電子基準点の移動についての検証

平成1516

土地家屋調査士 本 田 晋 一

なぜ検証を始めたか?

私は以前よりGPS測量について興味があった。人工衛星からの信号を利用して公共座標が決定できるなんてすばらしいことだと思い、まだまだ高額な機械ではあるが研究次第では調査士業務に応用できるのではと以前から思っていた。

しかし、調べるにつれGPS測量にはスタティック・RTK・VRS・FKP等色々な手法があるがどれも大なり小なり一定の誤差が含まれている事と、電子基準点自体が移動(陸地は必ずあるプレートに属し、日々移動し続けている)している事により将来電子基準点の座標値が見直された場合に以前の値で作成したデータの復元性はあるのか?等様々な問題点に行き着いた。

今回大分県土地家屋調査士会企画部研究班員として企画部会に出席した折りに、「高密度基準点構想」の説明の中で他の部員より電子基準点のITRF−94座標値(地球重心点を核とした座標値)資料の提示があり、毎日正午にデータ取得していることがわかったので1997以降の県内各電子基準点のデータを取得して解析すれば何か見えてくるのではと思い検証を開始した。

    何を検証するか

@                         測定開始日を基準にグラフ化してみる(後述:移動追跡)

A                       測定開始から今日までどのくらい、どの方向へどれだけ移動したかを計算する。

B                         図化し、Aの移動量を目で見て解るようにする。

C                         測定開始日と今日での各電子基準点間距離の比較を行う。

    検証条件

a:2002年11月3日時点でインターネットよりデータを取得したが直入、九重  のデータは何らかの理由で休止されており取得できなかった。

b:移動追跡についてはITRF−94座標のまま、その他についてはU系座標に変換して検証した。

    作業内容と検証結果

@     移動追跡(P316

基準点毎にテキストデータをエクセルに読み込ませて各月510日のみのデータとし、各日のデータから初期値を減算した上で自動グラフ化し、多項式近似曲線を挿入したのでデータが同じ変化を見せた場合はほぼ同じ曲線が出るはずであるが隣接する基準点同士で同じものは二つと無かった(緯度の高いものから低い順に編纂)。これにより同一地殻上には複数の電子基準点が存在しないことが解る。

観測開始が場所によって違うので1997510日〜20021030日のデータに絞って同様の作業を行ったが結果は同じであった。(P1730

 

A     最終値より初期値を減算し一覧表にしてみた。

 主な移動量は以下の通りである。(単位:m)

 

平均値

最大値

最小値

X座標

-0.1024

-0.1330

久住

-0.0850

大分国見

Y座標

+0.0908

+0.1340

前津江

+0.0530

佐伯

2乗平方根

0.1380

0.1772

前津江

0.1036

佐伯

この5年間で最低10p以上17.7p以下の範囲で大分県の各地がほぼ南東の方向へ移動している。

B変位量と方向を10000倍に拡大してベクトル表示(P31)したもの、ベクトル先端を結線し、ほぼ県の中央である湯布院を中心として重ね合わせたもの(P32)を作成した。前項の結果がよくわかる。大分県だけを表現すれば全体がちじんでいる

C(P33

各点間距離を初期値、最終値、差の順で図上に記載してみた。基準点で囲まれた三角形が誤差10oの範囲で保持されているのは大分−大分三重−佐賀関のみである。

 

    ま と め

@:予想以上に各点の変位が存在した。5年弱でこれだけの変位があるのだから、各プレートの動きが恒久的なもので有れば10年後は約倍の変位が有ると予想される。

A:電子基準点間距離が10p以上変化してしまえば当然値の見直しが出てくると思われるが、宇佐−安岐で-27o出ていることより、いずれ見直しがされるであろう。

B:現在の状況ではあまり問題は無いと思うが、基準点を結ぶ三角形の形が徐々に崩れつつある。復元測量をかけた場合に各辺長の誤差が補正値となって返され、ある一定期間以上経過してしまうとピンポイントでの復元は困難になるのではないかと予想される。

 

    結 論

大きな範囲での将来のGISを考慮した場合、電子基準点を利用したGPS測量が最適であると思われる。しかしながら、電子基準点同士も地殻変動に伴い、ごく僅かではあるが徐々にその位置関係を変えつつある。今後の筆界点の精度の高い復元を行うためにも継続して追跡調査を行わなければならないと思う。