「僕とあたしの未来 29 〜僕の毛布 2〜」 もう慣れっこになってしまったけど、今日も帰りが遅い。 今夜は年度末の飲み会だって言ってたっけ。 これまたいつもの如く、静かに「ただいま・・・」と帰ってきた。 「おかえりなさい」と玄関で出迎える。 このところ多忙すぎなせいか、頬がやたらほっそりしてきたあなた。 特に今夜は、やけにげっそりしてるような?(-_-;) なでてる肩がよけいなでて見えるのは気のせい? 「あれ?ここ、なんか黒いのついてるよ?」 あたしはあなたのほっぺたを見ながら言った。 「うそ?!まだついてた?よく落としたつもりなんだけど・・・」 「飲み会でなんかやったの?(^_^;)」 「うん・・・罰ゲームでね・・・はねつきみたいに、失敗すると顔に墨で ×描かれるやつ」 「それはそれは・・・お疲れさまです・・・m(_ _)m」 「あー、なんかまだ墨臭い気がするー(=_=)」 「ちょっと待ってて」 あたしはウェットティッシュタイプのクレンジングで、あなたの頬を拭いた。 「大丈夫、落ちたみたいよ?」 「ありがと・・・」 「サラリーマンもたいへんだね」 「うん。宇宙じゃなくてもたいへんだ」 冷蔵庫から思わずオロナミンを2本取り出して、「はい!」と1本手渡す。 「あたしも飲むね」 「じゃ、ご一緒に」 あなたとあたしは腰に手を当て、一緒にごくごく飲んだ。 「効くぅー!」と、あなたはテンション上げ気味に言った後、 「腸内吸収速度さいこー、脳内麻薬分泌しそー」と、つぶやいた。 時々、リズム&テンポのいい韻を踏むクセ、じゃなくて、趣味全開になるあなた。 でもそんな時いつもあなたは楽しそうなので、それを見ているあたしはとてもうれしい。 「そうそう、練習はかどってる?」 あなたはあたしに訊いてきた。 「町内会の出し物のダンスのこと?」 「うん、頑張ってるんでしょ?」 「なんとなくカタチにはなってるんだけど、鏡に映して見ると、なんかキマってない感じで、 気が重くなってきた・・・」 「ちょっとやってみて?」 「・・うん・・・」 あたしはあなたの前で、できるだけカッコよく見えるように踊った。 「いいじゃない」とあなたは言うけど、あたしはカンペキには満足していない。 「じゃ、ここをこうさ・・・」 あなたはあたしの腰に手を持ってきて、左右に動かす。 「ここで腰をこう振る。手はできるだけまっすぐ伸ばす。腕を動かす時は、腕だけじゃなくて、 肩からこう入れる。足さばきも手の動きも、大げさなくらい大きく振りをする。 言えるとしたらこんくらいかな?」 「それが全部できてたら苦労しないんだけど・・・?」 「だよね(^_^;)」 一緒に「ハハハハ」と笑いながら、さっきあなたが手を当てて、あたしの腰を振った時の 感触を思い出して、ちょっと恥ずかしくなる。 「POPなダンスもいいけど、こんなのもどう?」 そう言ってあなたは、あたしの腰を引き寄せて、手を握り、華麗なステップを踏み始めた。 「えぇ?社交ダンス?」 「奥様、1曲踊っていただけますか?」 「あたし踊ったことない」 「大丈夫。僕も踊ったことない(^_^;)」 わからないながらも、あなたのステップにあたしも合わせて踊る。 猫の額ほどのリビングが、ダンスフロアと化す。 ワルツなの?タンゴなの?ジャンルがもうグチャグチャなんだけど、あなたと手を合わせて、 足もそろえて踊ってると、ものすごく楽しくて幸せで。 最後にあなたがあたしの腰を支えて、あたしが思いっきりそっくり返って、手をまっすぐ伸ばして、 ふたりでポーズをキメた。 「奥様、ありがとうございました」 あなたが手を胸にそえて挨拶すると、「こちらこそ」と、あたしは足をちょこんとついて、 スカートのすそを持ったつもりになって(デニムはいてるんだけど(^_^;))、挨拶を返した。 言い終わったとたん、また一緒に「ハハハハハ!!」と笑った。 どこかで一致するあなたとあたしの感覚。ひとつひとつが宝物のよう。 「なんか踊ったら、逆に疲れが取れた(^^ゞ」 「そう?よかった。オロナミン効果もあるんじゃない?」 「そうかもね。明日も頑張るぞー」 「頑張ってね!」 あんまりムリしないでね?と言いそうになったけど、ムリもしちゃう人だから、 ムリをムリって感じないでやってのけちゃう人だから。そういうとこも尊敬してる。 あなたを見習って、あたしも頑張ろう! 「じゃ、風呂入ってくる。先に寝てて」 「うぅん、待ってる」 あたしにしては、ずいぶんかわいいこと言った。(^_^;) 「じゃ、待ってる間、レッスンしてて?」 「了解!」 あたしは「了解」ポーズのまま、あなたを見送った。 あれ?ついこの間、こんなポーズをしてた誰かを見た気がするんだけど、誰だったかな?(^_^;) 勝手にすぺしゃるさんくす : 多忙な櫻井さま☆ 墨でまっくろになったお顔も素敵です♪(*^_^*) |