「僕とあたしの未来 13」 カフェの前を通ったら、カウンターで頬づえをついて、ぼーっと外を眺めてる 田村くんを見かけた。 トントンと窓ガラスをたたいてみたら、ようやくあたしに気づいたみたい。 お店に入ると、「やぁ」と田村くんが手をあげた。 「となり、いい?」とたずねると、「どーぞ」と答える田村くん。 「どーしたの?ぼーっとして何考えてたの?」 「うん・・・・・」 「なぁに?誰かさんのコトでも考えてたとか?」 「誰かさんって誰だよ?」 「さぁ・・?」 「ゼミのレポートのこと考えると、アタマ痛くってさ・・・」 田村くんは自分の頭をこつんと叩いた。 なーんだ、レポートのこと考えてたのか。 あたしはてっきり、好きな人のことでも考えてたのかと思ってたよ。 「君、何書く予定?」と訊かれて、あたしは回答に困った。 「えぇと・・・・・あたしもまだ考えてない」 「そっかぁ、あのゼミの先生、点数キビシイもんなぁ。どーしよ・・・」 あたしは田村くんに、ちょびっとだけウソをついた。 毎日毎日ずーーーーっと考え続けてる。 確かにレポートのことは考えてない。だって頭の中は、田村くんのことで いっぱいだから。 レポートにするなら何枚だって書ける、「田村くんの魅力についての考察」。 「ところで・・・何もたのまないの?さっきからレジカウンターの人、こっち 見てんだけど」 「・・・忘れてた・・・・・・・・」 あたしはおさいふを持って、あわててレジに行った。 田村くんのとなりにいられるだけでよくって、ドリンクなんかどうでもよかったけど、 もう少しとなりにいたいから、あたしはホットココアをたのんだ。 「やっぱ僕もそれにすりゃよかったかなぁ?」 と、あたしのホットココアを覗きこんでる。 「飲む?」と、あたしは勇気を出して言ってみた。 「あ、じゃあ一口ちょーだい」と、田村くんがぁっ、あたしのココアをすすった。 「ほぇ〜、和むぅ〜☆代わりにコレ飲む?冷めちゃってるけど」 と、口を拭きながら、自分のカフェモカのカップを差し出した。 え?コレ?!あたしがぁっ?!?!そんな・・・ムリ・・・・・とか思いつつ、 「じゃ、あたしも一口だけ」と言って、田村くんのカフェモカをごくごくっと飲んだ。 「一口だけって言ったのに、飲みすぎじゃね?」 「ごめん・・・・・」 「ジョーダンだよ(笑)」 あー、ダメだ。あたしはこの笑顔に何度やられたことだろう? 「あーもー頭イタイ・・・」と、あたしはテーブルにつっぷした。 「だろ?レポート、頭イタイよなぁ」 考えてるコトが全っ然っ違うケド。 「しょーがねぇ。図書館でも行ってくっかな」 田村くんがダッフルコートをはおった。 「待って!あたしも行く!!」 あたしはココアを一気に飲んだ。あっつー!!(>_<) 「ココアのチョビヒゲついてんぞ?」と、あたしの顔を覗きこむ田村くん。 ぎゃーーーーーーーーーっそんな接近しないでぇぇぇ・・・・・。 きれい好きな田村くんは、すかさずティッシュを取り出し、あたしの口元をささっと 拭き取った。 ぎょえぇぇぇーーーーーーーーーっ!!「ほら、取れたよ」とか言ってる場合じゃ ないでしょー?! 固。 「ダメだよ、一応女子なんだから。ねぇ、チョビヒゲちゃん」 「はい・・・」 「あれ、急におとなしくなっちゃった。一応女子ってコトバ、気にさわった? それともチョビヒゲちゃんっていうネーミングがヤだった?」 ぶんぶんぶんとあたしは首を振った。 なんで君は気づかない?気づいてないフリしてるだけなの? 今までの君の言動に、あたふたしてるあたしを見て、楽しんでるの? 「とりあえず図書館いこ」と、お店を出て歩き出した。 あたしはちょこちょこと、田村くんの後をついてゆく。 「あのさぁ・・・」と振り返りながら、田村くんが言った。 「後ろ歩くんじゃなくて、となり歩いてくれないかな」 ムンクの叫びのような顔になりそう・・・!! 「その方が話しやすいじゃん」 「あ、そっか、そうだよねー」 そう、それだけだよねー。(-_-;) 「その方が顔も見えるじゃん」 「そうだよね・・・・・・・・・・」 って?? 微妙なコトバと距離感に戸惑う。 「ありゃ、晴れてんのに雨?降ってきたー」 「あたし傘持ってるよ」 あたしはバッグから折りたたみ傘を取り出して開いた。 「だいじょぶだいじょぶ、こんくらいの雨なら。どうせ天気雨だし」 「濡れちゃうってば」 ひとりで行こうとする田村くんのダッフルコートの袖を、あたしは思わず 引っ張った。 田村くんは振り返ってあたしを見た。 「やっぱせっかくだから、入れてもらっちゃお♪」 さっきより近づいた田村くんとあたしの距離。 これ以上距離が縮まることは、もしかしたら永遠にないのかもしれない。 けど、このままその横顔を、時々あたしを見るその顔を、今はとなりで 見ていられるだけでいい。 どうか雨が続きますように。せめて図書館まで。 「そのダッフル、あったかそうだね」 「うん、超いい感じよ?おすすめ☆あ、そうだ、今度一緒に見に行く?」 「え・・・」 「傘のお礼もあるしさ」 「・・・うん・・・・」 たぶんあたしには買えない値段だと思う。(-_-;) だけど、さっきより確実に距離が縮まった気がする。それだけでいい。 雨はもう上がっていた。田村くんは気づいてるのかいないのかわからないまま、 あたしの傘に入って歩いていた。 うぅん、神経の細やかな田村くんが気づいてないわけがない。 だって・・・ちょこっとできた水たまりには、雨粒の水玉模様じゃなく、 田村くんの瞳のようにきれいな青空が映っていたから。 「よし、せぇので越えよう!」 「うん」 せぇの!!二人でぴょんと飛ぶ瞬間、田村くんの手があたしの肩を やさしく包んだ。 あたしのさした傘も、あたしの肩を包む田村くんの手も、ずっとそのままの状態で 図書館に着いた。 頑張れ、あたし。「希望が見えた」ぞ?(*^_^*) 図書館のドアは、希望への入り口かもしれない。 OPBGM : aiko 「愛の病」 そして、BGMにするのも申し訳ないけど・・・ EDBGM : 櫻井翔様 「このままもっと」 勝手にすぺしゃるさんくす : ダッフル翔様(>▽<) |