「ありがとう」

綾夏は本当に天使だったんだよ。

綾夏は自分が納得できないと思うことにしか怒らなかった。自分の利益が損なわれることに対して怒ることはなかった。

綾夏は人を妬まなかった。うらやましいときは「いいなー」と心から声に出して言うことができた。

綾夏は人を憎んだことがなかった。人の言動がおかしいと思うと真っ赤になって、負ける相手でも攻撃した。

綾夏にはきらいな人がいなかった。大好きな人をたくさんたくさん挙げることができた。綾夏は家族と、保育園のお友達と、あと少しの人たちが人生で出会ったすべてだった。なのに、綾夏が「好き」と言えた人は、その何倍も生きてるママよりもずっと多い。綾夏から「○○、大好き」という言葉はいっぱい聞いたけれど「△△嫌い」とは聞いたことがなかった。

ママは何度も何度も綾夏に「大好き」と言われ、「ありがとう」と言われた。ママは負けないくらいたくさん、綾夏に「大好き」と言ったけど、「ありがとう」って言葉をもっと言えばよかった。ママの子に生まれてきてくれてありがとう、ママと過ごしてくれたすべての時間にありがとう。そして、今もママのそばにいてくれてありがとう。

綾夏みたいに純真な天使の心にママも近づけるようにならないとね。綾夏のようにきれいな心になって、綾夏のもとに行けること、それが残されたママの人生の目標だから。そのときには、どうかママをあの笑顔で迎えてね。

今日もようやく一日が終わり、また綾夏に会える日がひとつ近づいた。綾ちゃん、今日もありがとう。