その剣の名

プロンテラ南門から北上して大きな環状道路と交差する場所
ここはこの街の中でも最も賑やかな場所だ。
前後左右、あらゆる場所で商人や鍛冶屋、
果ては錬金術師までもが露店を開いている。
その隙間を縫うようにして冒険者やペコペコに乗った騎士等が
道を進んでゆくのだから混雑の具合は見たことのない者でも
想像に難くないであろう。

 

私はここ数日間、毎日この十字路で腕の立つ鍛冶屋を探している。
長い間、愛用していた短剣が先日折れてしまったためだ。
多くの冒険者が、露店で買いなおせばいいじゃないかと思うだろうが、
シーフである私にとって短剣への思い入れは並じゃない物がある。

 

シーフといえばスリや盗賊をイメージしがちであるが
私は主にトレジャーハンティングを生業にしている。
時には他人の財布を拝借することも無くはないが、
基本的には遺跡や洞窟の奥で手に入るものを売っていけば
生活にはほぼ困らないのだ。

 

接近戦を基本とし、
軽快なフットワークで相手を翻弄する私には
軽く丈夫な武器が必要不可欠である。
「相方」とも呼べるその武器にこだわるのは自然と言えるだろう。

 

今まで使っていた短剣に魂を吹き込んだのは
まだ私が駆け出しのころに世話になった鍛冶屋である。
傷ついて半ば行き倒れかけていた私を助け、
それ以来ずっとポーションや装備品を安く仕入れてくれた。
いつも同じ場所で露店を開いていた彼は
 「もう会えないかもしれないからコレを託すよ」
そう言って一振りの短剣を私に差し出し、以来姿を見せなくなった。

 

ずっと命を支え続けてくれたこの「相方」の代わりなど
そう簡単に見つかるわけもなく、
私は腕のたつ鍛冶屋をずっと探し歩いていた。

日が暮れかけ、今日も諦めて宿に戻ろうとした時だった
見覚えのあるデザインの短剣が目に飛び込んできた。

 

これは!

 

店じまいしかけていた商人を無視し、そのナイフを掴み取る
使っていた短剣と全く同じ銘に、このデザイン。
私は商人のむなぐらを掴むと、思いっきり絞り上げ入手先を訪ねた
 「こ、この短剣ならむこうの鍛冶屋が安く売ってたよ・・・」
 「サンキュッ!」

私は商人を放り投げると全速力で指差された方に駆け出した。
30秒ほどは走っただろうか。
見覚えのある顔の前で私は足を止めた

 

 「やっと・・・やっと見つけた・・・」

 「君はっ!?」

鍛冶屋は口を大きくあけたまま固まった。
驚いて動かない鍛冶屋に、私はせきを切ったように経緯を話した。
聞いてみれば、鍛冶屋の方も私が気になって仕方なかったらしい。

 

製造請負も人材過多なうえ、
市場にも出回ってしまった物が高額で売れるわけもなく
彼もまた一時は廃業を考えたらしい。

だが私にもう一度会って、まだ彼の短剣を持っていたら
鍛冶屋という道で生きていくと決めていたらしい。

 


そうして今私には二人の「相方」がいる
一人はこの鍛冶屋。
そしてもう一人は再度作ってもらった短剣

 

 


「RO患者になるため のダマスカス」