届かなかったら諦めようと気持ちを一人切り替える。
 急登のガレた細い枯沢が続き、C1020では沢筋が地図上では延びているが、下山時にも確認したが不明であり、右斜面から南尾根C1100に上がる。
 幸いにも尾根上に低藪がC1400付近まで続いたが、背丈程の濃密なる灌木、次いで頭上に点在する岩峰を見るとハイマツ帯が待ち受ける。
 暑い…陽が照りつける炎天下、隠れ場所がない、貴重な水は残り少なく節約と思い喉を潤す、一歩々が体力と相談であり、こんなに辛い場面は過去に経験がない。
 振り返ると見事な青空下に日高中部の名峰が連なり、あの尾根を歩くのも水との闘いであろうと再びハイマツを泳ぎながら体を持ち上げる。
 岩場に上がると山頂は間近であり、山頂部東側には一部開豁部があり、下山の体力と残り水ばかりを考えつつ、非常食を口にするが喉が焼けて通らなく参った!!…山座標定はあまり覚えていないが主稜線の北から南まで一望される。
 下山途中、遂に水も切れ一刻も早く沢筋に出たいと降下すると水場を発見…正直これで帰れると頭から水につける。
 ここで仮泊してもと考えたが、気力もあり下山を開始、C795二股口の10m滝を懸垂下降するとイワナノ沢である。
 テント場に帰れたと感慨深く夕食と思うが、水を飲んでも喉が焼けて、思うように食事ができなく、体が変調しているのだと厳しかった一山を想い返し、非常食の工夫が必要と痛感する。
 明日は、西川岳を予定しているが、暑くなりそうだと暗くなった奥深い山中の星空を見上げる。

せいわ橋(映光橋)−6時間30分−山頂−4時間30分−せいわ橋(映光橋)

千石トンネルから山容
C795直登沢
山頂直下から千石トンネルを眼下に望む
カムイエクウチカウシ山
山頂部
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