「春」
春になると、誰も彼もが一層幸せに見えて、誰も彼もが嫌いになる。 次の瞬間、そんな自分のことが、一番嫌いになる。
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春とは名ばかりの小雪まじりの日曜の午後、馬の背中で、今年初めての鶯の声を聞いた。 若き日、歓声の渦巻く中、輝く芝を駆け抜けた競走馬は、今は、不確かな扶助に戸惑いながら毎日毎日乗馬クラブの柵の中を廻る。雪片を留める、艶やかな馬体に寄り添うと、優しい温かさが私の体に伝わり、生きることの切なさに涙ぐむ。