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13日目
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6月12日
教育実習13日目
今日は荷物が多かった。
教科書ノート類はいつものように大バックに入れて担いでいたのだが、それに付け加え壊れ物注意な荷物が一つ、余分にあった。
鉢植えのセントポーリアである。
スミレ科の植物で、持っていったのは濃い紫の花を付けているものだ。
何故高校にこのようなものを持っていくか。
別段、「今更だが実習生控え室内に潤いを」というわけではない。
高校時代、姉と図書館の司書さんは仲が良かった。
この司書は花が好きらしく、そのことを姉も知っていた。
それで時折、母が世話している鉢植えをプレゼントしていたのだが、今回もその一環である。
そして俺は司書教諭の資格も平行して取っているので、あわよくば司書の仕事についても聞こうという魂胆である。

朝、通常通り皆が授業及び、授業準備に散っていく。
俺も授業準備に入る。
明日最後の授業があるのだが、その予定していた内容を前回の授業でやってしまった(といっても内容がかなり雑であったが)為、殆ど一から作り直しの状態である。
教科書をめくって、めくって、めくって。
資料集でも使えると思った部分は全部付箋張って。
はっきり言って今までの授業には全く教科書・資料集の類は使ってこなかったのだが、今回は使った。漸くこれらを買った意味がある気がした。

10時位、図書館の準備も整っているだろうと思い、鉢植えと姉から預かった手紙を持って図書室に行く。運の良いことに、馴染みの司書さんが本日の当番であった。
しばし彼女と話し、また司書としての仕事を少しばかり教えてもらう。簡単な作業で、本の延滞をしている人の氏名入力である。プライバシー保護のために、貸出記録をそのまま出力するのではなく、別に打ち替えるという作業をしなくてはならないらしい。
休み時間に入ったため、貸し出し作業も見せてもらった。
貸し出しする際には個人の図書館カードのバーコード読みとりの後、本のバーコードを読み取る。そして、本自体に付着させている磁気を機械で取り除いて、返却期限をスタンプし、渡す。これが一連の作業である。
返却された本は磁気を付着させ、本棚に戻す作業をすることになる。
磁気付着のシステムは大学側と同じもので、図書館が新4号館に入った時に導入されたシステムである。
この図書館は新4号館にあり、俺が卒業した後に立てられたので、施設としては馴染みがない。ただ、以前の図書館よりは格段に採光が良くなっており、室内に置かれた昔のセントポーリアもこちらではなかなか元気に育っているようだった(前図書館ではあまりに日が薄く、あまり陽の好まないこの植物でさえもひょろひょろとしか育たない有様だった)。
図書館は学校の一部であるが、予算は「本の購入分」しかもらえないそうで、その他雑費は全くないらしい。その為、図書館内に貼る「図書館案内」のようなものを作る際も、本購入時にくっついてきた画用紙の裏を使用するなど、結構貧窮した状態を強いられている。
また、授業関連の資料を生徒が借りに来ることも勿論あるのだが、「今現在どのような授業をどの学年が受けているか」というような、年間授業計画みたいなものは図書館側には配られていない。だから図書館側は「なんの資料が欲しいのか、あらかじめ用意しておくことが出来ない」と言っていた。
あるとき、生徒が、
「『しまざきふじむら』って人の本借りたいんですけど、ありますか?」
と聞いてきた。どうやら国語の授業で取り扱っているらしい。
しまざきふじむら?
生徒が検索かけても出てこなかったそうだ。
よくよく聞いて、漢字で書いてもらうと『島崎藤村』であったそうな。
「授業内容おおまかにでもわかっていれば苦労しなかったのに」
と司書さんはこぼしていた。
図書館の現状を聞いていると、あまり「学校図書館」としての機能(授業に使える図書館)を果たさせてもらえない状態に置かれているのだなぁ、と感じた。
2限の時間には、今年司書教諭として司書の仕事も任された国語の先生(本校卒業生であった)も交え、話を聞くと共に「昼休みが始まる前に」と、弁当を食べた。
2限終了のチャイムが鳴ったので、その場を退散し、実習生控え室に戻った。教育実習中、実習生間以外で和めた空間だったね。

控え室に戻ると、殆どの人が揃っていた。
なにやらまじめな雰囲気も漂っている。
珍しい。
と、ふと視線をやると、見覚えのある恰幅の良いおじさんが中央奥に座っている。
研究授業を見るために大学側から派遣されてきた先生だ。
そう言えば、今日だったっけ、査察(何か違う)。
本日授業の無い俺にとっては、綺麗さっぱり忘れていた存在だった。
俺も席について話を聞き始めた。
暫くして実習生控え室の扉が開いた。
「ただいまー」というナオの明るい声と共に。
一瞬にして場が和らいだ。
彼女は俺同様、先生がいるのを知らなかったらしく、後で「先生いたなら、しなかったよー」と照れ笑いしていた。

本日放課後、実習生控え室には音楽が流れていた。
コバのCDである。
コバは英語担当で、自身の授業の時にCDデッキを使ったらしく、それがまだ返却されずに室内に置いてあった。
また、コバ自身友達と2人でバンドを組んでいるらしく、自分たちで制作した曲2つをCDに焼いて、持ってきた(というか持ってきてもらった?)。将来、音楽でやっていこうと思っているらしく、
「就職活動もしていない」
と公言していた。
エンドレスリピートで2曲がかかる中、授業がもう終わった人、最終日にも授業がある人で、大分雰囲気が異なっていた。
無論俺は後者である。
俺も早く授業終わらせてぇなぁ。
ぶちぶちとそんなことを思いつつ、資料集の付箋張り作業を行っていた。
そんな俺に、今日で授業終了したスミが嬉しい事を言ってくれた。
「カルーアの入った羊羹、作ってきてあげようか。」
即お願いしましたよ。
「俺、アルコールに弱いからカルーア少な目で」
って注文付けて(笑)。
明日はスミの羊羹励みに、乗り切るとしますか。


教育実習
心休まる図書室


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