「僕とあたしの未来 23 〜My First Valentine's Day〜」



あたしは真夜中の台所でひとり奮闘していた。

「ねーちゃん、こんな夜中に何やってんの?」
トイレに起きたらしいまさきが、ドアを開けて入ってきた。
「何でもない・・・」
あたしは体いっぱい使って、テーブルの上の事態を隠そうとした。

「丸見えなんだけど?」
半笑いのまま、まさきは続けた。
「もしかしてソレ、チョコ?」
「そうだけど?」
「ねーちゃんの手作り?やべぇ、明日、てか今日、雪だ」

つか、もうとっくに降っちゃったし。(=_=)

あたしの人生初。手作りチョコ for Valentine's Day。

「ソレ、食わされるしょーちゃん、気の毒だな・・・」
「じゃ、あんたの分ナシね?」
「あ、オレも食う!すみませんでしたぁ、ごめんなさーい、お姉様」
「よし!」
「それにしてもすんげー散らかりようだな〜(-_-;)。しょーちゃんに
 『片付けろ』って言われそー。しかも初めて作ってんのに、なんで
 何種類も作ってんだよ?ハードル上げすぎじゃね?」
「これは・・・失敗した時のために・・・」
「でも、そこそこできてんじゃん?なになに・・・しょーちゃん、だい・・・?」
「読むなぁっ!!(>_<)」
「ぶっ!!(笑)やっぱわっかりやすぅ〜〜〜♪」
「こっちは?I らぶ・・・・・?アハハッ(爆)」
「だから読むなっつの!」
「これ・・・どうやって渡すの?」
「どうにかラッピングして・・・」
「あ!そうそう、じゃーーーーーん♪例によってパーティ作戦!呼んじゃえば?」
「月一じゃん・・・(=_=;)」
「ねーちゃんとしょーちゃん、どーなってるわけ?先月『おめでとうございます♪』って
 コトになったんじゃん?フツー月一じゃないでしょー?」
「・・・・・」
「え、まだ全然レンラク取ってないとか?」
「・・・・・」
「ねーちゃん、バカ?」
「あんたに言われたくない」
「しょーがねーなぁ。あ?しょうがねぇ?翔がねぇんだ??アハハ」
「ひとりで言ってろ(=_=)」
「まぁまぁ(^_^;)、オレが電話してあげよっか?」
「・・・うぅ・・・・・まさき・・・お願い・・・」

まさきはしょーちゃんに電話をかけてる。
あたしは横でひたすら汗をかいてる。

「あ、もしもし?しょーちゃん?ねーちゃんが話があるって」

ホラ、と、あたしにケータイを渡すまさき。

「もしもし・・・」
「はい」
「あのぅ・・・」
「はい?」

うわっもう、じれってぇ!と、まさきがケータイをひったくった。

「もしもーし、かわりましたー。あのさ、もうさぁ、いつものコトなんだケド、
 2月14日って空いてる?うん?そ、火曜日。え?アレ?そっかぁ、午後一緒に
 予定あったっけぇ?じゃ、ソレ終わってからでいいや!オレと一緒にウチ帰って
 くれるかな?いいともー?はいはい。じゃ、またねー。あ、ちょっと待って。
 ねーちゃんにかわる」

ほい!と、再びあたしにケータイを渡すまさき。

「あとは二人でテキトーに話しちゃってぇ」と、言いながら手を振って、階段を
 上っていく。
待ってぇ、まさきーーーーーーーーーー!(>_<)

おそるおそる話し出すあたし。

「もしもし・・・」
「はい☆お招きありがとうございます♪」
「いえ・・・」
「バレンタインですね」
「そうですね」
「今日は天気いいですね」
「そうですね」
「こないだもイチメン見ました?」
「そうですね」
「髪切った?」
「タモさんかっ?!」

思わずツッコミを入れたとこで、しょーちゃんがアハハと笑った。
少し緊張がほぐれて、歯車のように会話がかみ合い、回り出す。
なぜかしょーちゃんの1年先輩のサトシくんのことで、やたら会話が盛り上がる。(^_^;)
しょーちゃんとサトシくん。サトシくんとしょーちゃん。
会ったことないのに、なぜかサトシくんに親近感が湧くのは、やっぱりしょーちゃんが
好きだからだろうか?

