「僕とあたしの未来 22」 あたしの今日のシフトは朝一から。 店長の朝礼が歯切れ悪くて、思わず出そうになるあくびをガマンするのに必死だ。 寝不足でメイクのノリもイマイチ。 先日、仕事仲間が切ってくれたヘアスタイルは前髪大失敗で、年中前髪押さえ気味な あたし。 「だいじょぶ、だいじょぶ、かわいい」って、切ってくれたあいばくんは言うけど、 あんたが切りすぎたんでしょーがぁ?!(怒) どうせならまつもとくんに切ってもらうんだった・・・。 あの子なら、失敗してもオシャレにフォローできるだろうし、ちょっと寝ぼけた おおの店長よりは、切ってもらい甲斐があるかも? 美容室「ARASHI」ただ今開店です。 今日のお客様第1号は・・・・・来た!来ちゃった!!1ヶ月ぶり? あたしは若干緊張気味に「いらっしゃいませ」とあいさつする。 「さくらい様、今日はどのように?」 「あ、軽くカットとカラーリングをお願いします」と、メンバーズカードを差し出す。 「はい。ご希望の担当者は?」 「あー・・・店長以外で」 ぶっと吹き出しそうになるのをこらえながら、「お荷物お預かりいたします」 あたしは何気ない顔をする。 「おはようございます。今日は僕が担当させていただきます」と、にのさんが笑顔で 応対してる。 「今日はどんな感じで?」 「軽くカットとカラーリングを」 「お色味は・・・どのようにしましょうか?」 「うーーーーん、前回とおんなじくらいかなぁ?」 「わかりました。この辺、ちょっと軽くして流しちゃいます?」 「そうですね、春ですからねぇ、イメチェンで?(笑)よろしくお願いします♪ にのさん」 「はいっ!」 あーあ、いいなぁ、にのさん。さくらい様の髪、長時間さわれて。 あたしも早くシャンプー卒業して、カットできるようになりたーーーーーーいっ!! 「じゃ、シャンプー台の方へ・・・」 にのさんは、さくらい様を案内して、あたしに合図する。 「失礼しまーす。イス倒れまーす」 いや、あたしの方が倒れそうなんだけど? 「お首の方、大丈夫ですか?」 「はい」 「じゃ、流しまーす」 あぁ、久しぶりにさわらせてもらうサラフワな髪。 「お湯加減は・・・大丈夫ですか?」 「はい」 あぁ、誰にもジャマされず、堂々とさわれるこの瞬間・・・。(@_@;) 「シャンプーしていきまーす」 「はい」 あぁ、地肌まで愛しい・・・。(倒) 「あの・・・・・」 さくらい様が自分から声を発した! 「はい?」 「もすこし強くやってもらえます?」 「はい!」 あたしは若干強めに指先を動かす。緊張のあまり、思わず力が入ってしまうあたし。 「あ・・・ちょっと強すぎ・・・・・」 「申し訳ありません・・・!!」 あぁ、どうしてダメなの?すんなりできないの?カットへの道が遠ざかってゆく。 「洗い足りないところはございますか?」 「いえ、大丈夫です」 「じゃ、流しまーす」 お湯加減はちゃんと確認したつもりなのに、あたしの指先がマヒしてるのか、 「ちょっと熱い・・・気が?」と言われてしまった!! 「申し訳ありません」と謝りっぱなしのあたし、情けない。(T_T) 「お首、失礼しまーす」と、うなじに手が触れる。 うなじ。おおの店長のコボちゃんのようなうなじも、シャリシャリと気持ちよさそう だけど(^_^;)、やっぱりうなじ。愛しいえりあし。 飲んでないのにほろ酔い気分。 「流し足りないところはございますか?」 「あ・・・首の後ろが・・・なんとなく」 え?うなじリターンズ?! そんなぁ、困りますぅーーーーーーーー!!(≧▽≦) 丁寧に、入念に、それはそれは愛しく、首の後ろを撫でつつ、流させてもらう。 「あ、もう大丈夫ですケド?」 「すみません・・・・・」 どこまでもやりすぎなあたし。(>_<) 「お疲れさまでした」と、さくらい様のかしこそうな頭にタオルを巻きながら、 あたしは言う。 「お疲れっしたぁーーーーーーー!!!」と、元気のいいあいばくんの声が飛ぶ。 あぁ、さくらい様、タオル姿もなんて美しい・・・。 あたしのそばを離れて、にのさんの元へと帰ってゆくさくらい様。 次にお会いできるのは・・・カラーリングの後ね。(T_T) すると、にのさん「先にカラーリングやっちゃいますね」と、一言・・・。 そしてあたしを呼んで、「○番と△番で・・・」と、カラーリングの指示をっ!!?! たなぼたっ!!o(>▽<)o 幸せ気分満喫で、○番と△番をまぜまぜし、チャーミングな耳にカバーをかけ、 「失礼しまーす。カラーリングしていきまーす」と、麗しの髪にぬりぬりする。 