ランカウイの朝は遅い。7時になってようやく明るくなったThe DATAIのビラのバルコニーで早朝の熱帯雨林のひんやりと湿った空気を吸いこむ。無数の生命のエネルギーをひっそりと包み込んでいる様々な緑の重なり合い。ゆっくり雲が動き、まもなく照りつける日差しの予感。高く澄んだ鳥と虫の声。
 845分。急に強い日の光が木々の葉を輝かせ、その葉脈を浮かび上がらせる。それを待っていたかのように、虫達の声が変わった。高い虫の声から、ジージーという蝉のにぎやかなうなりに取って代わる。時間の移り変わりに連れてジャングルの音は変化する。夜は驚くほど大きな声で蛙やゲッコー(ヤモリの一種)達が鳴く。

 自然の中では、生と死とが対極のものではなく隣り合っているものだという気がする。地に落ちた植物や動物の生命がそのまま土にエネルギーを移し、また若芽となって萌え出てくる。メビウスの環のように生と死が繋がっているようなイメージ。
 木の実をついばむ小鳥や、小さな魚が、鷹に捉えられ大空高く舞い上がるのを見た。小さなものは大きなものに捉えられるが、TVで見ると時には残酷とも思えることが、ここではそう思えない。小さなものは、大きなものに飲み込まれ、一体となり、より大きく、より強く、より高く飛べる力を得るのだ。大きな鷹もいつか力尽きて地に落ちる。まだ生命の尽きないうちにその体には虫が集まるだろう。魚が冷たい筋肉を震わせながら己が咽喉を滑り落ちていく夢、王者としての声をあげながら大空を舞った夢を見ながら、鷹はまた安らかに大きな命の環の中に還るのだ。
 私の普段住む世界では、生と死は隔絶し、死は無を意味し、人は死から目をそらして生きようとしている。そういう世界では私は生き難い。

 THE DATAIのエントランスの中央の池には蓮の花が咲く。日中は蕾を閉じ、夕方から朝にかけてピンク色の花を開く。そしてこの池は様々な種類の蛙たちの楽園。小指の爪ほどもない小さな蛙が蓮の葉っぱ模様のよう。
 図書室で本を借りて来て、ここのプールサイドに寝そべってはだらだらと過ごした至福のとき。子供お断りなので心静かに過ごせる。暑くなれば一泳ぎしてから、冷えたビール・・・
 向かいの建物はメインダイニング。朝食のビュッフェ(フレッシュジュースやチーズの種類が豊富な上、冷えたシャンパンがさりげなく!)や夜のちょっと豪華なディナーもここで。夜はこのプールサイドには星がこぼれれ落ちてきそう。
 このプールサイドに寝そべっている私の心を乱したもの。それはこのパラソルの後ろにある大きな実のなる木に集まる動物達!初日は親子の猿。次に大きな黒いリス。そして鮮やかな鳥達。シャッターチャンスを狙ってデジカメを構え続けるもなかなかうまく捉えられない。
 室内は広々として重厚な木のインテリアで統一されている。バルコニーもクローゼットも洗面スペースも2つ。アワアワお風呂でご機嫌。シャワールームは別。