フタバ園本店HPへの投稿
「娘と花と」
 私がそうやって育ったように、一人娘も物心がつかないうちから花を育てるのを手伝って
くれました。小さなベランダや玄関を飾るプランターでの園芸でしたが、球根や種、土を選び、
最初は砂遊びの延長から始まり、保育園の年長さんになった今年は自分で花を咲かせる喜びも
わかってきたようです。自分の育てた花には名前までつけて毎朝登園の前にしゃがんで話し掛
けていました。
  子どもにとって、植えた球根や種が花を咲かせるまでは気の遠くなるような長い日々だった
ようですが、楽しみに育てていました。
  2002年の春は娘の植えたチューリップやムスカリ、ヒアシンスが見事に家の周りを彩り、そ
の前で娘は思い切り自慢そうに写真におさまっていました。
  そして、一緒に植えたマリーゴールドとサフィニアが咲く7月、娘は突然に天国に召された
のです。5歳11ヶ月。花の好きだったあの子の周りは花で埋めつくされ、旅立ちました。
 あれから4ヶ月。また春咲きの球根がお店に並ぶ季節になりました。「ピンクと白を交互にし
ようかな」とプランターにしゃがんで球根を植えていた楽しそうな小さな背中が思い出され涙
であふれます。家の周りもすっかり花が途絶え寂しくなりました。ただ、娘の仏壇に花を飾り
ながら帰り来ぬ、幸せだった日々を語らっています。
  5月の母の日、娘が夫と選んで贈ってくれたブーゲンビレアが盛りを過ぎながらも私を励ます
ように小さな花をまだ咲かせてくれているのが娘の心のように思えます。