STORY
北川町で住民が狂ったように暴れ出す原因不明の時間が続発した。
やがて犠牲者は、ウルトラ警備隊のフルハシとソガにまで及ぶが、二人は北川町で買ったタバコを吸った直後に暴れ出したことがわかり、ダンとアンヌは北川町のタバコ自動販売機を見張ることにした。
一方、科学班の分析でタバコに含まれた赤い結晶は宇宙けしの実で、その成分が殺意の原因であることが判明した。
そして謎の男をアパートまで追跡したダンは、メトロン星人と対峙する......。
 
幻覚宇宙人 メトロン星人
武器や暴力を使うことなく地球侵略を成功させるための実験をしに来た工作員で、すでにダンの正体を見抜いていた。
赤い結晶をタバコに混入して人間同士の信頼をなくす策士である。

DATA
・武力を直接行使することなく、赤い結晶(宇宙けしの実)をタバコに混ぜて売った。人間は神経が狂って殺意を持ってしまう。
・東京の下町北川町に円盤を隠して、典型的な日本人の生活空間を再現してカモフラージュした。

・身長/2〜50メートル
・体重/120キロ〜18,000トン
・出身地/メトロン星(北川町に潜入した)
・能力/人間に変身して行動する。飛行可能。
・登場作品/『ウルトラセブン』第8話「狙われた街」

 

特撮ギャラリー11
商品解説
SF番組の最高傑作と謳われる『ウルトラセブン』の魅力は、大人の雰囲気と斜に構えた知的宇宙人の個性にあった。
中でもメトロン星人は戦略も見事で印象深い。

この商品は実相寺昭雄監督がみずから監修し、8話の「狙われた街」から、雰囲気を損ねぬよう舞台となった木場のセットを再現し、メトロン星人と対峙するセブンをジオラマ化したものである。

COLUMNT
番組メモ
TBSの番組担当プロデューサが栫井巍(かごいたかし)から橋本洋二に代わった「ウルトラセブン」は、それまでのエンタテイメントから人間ドラマへに方向性も様変わりした。
脚本の金城哲夫は、武器を持たせず、手を汚さない高度な侵略作戦を宇宙人に与えた。
それはともすればずるがしこく嫌味な印象を与えることになるのだが、ちゃぶ台を前に意気揚々と作戦を語るメトロン星人の存在感は、あらゆる常識を凌駕し、見る側の意表を突いた。

 

COLUMNU
怪獣メモ

『ウルトラセブン』は『ウルトラマン』に比べ複雑なデザイン設計がなされた。
ヒーローはじめ怪獣や宇宙人はどこか抽象的なオブジェのような形状を持っている。
成田亨は海の生物をヒントにすることが多く、メトロン星人もウミウシと貝殻を合わせたような生物感を持っている。
高山良策はエバーソフトで体を、FRP樹脂で頭部を作った。
効果的な移動点滅は倉方茂雄のギミックになる。

物語の最後、ようやくメトロン星人が姿を現す。
このとき夕日と宇宙人を待避させた特撮の発想は素晴らしく、ひとつの画面に人間の合成はないものの、生活臭を感じさせるセット空間となった。
情緒的な特撮を担当した大木淳は円谷作品以降、ゴダイグループに合流し、実相寺とコンビを組んだ。
なお本作と同時進行で撮られたもう一本が、現在では視ることのできない第12話「遊星より愛をこめて」である。
こちらは佐々木守が脚本を書き、やはり"信頼"をテーマに人間と宇宙人が共存できるかという永遠の命題を余韻に残すものだった。
ドラマ部分の映像はとても美しいのだが、マスコミ媒体が紹介したときの表現の問題があったため、再放送以降、欠番あつかいとなっている。

 

私評
めずらしくスケール感の出ているジオラマだと思えるのは、やはり建物などが配置してあるからだろう。
発売当時の情報だと、このエピソードの有名なシーンである「ちゃぶ台を挟んで、メトロン星人とダンが会話する」シーンも再現されるということだったが、結局その後出ずじまいだったのが惜しい。
もしそれが発売されたら、おそらく傑作中の傑作になりうるジオラマになり得たと思うのだが...

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