STORYの記述がはしょりすぎだと思ったのでDVDを視返してみたところ、このジオラマのようにビル街でウルトラマンとバルタン星人が対峙するシーンが実際には劇中に存在しないという事実を発見し、人間の記憶や固定観念というものが実に曖昧であることを再認識させられてしまった。
たしかにウルトラマンは両腕を十字に組む、あまりにも有名なポーズでスペシウム光線を発射してバルタン星人を退治してはいたが、実際には星人が夜空を飛び回るのを撃ち落とすという描写だった。
劇中シーンに忠実に再現するよりも、ウルトラマンを特に詳しく知らないヒトにでも知られているほど有名なバルタン星人との戦いのシーンを、その対比でスケールを感じさせるビル群と同じフレームに入れることで「特撮ギャラリー」として製品化することに成功していると思う。
『ウルトラマン』はいまになって視直すと、巨大ヒーローもののパイオニア的な作品ということもあり、いろいろなところで試行錯誤が行われた苦心の跡が見受けられるが、ストーリの時系列がおかしかったり、科特隊のメンバーのくせにイデ隊員はあまりにも臆病だったりと、かなりリアリティに欠ける感が払拭できない。
この第2話も、ストーリとしてはそれほどおもしろいものではなく、むしろバルタン星人が再度登場する第16話のほうが宇宙と地球を行き来するという内容で、大きな世界観があっておもしろい。
それでもいまなお語り継がれるひとつの要因は宇宙人や怪獣の造形の妙にあると云っても過言ではなく、バルタン星人はその代表的なものであろう。
ここで再現されているバルタン星人の実際の尺は6cmくらいという小さなものではあるにもかかわらず、塗装の色使いが秀逸で、着ぐるみの表面のザラザラ感やブーツのモールドまでもリアルに再現されており、造形の全体バランスも非常によい。
なかでも特筆すべきは、額の三角になっている部分(耳)の彫りが深くとられてハッキリとエッジをきかせてある部分と、目の黄色の再現性である。
そもそもバルタン星人というのは、初期デザインではもっと面長な顔つきだったらしいが、これは結果的に耳の部分が拡がってしまったために顔つきが四角っぽくなってしまったとのこと。
第16話『科特隊宇宙へ』で登場するバルタン星人二代目では、この初期デザインが反映されているらしい。
胸のところで銀色に開いているのは「スペルゲン反射鏡」で、スペシウム光線を跳ね返す素材でできているらしい。
STORYでは言及されていないが、バルタン星人が地球へ来たそもそもの理由は地球侵略ではなく、22億(劇中のバルタン星人のセリフでは20億3,000万)のバルタンの民が宇宙旅行中に、バルタン星の発狂した科学者の実験がもとでバルタン星が爆発して帰るところがなくなってしまい、そのうえ乗っていた宇宙船の重力バランスが故障し、たまたまM240惑星と呼ばれる地球の近くを通りかかったため、その修理に立ち寄ったというものだった。
結局代表としてノーマルな大きさで一体登場したバルタン星人はウルトラマンに退治され、乗ってきた宇宙船もウルトラマンに発見されて破壊されて全滅するという結末だった。
それでもいくらかは生き残り、二代目はウルトラマンと科学特捜隊に復讐するという明確な動機を持って再登場する。
そのため、前回露呈した弱点を克服して登場するという用意周到ぶりである。
ただ、やはりウルトラマンのほうが一枚上手で、スペシウム光線をリング状にして放つ「八つ裂き光輪」で頭から縦に真っ二つにされてあえなく退治されてしまうのだが...
ちなみに『ウルトラマン』全39話では、初期・中期・後期でウルトラマンのスーツに改良が加えられてA,
B,
Cの三タイプが存在するというのも、わりと有名なエピソードである。
ここでは第2話ということで劇中でも初期のAタイプが使われている。
当初、口を可動させるという設定だったらしく、別パーツとして口と顎の部分が後づけとなっていた。
そして制作側の意図よりもマスクを生成している素材が軟弱だったため、圧力で頬が陥没して痩けた感じの顔つきとなってしまっている。
この製品ではこの点もきちんと再現されているところに拍手を送りたい。
ただし、ウルトラマン自体の塗装がわりと乱雑であることは否めないが...
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