「僕とあたしの未来 33 ちょいオトナ編」



オフィスでさくさく仕事をこなす君。
こないだあんな雰囲気になったってのに、顔色ひとつ変えない。

「櫻井さん、資料できあがりました」
そう言って、俺のデスクに書類を置いていく。
「あ、ありがとう」
俺の方が顔赤くなってる。

それを目ざとく見つける相葉が、クルクルクルッとキャスターを回しながら
イスにすわったまま近寄ってくる。

「ねぇねぇ、しょーちゃん、なんかあった?」
「何が?」
「とぼけんなよ?彼女となんかあった?っつってんの!」
「別に・・・」
「んなこと言っちゃってぇ!顔に書いてあるよ?なんかありました、って」
「ウソ?!」
「そうやってすーぐバレちゃうんだから。もーしょーちゃんてば!!」

やだなーって顔しながら、しつこく俺に訊いてくる相葉。

「で?なにがあったの?」
「・・・・・・・」
「まさか・・・」
「・・・・・・・」
「答えない、ってことは、世界の果てまであきれるほど君と?・・・っつーこと?!」
「おまえなぁ!?んなわけねーだろ?!」
「違うの?じゃ、なによ??」
「あのさぁ、そういうことはもっとオブラートに包んで言えや?!」
「オブラートってなに?」
「・・・もういいわ・・・」

あの日の君、いつもとかなり雰囲気違ってた・・・。
オフィスで、髪たばねて仕事こなす君の姿からは、想像つかないくらい。

あー、もう昼だぁ・・・腹減ったー。
うーーーーーんと伸びをすると、君が俺の方にやってきた。

「櫻井さん」
「なに?」
「一緒にごはん食べません?」
「え?君お弁当じゃないの?」
「実は・・・二人分作ってきたんです・・・」
「ホント?」
「お天気もいいし、お外でご一緒しません?」

ふっとあの日の君が蘇る。その目・・・。(@_@;)

「うん・・・一緒に食べよっか・・・」
「あ、もしかしてご迷惑・・・?」
「いやいや、そんな・・・」
「もしかしてこの前のこと・・・」
「いや、あれは酒の席だし・・・」
「お酒の席だと、櫻井さんもちょっと雰囲気変わるんですね☆」
「ごめん、あんまり覚えてなくて・・・(-_-;)」

確かに酒の席で、俺はちょっと悪酔いして、トイレに行った。
君は心配して俺について来てくれたようなのだが、ふとした拍子に、あろうことか俺は
君に抱きついた(らしい(-_-;))。

相葉に見られてなかった分だけ、幸いだったかもしれない。

その後が・・・ほとんどかすかな記憶しかないんだけど、俺を抱きとめて支えた君が
俺のほっぺたにCHU☆したらしいのだ。

「ほとんど覚えていないんですね・・・ちょっと残念だなぁ・・・」
君のその言動、やっぱ小悪魔。

「はい、これ櫻井さんの分のお弁当。あたしあっちで食べますから」
「え?一緒に食べるんじゃないの?」
「そんな急接近しちゃってもいいんですか?」
「別に俺は・・・」
「だめですよ☆」

そんなバーモントカレー甘口みたいな(かなり甘いって意味(^_^;))声出すなぁっ!(T_T)

「やっぱ、おとなしく一人で食べる」
「ね?」

君は笑って、自分のデスクに戻った。

お弁当の包みを開けると・・・ごはんの上には、きれいな炒り卵の黄色、そして型抜き
されたハムの櫻花が咲いていた。
はしっこに若干遠慮がちに、海苔で描かれた「スキ」の文字・・・。(@_@;)

おおっ・・・もしかして、いや、もしかしなくても、君の頭の中は俺のことでいっぱい?????
君の脳内メーカーには、俺の名前がぎゅうぎゅうに詰め込まれてるのか?!

にへら〜と笑いそうになるのを堪えて、崩すのもったいないけど、俺は一口食った。
あぁ、なんか懐かしい味がする。この炒り卵、昔おふくろが作ってくれた味に似てる。

君があっちの席で、俺に向かってにこっと笑った。
あぁ・・・その笑顔、自分で小悪魔系だって気づいてるのか気づいていないのか・・・?
俺はその小悪魔の毒気にやられている・・・。特効薬はない。(=_=)















勝手になんとなくBGM : れみだん