「あれ?まだしゃべってんの?」
まさきが下りてきた。
「そろそろ切んないと、かーちゃんに怒られるよ?電話代いくらかかると思ってんの?!って」
「あ、ごめん・・・しょーちゃん、またね。うんうん、はーーーーーい♪」

プツッとケータイを切って、まさきに渡すあたし。

あぁ、夢のような火曜日があたしを待ってる。


火曜日の夜、あたしはいつもの如く、家の中をウロウロしていた。
まだ?もうすぐ?いや、もう?やだ、どうする?と、ブツブツ独り言を言いながら。
「ちょっとあんた、みっともないわよ?」と、お母さんに言われつつ。

一応チョコは全部、ラッピングしてみた。なんで3種類も作ったんだろう?
まさきに言われた「ベタすぎる」メッセージ、やっぱしやめといた方がよかったかなぁ?

「ただいま〜〜〜」とまさきが帰ってきた!
まさきの後ろにちょこんとしょーちゃんがいて、「おじゃまします」って言った。
「おかえり・・・いらっしゃい・・・」
あたしは小さな声で答えて、スリッパをそろえる。

「あ、コートかけとくから」
「すみません」

あたしが何気なくしょーちゃんのコートを肩からはずすと、
「いやー、見せつけてくれちゃってぇーーーー!見てるこっちの方が恥ずっっっ(^_^;)」
まさきがデカい声で言った。
「もー、ねーちゃん、おかえりなさーーいって言っちゃえば?ごはんにする?
 おフロにする?それとも・・・・・」
「うるさいっ!(ーー;)」

ダンクシュートをキメようとするまさきを、あたしは寸前のとこでカットした。
ホントはこのボール、しょーちゃんのゴールにロングシュートしたいのに。

「あ、そだ、あれどこ行ったかな?」
まさきが突然わけわかんないこと言い出して、リビングから出て行った。
うぉぉーーーーいっ!!まさきーっっっ!!(T_T)

「サトシくん、元気?」
トチ狂ったあたしは、思わず口走った。
「うん、元気」
「そっか、よかった」
会話、続かない・・・。(=_=)

「あの・・・ね」
今度はしょーちゃんがしゃべり出した。
「はい・・・」
「今日はお招きありがと・・・」
「あ!そうだった!!」
あたしはやっと思い出して、冷蔵庫に取りに行った、渾身の作を。
しょーちゃんが背後でガクッとなった気配がした。

「これと・・これと・・・これ・・・」
あたしはしょーちゃんの目を見れずに、手渡した。
「えぇ?みっつも??」
「うん・・・失敗したら困ると思って3個作ったら、なんかできあがっちゃった(^_^;)」
「すっげー♪ありがと☆開けてもいい?てか見えてるけど(^^ゞ」

ぎゃぁぁぁ・・・あたしってばなんでこんなの作っちゃってんだろ?!(ToT)

「おぉ・・・(*^_^*)」と漏らしたしょーちゃんの一言に、
ぎょえーーーーーーっ!!\(゜ロ\)(/ロ゜)/

「あと1個だけど・・・」
「う・・・」
あたしは言葉につまる。
開けてはいけないパンドラの箱のようなそのふたを、しょーちゃんが開ける。

「うっわ、ストレート!!」
カンペキにしょーちゃんがひいてるんじゃないかって、ものすごく心配になる。
「ありがと〜☆」って言いながら、半泣きになってるあたしの頭を、なぜか
しょーちゃんがなでた!!(T_T)
涙ほろり・・・。

あたしはいったい今までどこ歩いてきたんだろう?って、わかんなくなるくらい
世界の果てまで行って、好きだーーーーーーーーーーーっ!!て叫びたい。
帰り道がわかんなくなっても、たぶんきっと、どんなことがあってもたどり着くんだろうな、
しょーちゃんとこに・・・。

なんて、頭ん中レベルでじゅーぶん照れるようなこと考えてたら、しょーちゃんがそっと
あたしの方に、右手の小指を立てながら差し出した。

「ゆびきりげんまん」
「うん・・?」
「これからもずっと・・・一緒にいよ?一緒に歩こ?一緒に走ろ?」
「うん!」
「ゆびきりげんまん、うそついたら・・・」
「うそついたら・・・?」
「腕立て腹筋50回ずつ!」
「それ、しょーちゃん有利じゃない!?」
「女性はちょっとハンデで、腕立て腹筋30回ずつ♪」
「またぁ!」

二人で笑った後、急にマジメな顔になったしょーちゃんが、テーブルにおいたあたしの
手の上に、自分の手を重ねた。
あたしはおちゃらけて、重ねられた手を引き抜いて、しょーちゃんの手の上に置く、
つもりだった。
そしたら、しょーちゃんがあたしの手をぎゅっとにぎった。

こ、これは・・・?!