「どこかしみたりするところはございませんか?」とたずねると、 「大丈夫です」と、目をつぶってお答えになるさくらい様。 そのつぶらな瞳がパッと開き、鏡の中で目と目が合ってしまった! 見つめてるのバレバレ?!?! 「髪さわられてると、つい眠くなっちゃうんですよね」 突然話し出すさくらい様。 「そうですよね・・・・・お仕事お忙しいんですか?」 何気なくきいてみた。 「ここのところまたちょっと忙しくて・・・寝不足気味です」 「でも、目なんて充血もなさってなくって、とってもおきれいですよね?」 つい本心を吐露してしまった! 「そうですか?」と笑う。 いやっ(@_@;)笑っちゃダメ!!(>_<) 「沖縄、あったかいって言っても、やっぱり常夏なわけじゃないから、寒いんですよね」 「沖縄行かれたんですか?」 「仕事でちょっと・・・。でも油断してたーーー。薄着しすぎたぁ!」 「そういえばさくらい様、けっこう薄着ですよね?Vネックとか襟元開いてるし」 「よく見てますね?」と言われ、ハッと我に返る。 墓穴・・・・・・・・!!!!! 「そ、そりゃ・・・お得意様ですからぁーーーーーっ」と、あわててフォローしたつもり。(-_-;) カラーリングという名の、二人だけの幸福な時間。(時々にのさんが確認にくるけど) どうかこのまま上手く染まらないでいて? いや、あたしが櫻色に染まりた・・・・・・・・(自粛)。 「しばらくこのままお待ちください。雑誌お取りかえしましょうか?」 「じゃ、お願いします」 松潤が表紙のメンズファッション誌を手渡した瞬間、さくらい様の手のひらのあたたかさに 触れてしまい、あたしの体中に電気が走る。 ただの静電気なのに、うれしい。(T_T) 「申し訳ありません。あたし帯電しちゃってて・・・」 「いえいえ。この時期パチパチしますよね」 このまま何度もスパークしたいっ!! 雑誌のページを静かにめくるお姿も、「ふーん」とうなずく時の少しとんがった口も、 何もかもがあたしの心をとらえて離さない。 あぁ、あたしがカメレオンだったら、こうやって床の上の髪を掃除する時も、 あなた様のお姿が見えるのに?! にのさんが染まり具合をチェックしてる。ちょうどいいかな?って顔で、あたしに目配せする。 「じゃ、流しますんで、シャンプー台の方へ」 「はい」 シャンプータイム再び☆ 「失礼しまーす」と、あたしがイスを倒し始めた時、さくらい様があたしの顔を見て 話し始めた。 「髪、切りました?」 ハッとあたしは前髪を押さえて、「そ、そうなんです・・・」。 「なんかかわいらしくなりましたよね?いや、前がかわいくなかったとか、そういう ことじゃないんですけど(笑)」 「いえ、かわいくないです」ひたすら前髪を押さえる。 「それ、僕が切ったんすよ☆」と、あいばくんが口をはさんできた!! 「そうなんだ?あいばくんが切ったの?」 「なかなかキュートでしょ?(^_^)b」 「うんうん、なかなかいい感じ、だよね?(^_^)v」 さくらい様があたしの方を向いて話を振っても、あたしはもはやシャンプーどころでは なくなっている。(@_@;) 「じゃ・・・流しま・・・す・・・・・」 「そっかぁ、あいばくんに切ってもらったんだぁ・・・」 さくらい様、もうそれはよろしいんじゃなくて?? 「ところで・・・あのおおの店長のコボちゃんみたいな髪は、誰が切ったんですか?」 ぶっ(笑)。さくらい様、それはきかないでくださいます? 「あれは・・・どなたが切ったんでしょうね・・・?あたしにはわかんないんですけど」 シャンプーしながら、どうにか答えた。 「もしかして自分で切った・・・とか?」 「それだと、カリアゲくんのとこが、ちょっとむずかしいんじゃ・・・?」 「だよねぇ?」 さくらい様とあたしは、ちらっとおおの店長の方を見た。 視線を感じたのか、おおの店長は「なに見てんだよ?」風な顔をして、こっちを見た。 あわてて視線を戻す、さくらい様とあたし。 「だめだ・・・笑っちゃいけないと思えば思うほど、笑いが止まんねぇ・・・!!」 「・・・・(抑えながら笑)←必死なあたし」 あぁ、なんて幸福な時間再び。できるなら何度でも洗っていたい。 この店からシャンプーもリンスもトリートメントもなくなって、お湯も止まって、 あぁどうしましょう?ってことが起こっても、あたしはどうにかシャンプー求めて買いに行くから、 お湯もどうにか沸かすから、 そのままずっとここにいて、あたしを待っててね? って、バカなことまで考えてしまう。 終わらないでいてほしいシャンプーが終わってしまい、去ってゆくさくらい様。 