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○おしらせ○

この度,日本原水協のウェブサイトは移転しました。新しいアドレスは次のものです。
今後ともよろしくお願いします。

http://www.antiatom.org/

 

核態勢見直し(NPR)、議会への報告文書の表紙  ドナルド・ラムズフェルド国防長官(2002年1月9日)
 

「核態勢見直し」発表にあたってアメリカ平和運動の見解
 


核態勢見直し(NPR)報告

2002年1月9日

はじめに

 連邦議会は、国防総省にたいし、包括的核態勢見直しをおこない、今後5年から10年にわたるアメリカの核戦力の方向性を示すよう指示した。同省は、この見直しを完了し、添付した報告を準備した。

 われわれはそれ以前より、新しい安全保障環境が生じていることから、21世紀にむけた戦略的態勢をつくるという議会からの委任の先を行かなければならないことを認識していた。そのときすでにブッシュ大統領は、国防総省にたいし、米軍の転換をおこなうこと、そしてわれわれが住んでいるであろう新しく、予測できない世界に備えるよう命じていた。この指令の結論は、4年に一度の国防計画見直し(QDR)である。このQDRの上に立って作成された核態勢見直しは、われわれの抑止戦略における核攻撃戦力の役割にたいするアプローチを大幅に変更する動きを推進しており、また、戦略的態勢の転換にむけた青写真を提供している。

 この報告は、以下の部分からなる新しい三元戦略核戦力(New Triad)を確立している。
・ 攻撃的攻撃システム(核と非核の両方)
・ 防衛(能動的、受動的の両方)
・ 出現しつつある脅威に対応するため時宜にかなった方法で新しい能力を提供する、活性化された防衛インフラストラクチャー
この新三元戦略核戦力は、強化された指揮・管制(C2)および諜報システムにより結びつけられている。

 新三元戦略核戦力の確立により、核兵器への依存を減らすと同時に、大量破壊兵器の拡散という事実に直面しながら攻撃を抑止するわれわれの能力を、つぎの二つの方法で向上させることができる。
・ (時宜にかなった部隊能力調整の見通し、強化されたC2・諜報システムとならんで)防衛を追加することは、アメリカがこれ以上、冷戦中のように、抑止を実施するため攻勢的攻撃戦力に重度に依存しなくてもよくなることを意味する。
・ (通常兵器攻撃および情報作戦をふくむ)非核攻撃戦力の追加は、アメリカが、攻撃的抑止能力を提供するために、これまでのように核戦力にあまり頼らなくても良くなることを意味する。

 新しい能力の組み合わせが新三元戦略核戦力を構成するが、こうすることで、作戦上配備された戦略核弾頭を1700から2200発にするという、2001年11月13日ブッシュ大統領が発表した目標に核戦力を近づけていきながら、国家にたいする危険を減らすことができる。

 以下は、本報告の最重要点を要約したものである。

 まずもっとも重要な点は、核態勢見直しが、戦略的戦力の計画にかんする冷戦時代の慣例に終止符を打ったことである。ソ連邦崩壊後の10年間、米ロ関係が新しくなったにもかかわらず、米核戦力の使用計画にはささやかな変更しか加えられてこなかった。戦略核戦力の規模や構成については、START条約で義務付けられた範囲以外の変更はほとんどおこなわれなかった。一方で、戦略核戦力を構成するいくつかの重要不可欠な要素を維持するための計画と財政支援は不十分であった。

 この見直しの結果として、アメリカはもはや、ロシアがまるで旧ソ連時代より小さい脅威を示しているかのようにみなして、自国の戦力を計画したり、規模を縮小したり維持したりはしない。4年に一度の国防計画見直し(QDR)が米国の防衛計画にむけて提起した方向にならい、核態勢見直し(NPR)は、アメリカの戦略戦力計画を、冷戦時代の脅威にもとづくアプローチから能力にもとづくアプローチへと転換している。この新しいアプローチは、来る数十年にわたって、米国および同盟国の安全保障に一致した、最低限の核兵器による確かな抑止力を提供することができよう。

