「時間」
3月に入った。
1年前に時間を戻すことが出来るなら!
震災前にまで、時間を巻き戻せるのなら!
1年前の今日、笑ったり、泣いたり、怒ったりして、生きていた人たちを、
春近く動き出す大地を踏みしめ、柔らかくなり始めた日差しを浴びながら、この世に確かに生きていた2万人近い人たちを、失うことはないのに。
時間を引き戻せることなら!
そんな切なる願いを、人は、幾度、抱くだろう。
失ったものを、失った愛を、あるいは失った命を、あの時に帰って取り戻したいと。
私も何度そう願ったことだろう。時間をひき戻し、あの悪夢のような偶然の歯車を少しずらせられれば、私はあの子を喪うことはないのだ。
しかし、そう願う私を包みこんで、時は流れていく。
残酷にも静かに、時は流れ続ける。
あの子と暮らした日々はどんどんと遠くなっていく。
同時に、あの子のいる世界に旅立てる日には、近づいているのだけれど。
どんな悲しみも辛さも、優しく癒してくれるもの。
それもまた時なのだけど。