彩庵
長野市松代町
2008年竣工
施工:松代建設工業
街中の住宅の一画に設けられた茶室。
とは言っても、炉が切ってあるような茶道の空間ではなく、いわば喫茶のための現代茶室。
茶室というと、おうど色の土壁が定番ですが、
「それって、どうなんだろう?」との疑問から、この計画はスタートしました。
日本の文化には、禅宗的な、枯れかじけた侘び寂び(わびさび)の世界がある一方で、
浄土的で、匂いやかな、雅びの世界がありますが、どうもこの後者の国風的文化世界が、
建築の世界では、忘れ去られているフシがあり、かねがね不満に感じておりました。
「源氏物語絵巻」の色調などを例にとって、その思いを御依頼主のWさん夫妻にお伝えすると、
思いのほか賛同してくださり、この「彩庵(さいあん)」が実現することとなりました。
玄関部分も改修して、オリジナルの木製引戸を設置。
玄関に入ると、四半タイルの土間空間が広がっています。
奥に足を踏み入れると、やわらかな七色の塗り壁に彩られた茶室空間。
起こし絵図にすると、こんな感じ。四畳半を中心に、四方の壁を立ち上げると、立体茶室が出来上がる仕組み。
フチなし畳と段差のない床の間は淡いグレー。桃色壁の下は、三色のタイルを貼り合せたもの。
右上の障子からは、日中は外光が射し込みますが、夜間は行灯のような和紙照明になります。
普段は障子を入れて、和の雰囲気を楽しみます。
オリジナルデザインのベンチとテーブル。御茶屋の雰囲気で(御主人の発案で)。
ベンチの詳細図面の一部。座の格子は6本、脚の格子は5本になっていて、座と脚では、格子が互い違いになっている。
玄関の土間空間と彩庵を外から見る。土間部分が縦格子、彩庵部分が横格子となっている。