 第二に、われわれは、攻撃的核戦力にのみ依拠する戦略態勢は、われわれが21世紀に直面するであろう潜在的な敵の抑止には不適切であるとの結論を下した。大量破壊兵器で武装したテロリストやならず者国家は、同盟国と友好国にたいするアメリカの安全保障上のコミットメントを試す可能性がある。対応として、われわれには、敵と味方の両方に対して米国の決意を確かに示すための、広範な能力が必要となる。国々に、米国と同盟国の安全をおびやかすような政治的、軍事的、または技術的な行動をとることを思いとどまらせるため、一連の広範な能力が必要である。米軍は、核・化学・生物兵器およびそれらを長距離運搬する手段をふくむ近代的軍事技術を入手できる潜在的な敵を、確実に抑止する力を示さなくてはならない。最後に、米国の戦略戦力をもって、あらゆる侵略者を打ち負かす広範な選択肢を、大統領に提供する必要がある。

 21世紀におけるわが国の防衛目標を達成するため、新三元戦略核戦力の第一の柱である攻勢的攻撃力の柱は、大陸間弾道ミサイル(ICBM)、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)、長距離核爆撃機からなる冷戦時代の三元戦略核戦力を超えなくてはならない。ICBM、SLBM、爆撃機、核兵器は、もちろん、これからもきわめて重要な役割を果たしつづける。しかし、これらの戦力は、われわれの攻撃的抑止の信頼性を強化するあらたな非核戦略能力に統合され、新しい体制の第一の柱の構成部分にすぎないものとなる。

 新三元戦略核戦力の第二の柱には、能動的および受動的防衛両方の開発と配備が必要であるが、つまりこれは、攻撃能力のみでは、21世紀の新しい安全保障環境における侵略行為を抑止できなかもしれないという認識である。2001年9月11日の出来事は、この現実を裏付けている。能動的および受動的防衛は完全なものとはならないであろう。しかし、限定的攻撃の効果を打ち消したり減らしたりすることで、防衛体制は、攻撃を思いとどまらせ、新しい危機管理能力を提供し、従来の抑止が失敗した際の保険を提供する。

 新三元戦略核戦力の第三の柱は、柔軟に対応できる防衛インフラストラクチャーである。冷戦終結いらい、米国の防衛インフラは縮小し、核インフラは衰退してきた。あらたな能力の開発と調達にむけた新しいアプローチが現在構想されているところであり、よって、新世代の兵器システムを戦闘配置につけるには20年以上かかることはないであろう。核インフラに関しては、配備戦力の信頼度を高め、不必要な兵器をなくし、技術的な番狂わせの危険を軽減するために、手入れが必要である。大規模な戦略変更に対応できるわれわれの能力を維持することで、われわれの貯蔵核の削減が可能になるのであり、同時に、敵に核軍備競争の開始を思いとどまらせることができる。

 新三元戦略核戦力の有効性は、指揮・管制、諜報、および順応性ある計画に依存する。敵の意図と能力に関する「鋭敏な」諜報活動により、戦力に適宜調整を加えることが可能となるし、攻撃と防衛の精度を向上させることができる。柔軟かつ迅速な攻撃および防衛戦力の配備を計画する能力があれば、米国は、危機管理、攻撃抑止、軍事作戦遂行で相当優位にたつことができる。

 新三元戦略核戦力をつくりあげ、われわれの配備核兵器を削減し、戦略態勢における柔軟性を向上させるには、財政上の問題が関係してくる。古い兵器システムを退役させ、新しい能力をつくるには資金がかかる。防衛インフラを回復させ、戦略防衛体制を開発・配備し、指揮・管制、諜報、計画、および非核攻撃能力を向上させるには、新しい防衛構想と投資が必要である。しかし、こうした投資をおこなえば、核兵器への依存を減らしながらも、米国をより安全にすることができる。

 4年に一度の国防計画見直しは、冷戦後のアメリカの防衛戦略の基礎を確立した。このQDRの上にたって、核態勢見直しは、冷戦時代の攻撃的三元戦略核戦力を、来る数十年に向けた新しい三元戦略核戦力へと転換するものである。

国防長官
ドナルド・H・ラムズフェルド

英文 
 

 NPR説明にあたってのスライド(英文) 


「核態勢見直し」発表にあたってアメリカ平和運動・研究機関の見解
 

2002年1月

西部諸州法律家基金 事務局長
ジャッキー・カバソ
1月9日付Eメール(抄訳)

・・・この問題では、アメリカが地下実験を再開することについての今日のワシントンポスト紙の記事の脈絡を理解することが大切です。アメリカは地下核実験を数年内に再開するかもしれないというこの記事は、今日――連邦議会議員に機密文書(最高機密)の形で――発表された総合的な「核態勢見直しNuclearPosture Review」のほんの一部に過ぎません。アメリカのNGOは機密扱いされていない版を入手しようとしていますが、できるかどうかは分かりません。

