「異界の住人 2

世の中には、2種類の人がいる。

子供を喪った人と、そうでない人。

 

2002年7月2日。朝、遠足に出かけて行った娘が、その日の夜には、亡骸になって寝室に横たわった。風邪をひかないように、寒くないようにと、大事に大事に育ててきた娘の柔らかい長い髪に、あぁ、ドライアイスで霜がついていた。私はそんな経験をしたのだ。

私はあの時に確実に死んだ。私の信じてきたもの、私の守ってきたものは根底から壊れた。

 

月日が、激痛を和らげることがあったとしても、私の中で壊れたものが直ることはない。

 

子供を喪うとはそういうことだ。

 

 カフェでお茶を飲みながら談笑しつつ、明日を無条件に信じる友人たちの健康さがまぶしくて、思わず目をそらした。同じ空間で息をしながら、私は、まったく異なった世界に生きている。

 

目に入った街路樹の根元に柔らかい芽を出した雑草の、まっすぐな命に救われる思いがする。自分の運命に疑問を抱かず、生きることの意味を問わず、明日を思い惑わず、ただ、生きればそれでいいのに、まだそんなことができないでいる。