「2012年の新聞より」
年末に雨の中を歩き回ったせいか、大晦日から体調を崩している。
ずっと寝ているのも体が痛くてつらいので、起きてきて、日ごろストックしていた新聞
記事の箱を整理している。
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昨年の秋以降の読売新聞の記事より。
○9月24日
「娘」といふ言葉聞くたび胸痛し一人ぽっちの亡き子の母は
読売歌壇 高槻市 正木悦子氏
○10月18日
(妻を亡くし精神を病んだ気象エッセイスト倉島厚氏が妻の死後15年を経て)
もう残りの人生には何もないと思っていたのに、生きていくうちに、また新しい生き方
や出会いがある。生き残っていればそれなりの新しい人生が展開するんです。
(略)
どんな人も、人生の冬に向かっている。それに備えてその日その日を一生懸命過ごせ
ば、心は安らかでいられる。じきに訪れる厳しい季節をいたずらに恐れるより、今を生
き、今を味わう。
○10月25日
(松本サリン事件で妻を亡くして、自らも疑惑をかけられた河野義行さんのインタビュ
ー)
―実行犯を恨む気持ちはないのですか。「人は様々なリスクを抱え、それによって命を
落とすことがあります。命のことは自分ではどうにもならない。だからこそ、生きてい
る今を大事にしたいと思います。それは私にとって『楽しく生きる』ことです。人を恨
んでいる場合ではないのです」
○11月4日
(良寛の紹介において)
災難に逢時節には災難に逢がよく候。 死ぬ時節には死ぬがよく候
「世の中には天災のように人間の力ではどうにもならぬことがある。それが『無常の現
実』。人は黙って受け入れるしかない」「良寛はまさにそのことを言っている。哀しい
のは仕方ないが、まず現実を受け止めよ。その上で、なお前向きに生きていく時に初め
て悲しみを乗り越える力が出てくる、というのです」
「仏教の根幹はこだわりを捨てること。万物は変化する。財産や名誉はもちろん、最後
は命に対するこだわりも捨てなければならない」
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多くの人は、「生老病死」を辿りつつ、生きていく。
その道程はたいていの場合には辛いことだ。
私たちは往々にして「あなたに私の辛さがわかるはずがない」と言う。
しかし、それぞれの抱える辛さの種類は違うものの、さりとて不幸にそんなに種類があ
るわけでもない。病に苦しむことも、愛する人との死別も、自分にとってはこのうえな
い不幸ではあるが、世間一般では平凡な苦しみでしかない。
私は、娘を亡くして、「他の誰にも私の悲しみはわからない」と心を閉ざし、交友関
係を絶った。しかし、人は誰しもそれぞれの苦しみを抱えて生きていることにこの頃や
っと気づいた。私の苦しみはあなたにわからない。あなたの苦しみは私にはわからない。
私の苦しみこそが最大の苦しみだと思うのは傲慢だ。人と不幸比べをしても仕方ない。
人の苦しみの軽減に自分が役にたてれば、自分の苦しみも少し軽減する。
「人間を構成している成分は約1年で90%入れ替わる。人間は川のように移り変わる。
本当の自分など存在しない」(養老孟司氏)という。
そうだとすれば私の1年後の肉体は今日の私とはほとんど違う成分からできているこ
とになる。しかしそこに宿る精神は、変化に尻込みしがちだ。変化を恐れず、執着せず、
苦しみを不安で実際以上に大きくとらえないで、2013年を生きたい。