 いずれにせよ、米政府文書をふくむ他の文書によれば、NPRが、アメリカの国家安全保障政策における核兵器の使用による威嚇の中心性を再確認している可能性があります。NPRで提案されているアプローチは、条約による最低限の成文化のもと、貯蔵核の規模と能力の柔軟性を最大限に維持するという点であると考えられています。アメリカ戦略兵器の一方的削減が、短期間においては提案されるかもしれませんが、その一方で、貯蔵核の規模を急速に増加させる能力を維持することを強調されるでしょう。同様に、現存核兵器の改良または新型兵器の開発能力も維持されるでしょう。あらたな軍事力をそなえた新型または改良兵器の開発さえ提案されるかもしれません。この能力の一環として、本格的な地下実験を今後いずれかの地点で再開することも含まれている可能性があります。今日さらに発表されたニュースのなかに、ドナルド・ラムズフェルド国防長官の発言を引用したものがありましたが(下記参照:略)、この報道によると、NPRには、実験再開の正式提案はふくまれていません。NPTに盛り込まれている可能性があるのは、アメリカが全面的地下核実験の準備に要する時間を――現在の見積もりである――二年より短くするという提案です。端的に言うと、NPRは全体として、アメリカが、可能な限り少ない条約の制限のもとで、「核を永久に維持する」誓約を意味しています。核実験準備に要する時間短縮に加え、今後数ヶ月のうち、現在議会が小型核の研究開発に課している制限を取っ払おうとする動きもでてくる可能性があります。

 核実験などの個別の問題に反対する一方で、この全体像を頭に入れておく必要があります。だから核兵器廃絶と戦争停止にむけ、これまで以上に国際的な協力が重要です。
 
 

核時代平和基金 会長
デイビッド・クリーガー
1月11日付Eメール(抄訳)
・・・
 ブッシュの核態勢は3つの柱からなっています。第一:不活性化された核兵器は、解体されず貯蔵される。第二:不活性化された核兵器は、強力で精密な通常兵器で置き換えられること。第三:ならず者国家やテロリストによる攻撃からアメリカを守るという口実で、ミサイル防衛を配備する。

 貯蔵核の削減は計画されていますが、ブッシュ政権は、不活性化された弾頭の一部(おそらくはほとんど)を貯蔵し、将来の使用を可能にすることにより、柔軟性のある対応能力の維持をねらっています。このやり方の問題は、ロシアに、ロシアもアメリカと同じ道を進むこと、また不活性化核弾頭を貯蔵核として維持することを奨励することです。つまり、約束されている削減は、まったく軍縮ではなくなるということです。このやり方は、核弾頭の解体につながりませんし、NPT条約加盟国が呼びかけたような後戻りしない削減でもありません。「削減」兵器は、いつでもどんな理由でも、ロシアやアメリカによる、後戻り可能な対象となります。端的に言うなら、ブッシュ政権は、自分の賭けに保険をかけており、単に核兵器を活動していない予備リストに置き、状況が根拠をあたえるならこれらの兵器を再び使える状態にしておいているのです。ブッシュ政権は、ロシアに対し、自分たちはロシアを信用せず、アメリカはこれ以上、検証可能諸条約で示された米ロ核兵器の不可逆的削減の道をすすむつもりはないというメッセージを送っているのです。ロシア側がアメリカのやり方を真似る可能性がありますし、不活性化した核兵器を予備として貯蔵することも考えられます。そうなれば、テロリストの手に渡る可能性があります。ロシアは核兵器削減を永続かつ後戻りできないものとしたいと望んでいるため、ロシアにとってこれは非常に不利なことです。

 NPRはまた、政権が決定すれば、全面的な米核実験計画の再開に必要な時間を短縮することも求めています。これも柔軟的対応のパターンに一致します。国防副長官のポール・ウォルフォウィッツによると、「世界が、危険で予測不可能な方向に変化しうることを認識し、われわれは、この10年か15年にしてきた以上、世界情勢が変化すれば、能力を再構築したり新しくつくるための、核の分野もふくむ基盤インフラストラクチャーに焦点をあてている。」

 ブッシュ政権の核態勢づくり進めているふたつめの要因は、敵の攻撃を抑止するにはいまや通常兵器が核兵器にとって代われるという考えです。ウォルフォウィッツ氏を再度引用すると「われわれは、ほとんど全面的に攻撃核戦力に置かれてきたアメリカの抑止態勢から、攻撃と同時に防衛をふくむ戦力に変換させることを考えている。この戦力には、核攻撃能力とならんで通常攻撃能力も含まれる。」貯蔵庫にある核弾頭の多く、とくに潜水艦に搭載されているものが、多大な破壊力をもつ、非常に精密な照準誘導の通常弾頭で置き換えられると予測されています。

