「僕とあたしの未来 39」



突然の轟きと激しい雨風。まるで嵐。

あたしは講義棟の入り口に立って、空を見上げてた。
すると、向こうからものすごい勢いで、田村くんが走ってきた。

「いやー、スゲーな。学生課からこっち来るのに、ちょっと外出ただけで
 傘コレだよ」
ボロボロになったビニール傘を見せながら、田村くんが言った。

「購買行きたかったんだけどなぁ・・・」
今度はあたしの傘を見ながら言った。

「もう少しおさまってから外出た方がいいんじゃない?」ってあたしが言うと、
「今すぐ行きたいんだけど・・・」って、けっこう頑固?(-_-;)
「わかった、じゃ、この傘使って・・・」
「よし!行くぞっ!!」

田村くんはあたしの肩をそっと引き寄せ、傘を開いて雨の中へ飛び出した。

あたし・・・別に購買に用ないんだけど・・・?
って、喉まで出かかった言葉を飲みこんだ。
だって傘っていえば、田村くんとあたしをつなげたラッキーアイテムだもん。
(あの時の傘は、折りたたみの傘だったけどね)

「傘、さしてても意味なかったか(^^ゞ」
「そうだね(^_^;)」
「あー、髪まで洗ったみたいに濡れちゃってる」
田村くんがあたしの髪の先をさわった。
「だいじょぶ」って答えながら、全然だいじょぶじゃないあたしがいた。

田村くんは購買であわてて買い物してた。何をそんなに買いたかったんだろ?(^_^;)
あたしが雑誌のコーナーで立ち読みしていたら、「はい」と田村くんがあたしに
ピンクの水玉のかわいいタオルを差し出した。

「ごめんね、髪・・・それでふき取れるかなぁ?」
「もしかしてわざわざ買ってくれたの?」
「あんなすごい雨風の中、走らせちゃって・・・服とかも濡れてない?」
「大丈夫。(^_^)髪もふき取れるよ」
「そっか、よかった」
「ところで・・・何買ったの?」
「え?あぁ、これ・・・」

そう言って田村くんが袋から取り出したのは、低脂肪フルーツヨーグルト。

「なんか無性に食べたくなってさー。そういうのない?」
「あるけど・・・田村くんらしいね、低カロリー&ヘルシーで」
「ごめん、すぐ食べていい?」
「いいよ」

購買の横のベンチに腰かけて、田村くんは食べ始めた。

「本当はさ、ギリシャヨーグルト食べたいんだけど、購買とかじゃ売ってなくて」
「ギリシャヨーグルト?」
「うん、一度近所のスーパーで見つけて食べたら・・・味が濃厚でクリーミーさが
 ハンパないんだよ!!」
「そうなの?なんかおいしそうだね」
「うん!今度買ってくるから、食べてみて?」
「ありがとう」

それにしても田村くんは、なんでもおいしそうに食べる。一生懸命もぐもぐしてる
感じが、なんだかかわいらしいというか、いじらしくさえ思える。

「ん?なに?」
「おいしそうに食べるなぁ・・・って思って(^^ゞ」
「君も食べる?ほら」
「え・・・」
「遠慮しないで、ほら、あ〜ん」
「あ〜ん」

ベンチに男女2人+お口あ〜ん=バカップル の公式?!

目の前を通り過ぎる女の子が笑ってた。

しまいには、あっちからやってきた部活の先輩が
「おまえら、付き合ってんなら、そういうのはわざわざこんなとこでやんないで、
 うちでひっそりやれよ?迷惑防止条例違反!!キャンパス内あ〜ん禁止!!」
と、違反指摘&あ〜ん禁止令まで発令した。

「先輩!オレら別に付き合ってないですよ?!ねぇ?」

付き合ってない宣言をされても、ねぇ?と話を振られても、ちょっと悲しい・・・。
うつむいたあたしを見て、田村くんが突然立ち上がって言った。

「せんぱーい!!間違えました!!オレら付き合ってる現在進行形です!!」
「わざわざ訂正しなくていい!!」

うつむいてたのに、ぶぶっと吹き出してしまった。やだ、おかしくて涙が出る。


いつの間にか雨も上がって、あたしの髪も乾いてた。

外に出ると、あちこちに大きな水たまり。

「ほら」田村くんがあたしに向かって手を差し出す。
「うん」あたしはその手をそっとにぎる。

「一緒にせぇの!で越えよう!」
初めて一緒に越えた水たまりを思い出しながら、田村くんとあたしは跳び越えた。

「あ、虹が出てる!」
「ホントだ、かなりデカくね?こんなデカいの初めて見た」
「きれいだね〜」
「マジで渡れそうだな・・・君とだったら」
「うん・・・え??」
「二度は言えねぇ・・・」
「・・・・・」

「ほら」田村くんがまた、あたしに向かって手を差し出す。
「うん」あたしはその手をそっとにぎる。
「手離すなよ、ずっと一緒に歩こう」
「うん!」

あちこちの水たまりを跳び越えながら、田村くんとあたしは歩いた。






勝手にすぺしゃるさんくす : テレビガイド誌に載ってた、手を差し出してる写真の
                  櫻井様(*^_^*)