STORY
ある夜、強烈な怪電波を発する物体が落下した。
電波の消えた科学センターへ急行したアラシは、そこに現れた奇怪な生物のハサミから怪光線を浴びて動けなくなる。
駆けつけたハヤタの報告で緊急防衛会議が開かれた。
ムラマツ隊長の提案から、宇宙語を解するイデが乗り込むがらちがあかず、代わってハヤタが話を聞いた。
宇宙人はアラシの体を借りて会話を始める。
彼らは自滅した星バルタンの生き残りで、円盤にはミクロ化した22億の仲間がいる。
そして地球へ移住を望んでいると云った。
話し合いは決裂した。
突如巨大化を始めるバルタン星人に、防衛軍の核ミサイルも効果はない。
頼みの綱は!?
そのころバルタン星人に弾き飛ばされたハヤタは、開花に落としたベータカプセルめがけてビルの屋上から捨て身の変身を試みる。
 
宇宙忍者 バルタン星人

核実験で母星を失い、移住先を求めて宇宙を放浪の末、地球を発見した。
円盤の中にはミクロ化した22億の仲間が眠っている。
人間を超能力で操って、地球侵略を宣言した。
弱点は火星にある物質スペシウム。

 

DATA
・分身して相手を撹乱する。
・ハサミから白色冷凍光線、赤色破壊光線を発射する。
・ミクロから身長2メートル、また50メートルへと巨大化する。
・核ミサイルの直撃を受けても致命傷を負うことなく、古い肉体を脱皮して新しく再生する。
・火星にある物質スペシウムが弱点

・身長/ミクロ〜50メートル
・体重/ゼロ〜15,000トン
・出身地/バルタン星
・能力/分身して相手を撹乱。ハサミから怪光線を発射する。
・登場作品/『ウルトラマン』第2話『侵略者を撃て』

 

特撮ギャラリー01
商品解説
初代ウルトラマン最大のライバルであるバルタン星人は、歴代のウルトラシリーズ中もっとも人気の高いキャラクターである。
この商品は、バルタン星人が初登場した『ウルトラマン』第2話の『侵略者を撃て』から初代バルタンを完全再現し、ウルトラマンとの死闘をジオラマ化したものである。
ビル街の対峙がよく似合う知的生命体同志のにらみ合いだ。

COLUMNT
番組メモ
1966年初頭、円谷プロがテレビ界に進出した第1回作品『ウルトラQ』が大ヒットして"怪獣"が社会現象になった。
この人気の要因は宇宙人や怪獣のキャラクターによるところが大きかった。
つづく新番組の『ウルトラマン』で、その魅力はいっそう顕著になる。
中でもバルタン星人はユニークな形状で、夜のビル街で神出鬼没に現れる不気味さも印象深く残された。

 

COLUMNU
怪獣メモ
『侵略者を撃て』で地球侵略に失敗したバルタン星人は、用意周到に作戦を練って第16話『科特隊宇宙へ』で早くもウルトラマンに再挑戦。
第33話『禁じられた言葉』ではメフィラス星人の配下として顔を出した。
監督であり、脚本を千束北男名義で書いた飯島敏宏は、バルタン星人を主軸にした劇場作品の脚本『ジャイアント作戦』を書く熱の入れようだった。
飯島監督は初め、昆虫のメスが産卵のあとオスを食べるような残虐性を持ったキャラクターとして特撮デザイナーの成田亨にデザインを依頼した。
結果的にバルタン星人は、『ウルトラQ』で高山良策が作ったセミ人間に、佐々木明が兜と甲冑を着せた仕上がりとなる。

ハサミをつけることは監督の意向だったという。
ちなみに、等身大と巨大化したときでは、ハサミに並んだ窓の向きが逆になる。
この当時、無機物と有機物を融合させたキャラクターは世界の幻想映画を見渡しても類を見ることがなく、今でいうギーガーのデザインしたエイリアンを先走った感がある。
ところで、人間をあざ笑う独特なバルタン星人の声は、実は東宝映画『マタンゴ』の怪人の声を流用したものだった。

 

