「年賀状」


 娘を亡くしたときから、年賀状を書くのをやめた。親でもなく、兄弟でもなく、私は一人娘を亡くしたのだ。私の喪は一生明けないのだ。私はどうして、「おめでとう」などと年賀状を送ることができようか。

 そうして9年半。
昔の友達とも、親戚とも、ほとんどの行き来は無くなった。

 昨日、結婚して以来、手紙やハガキを入れていた引き出しが満杯になったので、思い切って整理しようとした。そこから溢れ出てきたのは、私が捨て去った夥しい数の人たちと私との、懐かしくも温かな関わりだった。

 娘を亡くした日、私は一度死んだ。だから、それまでの人間関係を絶ったことを後悔はしない。

 しかし、今はなんとなくわかる気がする。

 人は、新年が嬉しくめでたいから、「おめでとう」と言うのではない。生きていくことは辛く、多くの悲しみと別れの連続だ。だからこそ、新しい年に切なる願いを込めて、人は、「おめでとう」を言うのではないかと。