「7月を迎えて」
梅雨に入るころから、努めて気付かない振りをして、この7月をやり過ごそうとしたけれど、6月も後半に入ると心は乱れ、自分でも予期していなかったほどに動揺した。この2年の間、この受け入れがたい現実と、自らがこの世に今日も生きねばならない宿命とを何とか受容しようとしてきたのに、その努力は何の意味もなかったのかと思うくらいに、気持ちは2002年7月に逆戻りした。体を貫く衝撃と「絶対に納得できない」という思い、無念、そういった荒々しい感情に支配されていた。場所と時をわきまえず涙が流れ、胸は悲しみと憤りで締め付けられるように痛み、朝日の流れ込む布団の中で今日も目覚めたことを呪った。暑くて汗が流れ落ちていたと思ったら、急に寒気がして鳥肌が立った。
7月2日が過ぎて、4日に3回忌を済ませた。17日には綾夏の8回目の誕生日を迎える。
粗供養を買いに街に出ると、祇園祭の鉾が立ち始めている。お囃子のテープにも、街の喧騒にも、バーゲンの呼び込みにも、別の世界の出来事を見ているような距離を感じる。私は見えないガラスの壁に囲まれて生きている。ガラスの内側は深い悲しみに満ちている。ガラス越しに見えるものは、私の体や心に直接触れるということがないが、なぜか悲しみの感情を呼び起こすものだけはこのガラスをすり抜ける。かつて私の心を浮き立たせたすべてのことに、今は何の興味もない。世の中に対するこの疎外感は何だろう。足を踏みしめようとしても、確かな大地の感触すら感じない。