私評
STORYの記述がはしょりすぎだと思ったのでDVDを視返してみたところ、このジオラマのようにビル街でウルトラマンとバルタン星人が対峙するシーンが実際には劇中に存在しないという事実を発見し、人間の記憶や固定観念というものが実に曖昧であることを再認識させられてしまった。
たしかにウルトラマンは両腕を十字に組む、あまりにも有名なポーズでスペシウム光線を発射してバルタン星人を退治してはいたが、実際には星人が夜空を飛び回るのを撃ち落とすという描写だった。
劇中シーンに忠実に再現するよりも、ウルトラマンを特に詳しく知らないヒトにでも知られているほど有名なバルタン星人との戦いのシーンを、その対比でスケールを感じさせるビル群と同じフレームに入れることで「特撮ギャラリー」として製品化することに成功していると思う。

『ウルトラマン』はいまになって視直すと、巨大ヒーローもののパイオニア的な作品ということもあり、いろいろなところで試行錯誤が行われた苦心の跡が見受けられるが、ストーリの時系列がおかしかったり、科特隊のメンバーのくせにイデ隊員はあまりにも臆病だったりと、かなりリアリティに欠ける感が払拭できない。
この第2話も、ストーリとしてはそれほどおもしろいものではなく、むしろバルタン星人が再度登場する第16話のほうが宇宙と地球を行き来するという内容で、大きな世界観があっておもしろい。
それでもいまなお語り継がれるひとつの要因は宇宙人や怪獣の造形の妙にあると云っても過言ではなく、バルタン星人はその代表的なものであろう。
ここで再現されているバルタン星人の実際の尺は
6cmくらいという小さなものではあるにもかかわらず、塗装の色使いが秀逸で、着ぐるみの表面のザラザラ感やブーツのモールドまでもリアルに再現されており、造形の全体バランスも非常によい。
なかでも特筆すべきは、額の三角になっている部分(耳)の彫りが深くとられてハッキリとエッジをきかせてある部分と、目の黄色の再現性である。

そもそもバルタン星人というのは、初期デザインではもっと面長な顔つきだったらしいが、これは結果的に耳の部分が拡がってしまったために顔つきが四角っぽくなってしまったとのこと。
第16話『科特隊宇宙へ』で登場するバルタン星人二代目では、この初期デザインが反映されているらしい。

胸のところで銀色に開いているのは「スペルゲン反射鏡」で、スペシウム光線を跳ね返す素材でできているらしい。

STORYでは言及されていないが、バルタン星人が地球へ来たそもそもの理由は地球侵略ではなく、22億(劇中のバルタン星人のセリフでは20億3,000万)のバルタンの民が宇宙旅行中に、バルタン星の発狂した科学者の実験がもとでバルタン星が爆発して帰るところがなくなってしまい、そのうえ乗っていた宇宙船の重力バランスが故障し、たまたまM240惑星と呼ばれる地球の近くを通りかかったため、その修理に立ち寄ったというものだった。
結局代表としてノーマルな大きさで一体登場したバルタン星人はウルトラマンに退治され、乗ってきた宇宙船もウルトラマンに発見されて破壊されて全滅するという結末だった。
それでもいくらかは生き残り、二代目はウルトラマンと科学特捜隊に復讐するという明確な動機を持って再登場する。
そのため、前回露呈した弱点を克服して登場するという用意周到ぶりである。
ただ、やはりウルトラマンのほうが一枚上手で、スペシウム光線をリング状にして放つ「八つ裂き光輪」で頭から縦に真っ二つにされてあえなく退治されてしまうのだが...

ちなみに『ウルトラマン』全39話では、初期・中期・後期でウルトラマンのスーツに改良が加えられてA, B, Cの三タイプが存在するというのも、わりと有名なエピソードである。
ここでは第2話ということで劇中でも初期のAタイプが使われている。
当初、口を可動させるという設定だったらしく、別パーツとして口と顎の部分が後づけとなっていた。
そして制作側の意図よりもマスクを生成している素材が軟弱だったため、圧力で頬が陥没して痩けた感じの顔つきとなってしまっている。
この製品ではこの点もきちんと再現されているところに拍手を送りたい。

ただし、ウルトラマン自体の塗装がわりと乱雑であることは否めないが...

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