 核態勢のみっつ目の要因は、ミサイル防衛配備計画です。ロシア、中国をはじめ多くの同盟国の反対がつづくなか、ブッシュ大統領は、1972年のABM条約違反となる弾道ミサイル防衛の配備を進める意図をあきらかにしてきました。・・・
ブッシュ政権は、ABM条約からの撤退と弾道ミサイル防衛配備により、アメリカはより安全になると主張してきましたが、これは、非常にまゆづばものの提案です。それどころか、ロシアを不安にさせます。この不安が、NPRが不活性化核弾頭を保管して維持すると強調していることがら倍増するのはまちがいありません。弾道ミサイル防衛を配備すれば、中国は、アメリカの標的数を増やして自国の核抑止戦力を増強するでしょう。中国の核兵器増強は、アジアでの新たな核軍拡競争も誘発するかもしれません。

・・・新核態勢では、配備されている核兵器の数は減らされますが、それらを短期間の通告で再度使用できるよう棚に保管しておくのです。ある国にとその国民をせん滅するに十分な核兵器も維持されます。自然資源保護評議会(NaturalResources Defense Council)が最近、コンピューターによる推定をおこなった結果、ロシア一国の消滅には51発の核兵器が必要で、中国は人口が多いので368発必要ということでした。反対に、アメリカを消滅には124発、アメリカをふくむNATO諸国の破壊には300発の核弾頭が必要という結果も示されています。

 この核態勢見直しは、アメリカの政策決定者たちが、核兵器がわたしたちを消滅しうるものであることには変わりがないという事実の前でも、核兵器がわれわれをより安全にするといまだ考えていることを教えてくれます。柔軟性を維持したいという願いの実体は、40年にわたる軍備管理に終止符を打つことです。弾道ミサイル防衛の推進とは、アメリカ国民の税金で軍需産業が潤うことを保証することであり、非常に現実的なテロリストの脅威にたいする防衛に使うべきお金を使ってしまうことを意味します。
・・・
 

社会的責任のための医師の会(Physicians for Social Responsibility)
2002年1月8日

新兵器、実験再開に向けお膳立てをしたブッシュの核兵器計画
核戦力の変更は、戦争遂行兵器への移行を示し、国家安全保障と国民の健康を危険にさらす

 今日、ドナルド・ラムズフェルド国防長官は、長く待たれていた核態勢見直し(NPR)を議会に提出するが、これをもって長官は危険な一歩を踏み出すことになる。ブッシュ政権核計画の原型は、ブッシュ大統領が2001年5月1日国防大学でおこなった発言で示されていたものであるが、この計画は、アメリカの貯蔵核を戦争遂行戦力へと能率化させるものであり、10年にわたる核兵器実験一時停止(モラトリアム)を放棄するものである。

 NPRはまた、ブッシュ大統領とロシアのウラジーミル・プーチン大統領による主脳会談で話し合われたように、戦略核兵器レベルを、現在の約6000発から1700?2000発まで削減することを提起している。

 社会的責任のための医師の会のマーチン・ブッチャー氏は、「これらの削減は歓迎できるが、ロシアの破壊にむけた主要な戦争計画はまだ維持されている」と述べている。「アメリカの戦略的核戦力を支える一番の理由に、対テロ戦争をたたかう一同盟国の破壊が入っているとは奇怪である」。
5月、ブッシュ大統領は、いわゆる「柔軟な」兵器を開発する必要について話をした。今週、機密である核体制見直しについて流された情報を見ると、この「柔軟な兵器」というのが、とくに化学および細菌兵器に対抗するための、地域紛争での使用を目的とする実戦用「小型核」製造の暗号であることが確認できる。この危険な核瀬戸際政策は、全面戦争という現実に恐ろしい焦点を持ち込むものである。

