カヤックツアーに参加。参加者は10名。日本人スタッフのタカさんは知識も豊富で頼もしい。最初に漕ぎ方を習ってマングローブ茂る川を進む。エンジン音がないので、動物達を間近で見ることができる。途中、洞窟(閉所恐怖症の私は四つ這いで真っ暗な中に入るのはかなり怖かった)に入ってこうもりを見たり、カヤック上でお茶と揚げ菓子を食べたりも。夕刻には救命胴衣を着けて川に飛び込み、仰向けに浮かんで空を見た。この川に住む動物になった気持ち。

マングローブは海水域に育つ木の総称らしい。7割の海水を根で濾過し、残りの3割を葉に貯めて、塩分の溜まった葉を黄色化させて落とすことで排出するという。根の断面は濾過装置として細かい毛で覆われていた。ただし、人が小舟で川を通り、自然ではない波を寄せるだけでもはやマングローブの「原生林」とは呼べなくなり、背丈も小さくなってしまうという。「木には心があるというから、切られないよう大きくならないのかな」とタカさん。続けてドリアンの話をしてくれた。「ドリアンはとても固いから、たまに、落ちてきたドリアンの実で人間が怪我することがあるんですよ。そしたら、そのドリアンは悪いと思うんでしょうね。もう、実をつけなくなるんだって、こっちの人は言いますよ」

マングローブは胎生種子といって、芽から根が一本になって、母木を離れてまっすぐ落ちるらしい。当然、柔らかな泥にまっすぐ突き刺さるが、母木の根元は十分な日の光に恵まれず、生育することは難しい。しかし、たまにマングローブはまっすぐでなく、一定カーブした胎生種子を作り、それを落下させるらしい。その種子はしばらく川の流れに乗って流れてから、日の当たる泥に根をおろし育っていく。
 この日、カヤックを漕ぎながらシオマネキ(カニ)、かわせみ、カニクイザル、イーグルにも遭遇。イルカに出会えることもあるらしい。

夕食は養殖場で地元のおばさんの手料理。スタッフの一人が、横で明かりを目指してやってくるイカを網ですくってくれ、炭火で焼いてそれもおかずの一品。何たる贅沢。ビールやデザートの果物もたっぷり。どれもとても美味しい。

養殖場には、アジやエイ、カブトガニがいる。エイやカブトガニを触らせてもらった。カブトガニは食べたら、ドリアンと同じで、お酒に酔ったようになるらしい。そんなものでは酔いたくないな。
  帰途、舟で満点の星を見る。舟の明かりを消すと辺りは真の暗闇。さそり座が大きく横たわる。星座盤を見るように小さな星々まできらめいている。天球を天の川が横切る。白い帯はなるほど、ミルキーウェイ。綾、すごいね!いつものように綾夏に話し掛ける。
 舟から手を伸ばして水を叩いてみるように言われてやってみると、なんと、水がきらきらと光の粉のように輝くのだ。夜光プランクトンらしい。川は目に見えない命に満ちている。