「僕とあたしの未来 3 〜君まで45歩〜」



ヤバイ、まだこんなに残ってる・・・。

ここはイルミネーション輝く大通りに面していて、クリスマスとあって人通りも
いつもの倍はある。

どこかのカッコつけた男が、オープンカーをぶっとばして行った。
見てるだけで寒い・・・っ!!!!!

なのに、この寒空の下、サンタのカッコしてケーキを売り始めて3時間半。(=_=)
なかなか売れないもんだなぁ。
こんなに寒いバイト、やんなきゃよかったかも・・・。(=_=)

隣に立って一緒に売ってるけいこちゃんも、ミニスカサンタの衣装から出た足を
交互に踏みしめ、頑張ってる。

あーあ、と腰に手を当て、アキレス腱伸ばしをしてみたり、首をポキポキ
鳴らしたりして、どうにか寒さをしのいでいた。
「なんかオヤジくさ」とかけいこちゃんに言われつつ。(-_-;)

ふと横を見ると、ここからどれくらい離れてるだろう、ひとりの女の子が
イチョウの木を見上げながらたたずむ姿が目に入った。

僕の視力は裸眼で0.3。今日はメガネをかけてるから、なんとか顔の判別は
ついた。
あれは・・・隣のクラスの・・・僕がちょっと気になってる君。

すると次の瞬間、君の瞳からきらりとひとすじの涙がこぼれるのが、
なぜか僕には見えてしまった。

「ちょっとどこ行くのよ?」と言うけいこちゃんの声を背後に聴きつつ、
「悪い!」と言いながら、僕は走り出していた。

サンタのカッコをした僕は、君の前に立った。

「フォッフォッフォ・・・何を見上げているんだね?君」
サンタになりきった僕は、いきなり話し始めた。自分でもなんでそんなに
すらすら言葉が出てきたのかわからない。

ほんの少し怪訝な顔をした後、やっと君は口を開いた。
「星。流れ星でも見れないかなって思って。でも見えないや。
 イルミネーションがまぶしすぎて」

「流れ星に何を願うんだね?」
「届かない想い、かな」
「あきらめちゃいかんぞ。願いはいつかきっとどこかで叶う」
「さすがサンタね。夢のある言葉」
「わしはサンタじゃからのぅ。みんなに夢を届けるのが使命じゃ」
「じゃ、サンタさん、お願いしていい?」
「何だね?」
「ほんの少しでいいから、希望をください」
「希望だね」

目を閉じて、僕は君の両肩をぽんっと叩いた。

「本来、希望は誰の心にもあるもんなんじゃよ、ふだんはそれを
 忘れているだけじゃ。今、わしの手によって、君の希望は
 心の中で蘇ったぞよ」
「ありがとう・・・ところでサンタさん、自分の希望は叶ったの?」
「ほ?」
「ケーキ、売れてるの?」
「まぁ、わし自身も苦戦しておるが・・・」
「じゃ、頑張ってね!サンタさん!!バイバイ!!」
「おおっ、また来年のぅ!!」

君は一度だけ振り返った後、歩き出した。
僕も、一歩二歩三歩と、店先までの道を戻った。

「なーにやってんのよ?」とけいこちゃんにどやされた。
「ごめん、ちょっとね」と、ずり下がりそうになるメガネを押さえながら
僕は答えた。

君が立っていた場所から店先までの歩数を数えてみたら、君まで45歩。
僕自身の願いも叶うといいなぁ。
君までの距離が、あと40歩くらい縮まりますように。

そしてサンタとしての僕の願い、ケーキが1個でも多く売れますように・・・。(^_^;)

Joyeux Noёl!!






勝手にすぺしゃるさんくす : サンタ姿の影山さん、「謎ディ」原作者の東川さん