鷹匠の悩み

この世界は常に変わり続けている。
『ルール』は常に変わり、
ある者はそれを克服しようとし、
またある者は、己の無力さに落胆する。
幾度と無く繰り返された論争の歴史。
それもまたラグナロク──

 

 

 

 「はぁ・・・今時鷹匠なんて流行らないよな・・・」
一人の男ハンターが壁に凭れかかりながらポツリと呟いた。
まだあどけなさの残る顔と、金色のボブヘアが、
彼を中性的な雰囲気にしている。

 

ハンターと言えば強力な弓攻撃を特徴とする職業である。
多くの者が敏捷性に優れ、
時にパーティーを後方から援護し、
時に自らモンスターを引きつけて近距離から射抜く。
ギルドから貸し出されるファルコンを共につけて、
サポートさせる者も少なくない。

 

彼は弓よりもそのファルコンを選んだようだ。
飼い慣らすためには日々訓練をしなければならず、
そのため、弓の練習は疎かになりやすい。
今の時代を生き抜くには、苦労も多いのだろう。
彼は壁に寄りかかって座りながらぼんやりとしていた。

 

 「飲まないの?」

 

不意に言葉をかけられたことに驚きハンターが顔を上げる。
 「・・・お前こそ飲まないのかよ?」
声をかけたのは同じギルドに所属するプリーストの男だった。
 「賑やかすぎるのは苦手なもんでね」
そう言いながらドカッとハンターの隣に腰を下ろす。

 

部屋の真ん中ではランプの光を中心にして同じギルドの仲間達が騒いでいるが、
その喧騒は光と共に薄れ、薄暗い部屋の隅から見ると、
それが遠い世界の出来事のようにすら感じられる。

 

二人はしばらくそのままで、ぼんやりと仲間達を眺めていたが、
プリーストがハンターに視線を移し、ボソリと呟く
 「大丈夫?」
 「・・・は?何のことだよ」
 「さーてねっ」

 

プリーストは言いながら手を上で組み、大きく伸びをする。
そしてそのままごく自然にハンターの肩に手を回すと小さく微笑んだ。
 「汝、意地を張ること無かれ・・・だぞ」
また視線を中心に戻したまま黙るプリーストを数秒見つめるハンター

 

彼の優しい目に言葉以上のものを読み取ったのか、
ハンターは静かにプリーストの肩に頭を預けた。
 「誰も君のこと荷物なんて思ってないよ、憧れすらあるしね」
 「ばっ・・・か・・・泣かせん・・・なよ・・・」
 「おやおや、女の子みたいだね」
プリーストはクスクスと笑いながら、肩を震わせるハンターを優しく見守る。

 


 「ありがとな・・・」

 

囁くように呟かれた言葉が夜の暗がりに溶け込んだ。

 

 

 

 

葵の人:今回はリクエストネタ。BLってこんなのですか?