 この点は、NPRに全面的に反映されており、漏れ出た発言によると、NPRは新型核兵器の開発を要求している。その他の情報によると、ラムズフェルド国防長官は議会に対し、アフガニスタンでの使用成果がおもわしくなかったとの理由から、新しい掩蔽(えんぺい)壕破壊兵器開発の承認を求めるようである。このほど国防総省が出した「堅固かつ深く埋められた標的の破壊にかんする議会への報告」では、この任務を遂行するための新しい核兵器開発が求められていた。今度のNPRでは、この点が確認されたようである。
社会的責任のための医師の会理事長ロバート・K・ミュシル博士は、「ブッシュ政権が打ち出した核態勢見直しの政策により、これまではおもに抑止機能として構想されていた核兵器が、実戦を意図した戦力へと造り直される」と述べている。「小型核の剣とミサイル防衛の盾は、地球の安全を危険なほど不安定にさせる要因となる」。
さらにひどいのは、ブッシュ政権が、ネバダ核実験場での核兵器実験爆発再開を要求するであろうということだ。1992年、父親のブッシュ大統領が全面的な地下核実験爆発の停止を決定して以来、モラトリアムは維持されてきた。すべてのNATO同盟国が包括的核実験禁止条約に署名しているいま、新型核兵器開発のため実験を再開させるどんな動きも、国際関係に大きな緊張を招きかねない。

 ブッチャー氏は、「ブッシュ政権はABM条約から撤退し、生物兵器禁止条約の作業を混乱させた。こんどは、CTBTを消失させ、NPTに決定的なダメージを与えようとしている」と述べた。「核兵器の拡散を阻止する根本的役割を果たしてきたNPTは、核実験を終わらせるというアメリカの約束を条件に、1995年に更新されたばかりである。どうやらブッシュ政権は、この非常に重要な条約を殺して、ロスアラモスなどの核兵器開発者を喜ばせるだけのためにアメリカの安全保障に痛烈な打撃を加えるつもりである。」
 
 

世界政策研究所(World Policy Institute)
2002年1月17日
ミシェル・シアロッカ

核態勢見直しからの推論
 

 この一年半、ジョージ・W・ブッシュは、アメリカの安全保障政策を冷戦時代の範例から脱け出させることの必要性を説いてきた。ブッシュはとくに、アメリカの倉庫にある核兵器の数を「アメリカの国家安全保障と矛盾しない最低限数まで」減らす、これらの兵器を一触即発の警戒態勢から解除すると繰り返し述べてきた。11月半ば、ブッシュは、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と会った際もこの点に繰り返し触れており、「私たちは、弾頭数を特定レベルまでさげるために、削減し破棄することを議論している」と述べた。
議会の委任によりおこなわれ、先週発表された核態勢見直し(NPR)は、ブッシュ大統領とその仲間がまさにこの点を実行に移すチャンスであった。NPRは、冷戦後の世界におけるアメリカの核戦略定式化にむけた枠組みを提供するものとされている。これは、クリントン政権が、1994年におこなった核見直しでやり残した課題である。

 しかし、カール・レヴィン上院議員により「延期された決定だらけ」と説明された、4年毎の防衛見直し(QDR)と同様、NPRにはあいまいな表現の方がおおい。

 J・Dクラウチ国防次官は、2002年1月9日(水)、同日議会に渡された機密見直し報告の一部を強調するために、報道関係者むけに特別説明会を開いた。この新しいアプローチでアメリカの核戦略はどう変わるのであろう。端的に言うと、NPRの提案により、アメリカは、米ソの対峙が頂点にあった時より、安全保障上の危険な環境へと突き動かされかねない。

 昨年予測されていたように、ブッシュ政権の核見直しでは、先に全国公共政策研究所(NIPP)が発表した報告の内容が繰り返されている。NIPP報告は、キース・ペイン博士監修によるものだが、この人物は、自分の評判をもっぱら1980年代の共著「勝利は可能だ」という核戦争の論説に帰している人である。ブッシュの国家安全保障会議(NSC)のメンバーであるロバート・ジョセフとスティーブン・ハドレーもNIPP研究にたずさわっている。またドナルド・ラムズフェルドの非公式な助言者で思想上の心の友であるウィリアム・シュネイダーもNIPP研究に加わっている。(BillHurtung氏の「ブッシュの核政策:MADからNUTSか?”Bush’s Nuclear Doctrine:From MAD to NUTS?”」http://www.fpif.org/commentary/0012nuclear_body.html参照。)

