私的GIS(地理情報システム)構築の勧め

現在我々土地家屋調査士が行っている業務の内、土地に関する測量には大きく4つの目的があると思われます。

1,所有権界の認定

2,筆界の認定

3,地積の確定

4,土地の現地復元

所有権界及び筆界の認定については省きますが、地積の確定については光波距離計(トータルステーション)を使用するため半径100m程度の平坦な測量であれば特に補正計算をすることなく誰にでも正確な測量を行うことが出来ます。又、現地復元性については、現在の法律では地積測量図を公共座標にて表現する義務はなく任意座標系(極地座標)で表現することが出来るため引照点を設置(又は恒久的構造物を測定)する事により近未来の現地復元を可能としています。

 ところが、そういう成果を作製しておきながら、10年・20年前の地積測量図を復元しようと現地に赴くとかなりの割合で現地の地形が変わってしまっていたり、引照点が消失してしまっていたりいて、再度全体を測量して既存図面との重ね合わせを行い境界を推定し、立会により確定する作業が多くなってしまいます。その問題を解決するためにGPS測量により土地家屋調査士の成果を全て公共座標系により表現する方向で現在多数のプランを見受けます。

しかし、その中に大きな疑問がいくつかあります。

1,土地家屋調査士は本来筆界の認定を主な業とし、その資格試験においても測量分野においては測量士・測量士補・建築士どれかの資格を所有していれば測量に関する試験を免除され、測量技術のプロしかなれないという資格ではありません。

2,GPS(スタティック)測量により1点設置しようとすると最低アンテナ3台、よほど慣れた者でない限り1名での計測は不可能ですし、観測時間が高速スタティックでは10分であるが通常は1時間かかります。

3,公共座標により算出された成果は、同じ基準点(網)から復元しなければなりません。(基準点を設置した網と違う網から復元測量をかける事は全く意味がない)

以上のことから、我々土地家屋調査士におけるGPSの展開は過度の負担を要するものと思われました。

 そこで私なりに発想の転換を行う訳なのですが、「RTK−GPSを利用する公共測量作業マニュアル」(国土地理院発行:以下マニュアルと称す)によると簡易法では10qまでを作業半径としています。ということは、半径10qの放射トラバース測量が可能になるのではと考えました。マニュアルでは基地局1点・移動局2点を同時に観測し、各のDX・DY・DZを観測し、環閉合の誤差を確認しなければなりません。そのための3局同時通信の出来る機械は現在のところ携帯・無線等市販の物では不可能で、電子基準点が稼働している地域でないと不可能です。

 ところが、どこかの事務所に基地局(アンテナとモデム:常設)を設置し(これはもちろん電子基準点からスタティックにより測量)、移動局から携帯にて通信を行った場合たった1人で一応は10エポック(1秒1データ=1エポック)つまり10秒で1測線の測定が可能になります。(10エポックでは取得したデータのばらつきが大きいために観測時間については検証する予定。同時観測では無いが、適切な衛星配置・DOPで測定すればすぐに2点目の観測が出来るので衛星の配置の変化による誤差の偏りも少ないのではないかと思われる。)

たとえば、測量した土地の引照点2点をこの方法により測定し、環閉合出来ない部分は光波により引照点間のチェックを行えば一応の閉合チェックが出来ることになります。(チェック内容・精度確認方法は検討中)その引照点から他の境界点をトータルステーションにより引照点の持つ誤差を拡大せずに測量すれば、基地局観測手簿と移動局観測手簿が保管されていれば、同じ基地局から測量すると未来永劫同じデータが得られ、たとえ引照点が亡失していても復元が可能となります。

それじゃあRTK−GPSの精度はいかがな物かというところの行き当たりますが、カタログスペックによると10o+1ppm(10oに測線距離1q当たり1oを加える:10q離れれば20o)ですから、「地積調査ハンドブック」を見ても引照点間が40mあればほぼ甲1の精度が得られる事になります。

 成果への反映ですが、設置した基地局を「登記特定基準局〇〇」などの名称を定め、地積測量図にどの基地局から測ったかを明示することが出来れば(もっともマニュアルに反している部分もあるため、私の存じ上げる島根のS先生は上2桁を省いて任意座標として提出しているらしい)、たとえその土地が海没してしまっていようが永久に確定した筆界をその精度範囲で復元することが出来ることになります。

 結論として、時に所有者同士の合意に基づいて所有権界の認定を行う我々調査士にとって考えると全ての境界の数値化は絶対的な手法ではないと思いますが、長い目で見た現地復元性の為の一手法としては最適ではないかと考えます。

 展望としては各支部全てカバー出来るように基地局を配置した場合県内全体のGISも可能になってくると思えませんか?