淡き‥‥
2011.04.01 by:koba
地震が続いている。本棚を固定しようとして一冊の本に目が留まった。意識は40年以上前に飛ぶ。
発車間際の電車に駆け込んだ。通勤時間帯を過ぎた始発電車にあの人が本を開いて座っていた。勢いよく飛び込んだ音に視線を上げ ” あら ” と小さな声を上げ微笑んだ。私もおはようと言い隣に座った。
あの人はほんの少し腰をずらして本を閉じた。私は表紙を見て ” あら ” とあの人の真似をした。
作者は高名な歌人を父に持つ人で、私はあふれるユーモアに魅せられ乱読した。あの人が閉じた本も読んでいた。この人もやさしくてユーモアのある物語が好きなのかなと思った。私はただ嬉しかった。心がほこほこしていた。
もう一度この本を読んでみよう。太陽が射し込み本棚を照らした。本棚の固定は出来なかった。