 全体として、NIPP報告は、今後のアメリカにたいする安全保障上の脅威を、未知で予測不可能とみなしている。よって、同報告は、アメリカは自国の核兵器を維持する能力、ならびに新型核兵器を設計し、製造し、実験する能力を維持しなければならないと結論づけている。また、通常兵器が完全に核兵器に取って代わることはできず、それは、通常兵器には核兵器のような「破壊力」がないからだとしている。その解決策として、報告は、「低出力・精密誘導核兵器」、つまり、アメリカが実際に使える核兵器の開発を奨励している。
驚くことでもないが、NIPP委員たちは、軍備管理のための諸条約に不賛成で、その理由は、「こんにちのアメリカの政策決定者が、2010年、2020年は言うまでもなく、2005年の戦略的環境を知ることなどできない。核の大幅削減を可能にする状況が今後もつづくと期待する根拠はない。」

 核態勢見直しでNIPP報告の所見が一語一句繰り返されているわけではないが、似通った部分はたくさんある。見直しは、「明るい」側面として、アメリカの作戦上配備核兵器数を6000から減らして1700から2200の間にすることを薦めている。しかし、「削減と破棄」は必ずしも同じことを意味しないかもしれない。解体されることになる弾頭の数と、現役貯蔵核の一部となる弾頭の数は公表されていない。この食い違いは、即座にロシアからの批判を招いたし、10年にわたり立ち往生してきた核削減をさらに遅らせる危険がある。
ブッシュ政権はまたも、協定に基づく軍備管理に対する不快感を示した。クラウチ国防次官は、「われわれは、冷戦時代に締結された軍備管理に関する条約〔の発効〕を待たないでも、削減を達成できるように努力している」と述べた。しかし、ウィリアム・ハートゥング氏が指摘するように「提案されている米ロ戦力の削減は、10年越しの実行が予定されているもので、信頼するには長すぎる期間だ。正式な協定がないのだから、政治的に好ましくない状況になった時、どちらも簡単に手を切ることができる。」

 ロシア外務省のスポークスマン、アレキサンダー・ヤコヴェノフ氏は、簡潔な声明のなかで、「核兵器のさらなる削減にかんする米ロ諸協定は、第一に急進的、つまり1500から2200発の間までの削減、第二に検証可能、第三に後戻り不可能とすることで戦略的防衛兵器が単に「文書上」の削減に終わらないようにしなくてはならないというのがわれわれの考えである」と述べた。

 NPRはさらに、アメリカの戦略的部隊を冷戦時代の三元戦略核戦力(ICBM、爆撃機、潜水艦発射弾道ミサイル)から、非核および核攻撃能力もふくむ戦力からなる三元戦略核戦略に転換することを提案している。核兵器への依存がより少なく、通常兵器への依存度を大きくした戦力構成はどんなものでも、正しい方向への一歩となるべきであるが、ブッシュ政権が依存度を高めようと構想しているのは、核拡散を触発しかねない、費用がかかり、証明されていないミサイル防衛システムである。

 「見直し」は、そのものずばり、アメリカには新しい核兵器が必要だとは言っていないものの、クラウチ次官は、「われわれは、数ある構想を考察しようとしている。そのひとつは、いまある兵器を改良し、それらに、強固な標的と深く埋められた標的を攻撃するより高い能力をつけることである」と述べている。明らかに、新しい兵器とは実験再開を意味する。しかし、クラウチ次官は、「ひとつ指摘しておきたい。核実験に関して現時点では政権の政策に変更はない。われわれは、CTBTにはひきつづき反対する」と警告している。

 この点は、昨年11月、ブッシュ政権が、CTBTへの支持を促進するための国連会議をボイコットしたことで、明らかとなった。軍備管理協会のダリル・キンバル氏は、アメリカの会議不参加が「ブッシュ政権の軍備管理政策の品質証明となってきた単独行動主義不誓約のパターンと一致する」と注目している。
 
 クラウチ次官は、「NPRから出てきたことのひとつは、大量破壊兵器問題については、単一の解決策はないということだ思う。これは軍事面だけにかぎった問題ではない。これは外交問題でもある。国家権力のほかの分野も巻き込むことになる問題でもある」と述べた。しかし、全体として、ブッシュ政権は、大量破壊兵器問題にたいしては、政治ではなく軍事的に対応してきたではないか。

 核態勢見直しは、単独行動主義者アメリカに核政策の地図をあたえた。「見直し」は、核不拡散条約第6条のもとアメリカがおこなった、自国核兵器の削減にむけ具体的な措置をとるという誓約についてまったく言及していない。アメリカと186の国々は、核軍縮にかんする全世界的な合意に達し、それが「核兵器の使用または使用の脅威にたいする唯一の絶対的保障」であると宣言したのである。アメリカは、この目標に向け、道に先鞭をつけなくてはならない。



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