あたしはこちらへどうぞと案内して、そのおひざにひざかけをかけることくらいしか できない。 「じゃ、乾かしまーす」と、にのさんがドライヤーを当て始める。 さらさらと風になびく髪。ドライヤーの風になって、さくらい様のおでこに体当たり したい!!o(>_<)o ある程度乾いた後、「ちょっとお待ちくださいね」と言って、にのさんが離れた。 続いてまつもとくんによるマッサージタイム。なはずなんだけど・・・ 「ごめん!ちょっとこっち作業入っちゃったから、代わりにやってきてくれる?」と まつもとくんに指示された!! たなぼたふたたびっ!!\(◎o◎)/ 「失礼します・・・軽くマッサージしていきますね」 だいじょうぶだいじょうぶと自分に言い聞かせ、あたしはさくらい様の肩に手を置く。 さくらい様はなぜか淋しげな顔をして話し出す。 「すみません・・・おそろしくなで肩で・・・」 「そんなぁ!!なで肩だろうがいかり肩だろうが、あたしは好きですっ」 げっ!あたし今なんつった?????!!!!! 「ありがとうございます・・・」 「あ、愛らしい肩、っていうことです、よ??」 どんなフォローになってんだか、自分でもわからない。 「肩、そんなに凝ってらっしゃいませんよね?」 「まぁ、時々運動してますから」 「だから筋肉質なんですね?」 「あれ?誰かから聞きました?ご存知なんですね」 「あ・・・聞きました!!誰かから!!」 「ただ、目が疲れると、首が痛くなりますねー」 「ここ、ですか?」 「うぁー!!効くぅーーーーーーっ!!」 「痛かったですか?すみません・・・」 「いえ、もうちょっとぐいっと!!」 「はい・・・」 「うぉーーーーーーーーーっ!!!!!きっもちいぃーーーーーーーっ!!!!!」 店内にさくらい様の絶叫が響き渡り、奇妙な空気が流れる。 あいばくんがまっさきに(まさきだけに?(^_^;))こっちを見て、作業中のまつもとくんが わざわざ振り返って、こっちを向いている。 カーラーを巻いてるにのさんが振り向き、おおの店長は・・・黙々とカットしている。 「あ。」と、ふと気づいたさくらい様は、「しーーーーーっ!」というポーズをした。 あたしも一緒になって「しーーーーーっ!」と返した。 最後に愛しい頭皮マッサージをして、「はい、お疲れさまでした」と手を離すあたし。 すっきり&ちょっと眠そうな顔をして、前を向いてすわってるさくらい様。 「おまたせしました」と、にのさんが戻ってきた。 「軽くカットしていきますね」 「お願いします」 にのさんの神業級なはさみづかいで、素敵なさくらい様の髪がさらに素敵になっていく。 軽くワックスで整えて、髪の毛に動きを出し、美しいさくらい様が完成した。 「お疲れさまでした!」 「お疲れっしたぁーーーーーー!!」あいばくんの声はズバ抜けている。 「お荷物こちらですね」と、あたしはバッグを渡す。 言われるまでもなく、さくらい様のダッフルをハンガーからはずし、袖を通せるように 後ろに回る。 あぁ、さくらい様にダッフルを着せてるあたし、幸せ・・・・・。 おおの店長がレジのとこにやってきた。 「お会計失礼しまぁす。カットとカラーリングと、いつものトリートメントで・・・ 5万円になります」 「え?!ごまんえんっ?!」まあるい目をさらにまあるくして驚くさくらい様。 「あ、価格設定変わったんすよ。前はトリートメントが五千円のとこ、一気に値段 上がっちゃったんですよねー。さくらい様、ご存知なかった・・・ですか?」 「え??ごまんえん?!?!・・・・・あの・・ちょっと・・・・・」呆然としている。 「ぶぶっ!!ジョーダンすよ!!1万2千円です。5万円、んなわけねーだろ?!」 おおの店長は、にやにやとうれしそうに言った。 「ちょっと・・・心臓に悪いですよ?!店長っ!!」 さくらい様が不満そうに言うと、「店長ー!!」とあいばくん、まつもとくん、にのさんも 一斉に不服そうな声を発した。 あたしは・・・「店長、時々こういうこと言うんです。申し訳ありません」と、 さくらい様に謝った。 「いえ。まぁ、慣れてるっちゃ慣れてますから」と、さくらい様は笑いながら言った。 「でも、ごまんえんってのは画期的ですけどね?」 「ですよね?(苦笑)」 「ありがとうございましたー!!」と、おおの店長、あいばくん、まつもとくん、にのさん、 そしてあたし、そろって頭を下げて送り出す。 美容室「ARASHI」は、今日も商売繁盛☆彡 勝手にすぺしゃるさんくす : 櫻井様!!(>▽<)ゞ |