すると、「やっぱねーわ、あれ」とか言いながら、まさきが戻ってきた。
このタイミング、いいんだか悪いんだか?(-_-;)

「あれれ?もしかしてオレ・・・なんかまずいとこ来ちゃった??(^^ゞ
 てか、来なかったらどーなっちゃってたのかなぁ?(*^_^*)」
「まさき、またよけいなことを・・・(=_=)」
「ほら、まさき、このチョコ1個だけあげるから、外で遊んでおいで」
「ちょっと!しょーちゃん!!ガキじゃないんだからさぁ?!あ、でもチョコもらう」
「それはしょーちゃんにあげたチョコだよ?!あんたのはあっち」
あたしは冷蔵庫を指さした。

「えー、オレ、自分で出すのー?」
ぶーぶー文句をたれながらも、冷蔵庫を開けて、チョコの箱を取り出してる。

「じゃーん♪え?なんだこれ?」
「それ、余ったチョコで作ったの」
「オレのチョコ、しょーちゃんの余りぃーーーーーっ?!」
「もらえるだけありがたいでしょ?さ、ティータイムにしましょ♪」

「さー、せっかくバレンタインパーティだから、お約束のお写真を・・・」
まさきがカメラを取り出した。
「あ、ねーちゃん、しょーちゃんの口にチョコあーんして?」
「またぁ?!」あたしはブーイング。
「そんくらいあったりめーだろ?てか、しょーちゃんさっき何しようとしてた?」
「いや、別に・・・」しょーちゃんの目が泳ぐ。
「ほら!とにかくあーーーーーーんして?」

カシャッ☆彡

またも、恥ずかしいけど大切な写真が1枚増えた。

「じゃ、僕も。はい、あーーーーーん」
自分からチョコを取り出し、あたしの口元に持ってきた。
「お?しょーちゃんもやるじゃーーーん?」
まさきがにやにやしてる。
「ほらほらほら、ねーちゃんもあーーーーーーん」
あたしのあげたハートのチョコを一粒、しょーちゃんがあたしの口に。
「はい、行きますよ〜?」

カシャッ☆彡

実は昼間、想いに押しつぶされそうになって泣いた。
ちょっぴり苦しくて、よけいないろんなこと考えて、涙が止まらなくなった。
松潤ティシューでやさしくふいて、目薬さして、目が赤くなるのをどうにか止めた。
考えると秒速で泣けてしまう・・・。ここまで想うなんて、自分自身予想してなかった。
なんてこと、とても口にできない。
口にしたら、もしかしたら距離は縮まるのかもしれないけど、とても言えない。
きっとまた泣く。

今はただ、君の笑顔が見れていられれば、それだけでいい。

「今度はホワイトデーかぁ」まさきが言い出した。
「またパーティすんの?!」
「あ、ごめん、まさき。今度はちょっと・・・」
「なに?予定入ってんの?」
「今度は・・・二人で過ごしたいんだけど?」
「あ、あぁ!ごっめん、ぜんっぜんっ気ィきかなくて・・・。ねーちゃん、どーするぅ?
 二人だけだって!ひゅうううううぅ〜〜〜♪」
「・・・・・・・・・・・・」

あー、あたしはこのまま一生、ドキドキが止まらなくて、苦しい胸押さえて生きていくのかな・・・?
何度も何度も泣くのかなぁ?
でも、一歩一歩歩いていたら、必ず前に進むよね。振り返らないで進んでいけばいいんだ。
その先に、しょーちゃんが手を広げて待っててくれるだけでいい。
もしかしたらそれすらも、ゼイタクなことなのかもしれないけど。

窓を開けてみた。予報では雪とか言ってたけど降ってない。
しょーちゃんがやってきて、あたしの後ろに立った。
あたしの肩に、しょーちゃんのあったかい手がそぉっと置かれた。
こういう幸せな時間が、少しでも長く続きますように・・・・・。
またお参りに行ってこよう。








勝手にBGM : 「Love so sweet」


勝手にすぺしゃるさんくす : 櫻井翔様m(_ _)m、相葉雅紀様m(_ _)m